失敗しました(雲花)

花と雲長が想いを確かめ合い、周囲も認知した頃。

花は芙蓉と東屋でお茶をしていた際にふと問われた。

「雲長って不能なの?」

そう問う芙蓉の真っ直ぐな視線から、真剣な問いだと察した花は正直に答えた。

「え……えっと、くちづけなら何度か……」

「あの溺愛っぷりと激甘な甘やかし方で、くちづけだけなんて有り得ないわ!」

「……きっと、私に足りないところがあるんだよ」

「あの雲長の溺愛を甘く見過ぎているわよ、花。あの溺愛っぷりなら、花に性的魅力が欠けていても、朝まで……」

という芙蓉の花の卑下を否定する様に持論を言葉にしたが、冷静な問いがそれを遮った。

「芙蓉姫。女人としての慎みと配慮が足らない会話と場所だと思うが?」

「自分の不徳を誤魔化す為に、他者を貶める方が問題だと思いますけど?」

そういう芙蓉と雲長が周囲を凍りつかせる冷戦状態となった。

故に、花が状況を少しでも改善しようと雲長に問いかけた。

「……えっと、何かご用ですか、雲長さん?」

「玄兄が花に頼みたい事があるそうだ。だが、今は執務室にいないからその場までの案内をする」

「わかりました。じゃあ、芙蓉姫、ごめん」

と花が謝ると、芙蓉は雲長へ厳しい視線を向けながら手を振った。

「玄徳様の頼みなら仕方がないわ。頑張ってね、花」

 

 

 

「いつもあんな会話を東屋でしているのか?」

そう雲長は隣で歩いている花に問いかけた。

その問いに含まれる心配を察した花は、雲長に対しても正直に答えた。

「……ええっと、ただ芙蓉姫は心配をしてくれただけだと思います、多分」

「心配であったとしても、配慮に欠ける言動は慎んだ方が良い。芙蓉姫の為にもな」

「……はい」

「あと、俺は不能じゃない」

「……はい?」

と花は雲長の告白に疑念を感じたが、雲長は目的地に到着した事で話を終わらせた。

「玄兄、入っても大丈夫ですか?」

「ああ。それから、この後には例の件を頼む」

「わかりました」

そう答える雲長のかすかだが確実な苛立ちに玄徳は気付いた。

だが、雲長とそれに気付けない初心な花に配慮した結果、玄徳はあえて指摘しなかった。

そして、その様な玄徳の配慮に気付いていた雲長もただ挨拶をしてから退室をした。

「では、失礼します」

「……大丈夫か、花?」

「え?」

という花の反応が予測通りであるが故に、玄徳はあえて余計な気遣いを言葉にした。

「いや……雲長が珍しくも荒れていたようだからな」

「荒れる?」

「いや、馬に蹴られたくはないが……雲長はおまえを大切にしているだけだと思うぞ?」

そういう玄徳は遠まわしな二人への配慮を言葉にしたが、花は全く気付かなかった。

故に、玄徳はこれ以上の気遣いは横槍だと察し、あえて頼みごとを優先した。

「……とりあえず、頼みたい事を話しても良いか?」

「はい、私に出来る事であれば頑張ります!」

「良い返事だな。なら、これを頼む」

 

 

 

玄徳から頼まれた仕事をしながら、花は二人の気遣いと雲長の言葉の意味を考えていた。

否、頼まれた仕事よりも、芙蓉の問いと玄徳の気遣いの意図がわからずに悩んでいた。

「そんなに悩む事なのか、玄兄に頼まれた事は?」

「え……雲長さん?」

という花の問い返しから、雲長は頼まれごとではない事で悩んでいると察した。

「それとも芙蓉姫の杞憂が原因か?」

「……どうしてキスだけなんですか?」

そう花が現代語を使って問い掛けると、雲長は淡々とした口調で答えた。

「現代に戻ったら、お前は結婚適齢期ではない女子高生だろ。だから、すぐに結婚が出来ない相手に不用意に触れる事は出来ない」

「……現代に戻る為、なんですか?」

「お前と共に現代へ戻る、そう二人で決めただろう?」

「はい!」

と雲長の問いに答えた花の笑みは、眩しいくらい真っ直ぐで明るかった。

それ故に、昏い感情も自覚した雲長は、自虐めいた苦笑いを見せた。

「……俺も学生だった頃に戻れば、違う意味で忍耐を強いられるとは思うがな」

「え?」

「なんでもない。それよりも玄兄に頼まれた事を片付けよう。助けられる事はあるか?」

そう雲長が会話を切り替えると、花もそれへ答える様に協力を願い出た。

「あ、はい。ここの詳細に関する書簡ですが……」

「これは違う書簡の方がわかりやすいな。すぐに用意するから待ってくれ」

「ありがとうございます、雲長さん」

「いや、気にする事は無い。俺が手伝うと言ったからな」

といった雲長は書庫に向かい、花も先程までの悩みが嘘の様な明るい表情となった。

 

 

 

 

 

雲長さんの場合、広生君とは違うので、一粒で二度おいしいというイメージがあります。

色々な書き方も出来ますが、雲長さんと花ちゃんが想いを通わせてからの時間が短いと思われる為、時期は難しいです、色々な意味で。

あと、明日は翼徳×花の予定です。