定めと抗い 第7話「幸せのはじまり」

薫に風間との婚約解消を告げた千鶴は、斉藤といつも過ごしていた学園の裏庭に訪れた。

そして、千鶴がその裏庭の草むらに座ってから間もなく斉藤も訪れてきた。

「千鶴!」

「斉藤先輩!」

そう答えた千鶴に対し、斉藤は婚約が解消になった事をあえて再確認するに問いかけた。

「風間との婚約が解消になった事は本当か?」

「はい、風間先輩から直接聞きました」

と千鶴が風間から直接告げられた事実に複雑な心境となった斉藤の表情が少し陰った。

「……そうか」

「斉藤先輩?」

「いや、今は最優先事項がある。故に千鶴、聞いてほしい」

そう斉藤から真っ直ぐな視線と共に告げられた千鶴はあえて言葉では無く視線で応えた。

それ故に、斉藤も視線にも熱い想いを込めながら、正直な想いを言葉にして告げた。

「俺と結婚を前提に付き合って欲しい!」

「え……」

と言った千鶴は、言葉とはいえない答えと戸惑う思いが露わな表情で混乱していた。

そして、ただ正直な想いを言葉にした斉藤はただ千鶴の答えを待った。

故に、千鶴は自身で混乱する思考や戸惑いと向き合ってから、素直な疑問を言葉にした。

「あ、あの私達は結婚をできる年齢ではありませんよ?」

「そうだが……やはり、俺では不足だろうか?」

「ち、違います! ただ、私などが斉藤先輩のお嫁さんになんて……」

そういう千鶴の自身を卑下する言葉を聞いた斉藤はただ正直な想いを強い口調で告げた。

「俺が千鶴以外を選ぶ事も傍に置く事も有りえん!」

「……ありがとうございます」

「……了承してくれるか?」

と問い返す斉藤の心の揺れに気付いた千鶴は満面の笑みと共に正直な想いを告げた。

「はい、私も斉藤先輩に相応しくなるように、選んで良かったと言って頂けるように頑張ります」

「ああ。俺も今まで以上に切磋琢磨し、千鶴の隣に相応しい男であるように努めよう」

そう千鶴の想いに応えた斉藤は、互いの距離をなくしてからそっと身体を抱きしめた。

その時、二人が居る場所から少し離れた校舎の影から聞き慣れた声が聞こえた。

「……だから押すなって!」

という声の主が居る方角から多くの気配も感じた斉藤は剣呑な視線を向けた。

「……浮かれすぎて周囲への警戒を怠り過ぎたようだ」

そういった斉藤は、今にも抜刀しそうな殺気を意図的に隠そうとしなかった。

そして、斉藤の殺気に気付いた気配の主達は慌てながら隠していた姿を見せた。

また、先程の声の主でもある平助は、ただ斉藤と千鶴の怒りを鎮める為に弁明をした。

「い、いや、俺はあくまでも千鶴と一君の事を心配して……」

「何いい子ぶってんの? 平助が現場を覗く事を提案したじゃない」

と沖田はあくまでも場を、否、斉藤の感情を逆なでするような軽口めいた言動だった。

また、薫も平助の弁明を否定する様に、ただ事実を正直に告げた。

「ああ。平助が率先して俺達を説得しただろ?」

「俺は教師として平助の意見を受け入れただけだぜ?」

そういった原田は常と変わらぬ態度だったが、土方は斉藤と千鶴にただ謝罪した。

「……すまねぇ、斉藤に千鶴」

「良かったなぁ、斉藤に千鶴ちゃん!」

と最後に叫んだ永倉は一番場を理解していない、否、空気が読めていなかった。

そして、その様な野次馬、否、馬に蹴られる行為をした者達に対して千鶴は微笑んだ。

否、千鶴に親しい者達には恐怖しか感じられない、コワイ微笑みだと全員が察した。

「……刀は有りませんが、木刀なら用意できますよ?」

そう千鶴は斉藤に告げながら唐突に木刀を差し出し、斉藤も自然に千鶴から受け取った。

「では、千鶴への感謝も木刀に込めるとしよう」

「ちょ、ちょっと待ってよ、一君!」

と平助はあくまでも弁明、否、色々な意味での命乞いとも言える言動を繰り返した。

また、沖田もこの状況下で軽口を口にする事は出来ない、否、命の危機を感じて戸惑った。

「木刀の用意って……千鶴ちゃんもキレてる?」

「いくら可愛い妹の頼みでも、現状で斉藤の居合を受けるのは理不尽だよ、千鶴!」

そう薫は千鶴の怒りとその言動に戸惑う事はなかったが状況には抗おうとした。

また、抗う事に同意した原田は、斉藤と千鶴への説得の必要性を言葉にした。

「言い争う前にまずは斉藤達を説得する方が先だろ」

「現状で俺達に説得はできねぇだろ」

と土方は冷静かつ落ち着いた様子で原田達の意見を一蹴した。

そして、ようやく現状を理解した永倉は、土方とは違う意味で抗う必要性を訴えた。

「だからって斉藤の居合の犠牲になるって言うのか、土方さん!」

「こういう時は逃げるが勝ちって事だ!」

そう土方が主張してから走り去ると、隠れていた面々が続いてこの場から走り去った。

それを静かに見送った斉藤に対し、千鶴はその言動の意図を確かめる様に問いかけた。

「……良かったのですか、斉藤先輩?」

「ああ、今はな」

「斉藤先輩が良いのでしたら、私も構いません」

と斉藤に答えた千鶴は差し出した木刀を返された為に再びしまった。

手品のように出してはしまった千鶴に対し、斉藤は正直な思いを言葉にして問うた。

「……何故に千鶴は木刀を用意していた?」

「薫に教えてもらいました」

そう千鶴に答えられた斉藤は深く考え込むように眉を顰めながら大きい声で呟きだした。

「この場合は南雲の用意周到さを褒めるべきか、千鶴が自身を守れる事を喜ぶべきか、否、千鶴が自身で身を守る隙をつくった事を恥じるべきか……」

と呟きながら戸惑う斉藤に対し、ただ千鶴は微笑みながらその呟きを断ち切った。

「大丈夫ですよ、斉藤先輩。これからは斉藤先輩に守って頂ければ、問題は無いですよね?」

「ああ……そうだな」

「では、これからもどうかよろしくお願いします」

と千鶴が綺麗な最敬礼で斉藤に告げると、斉藤も折り目正しい最敬礼で千鶴に応えた。

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

 

 

 

 

……甘い展開となるはずが、おかしなラストとなりました(遠い目)

いえ、斉藤先輩と千鶴嬢の甘い会話を書くつもりではいたのですが、書いていたらラストまでおかしな展開となりまして……

当サイトらしい仕上がりで、さいちづが前提のオールキャラらしいと思って頂ければ、と。

 

また、次のサイトでの更新予定ですが……11月末からのサイト開設記念小説となります。

いえ、上京直参予定の11月にあるラヴコレ秋では、固定となりつつある新刊3種(ひじちづ、三国恋戦記、クロアリ)の他に遥か3のネタも出来たので……サイトの更新はしばらくお休みとさせて頂き、ラヴコレ秋の新刊を頑張ろうかと。

同日での新刊4種は未経験ですが、無理のない範囲で頑張りたいと思います!