定めと抗い 第6話「それぞれのおもい」

生徒会室のソファに生徒会長である風間と教頭の土方が睨み合う様な位置で座っていた。

その風間の背後には、直立不動な天霧と飄々とした態度の不知火に立っていた。

そして、単身で乗り込んできた土方に対し、風間は横柄な問い返しで聞き入れなかった。

「貴様、馬鹿にしてるのか?」

「相変わらず自身を貶める発言の残念さは変わってねぇな」

そう土方は風間の横柄で忠告も聞かない変わらぬ横暴さに対してただ苦笑った。

また、土方も知っているとわかった上で、天霧と不知火は風間の事を簡易に評した。

「風間は風間家の跡取りとして、嫁以外に関しては問題なく果たしています」

「そうそう。会社の方でも役員としては優秀な方だぜ?」

「……貴様達も愚弄する気か?」

と問い返した風間は、天霧と不知火の評に対してあからさまな怒りを見せた。

そして、その様な風間に対し、土方は言い方を変えた忠告を繰り返した。

「てめぇが優秀なら、雪村千鶴と斉藤一の想いにも気付いているんだろ?」

「雪村千鶴は我が妻となる女子だ」

「……あの頃の未練が理由なんだろ?」

そう冷静に指摘した、否、思いを見抜いていた土方に対し、風間は意図的に沈黙した。

それ故に、土方も懐かしそうな、だが、苦さを含む様な笑みで、風間に問い続けた。

「あの頃……幕末で出遭った時はわかり合える事も無かっただろうが、今は違うだろ?」

「……貴様がここまでの阿呆だとは現世で知ったな」

と土方に答えた風間も、横柄だった態度から意味深な笑みと共に答えた。

そして、土方も笑みを意味深といえるモノへ変えながら風間に答えた。

「ああ。俺もおまえの発言の残念さと優秀さは現世で知ったぜ」

「……つまり、雪村千鶴と斉藤一は、あの頃と同じ様に、互いを必要とし、愛しあってもいる、と?」

「それは一見すればわかるだろ?」

そう土方に問い返された風間は、問いへ答える事無く、ただ今後の行動を告げた。

「雪村網道には俺から伝えよう……我が妻と思った女子を不幸せにする者は看過できん」

「流石は風間様、か?」

「ふん。いまさら褒めても何もやらんぞ?」

と風間は土方の軽口へ横柄に問い返したが、土方はあくまでも軽口で風間に答えた。

「ああ、俺もおまえから何かを受け取るなんてしねぇよ」

 

 

 

「雪村千鶴」

そう風間から声をかけられた千鶴は、常とは違う雰囲気故に違和感があった。

そして、その理由を千鶴が問う前に、風間は常と変わらぬ横柄な態度で告げた。

「おまえは我が妻となる事を了承したが故に、おまえの気持ちを確認しなかった」

「……」

「だが、俺もおまえの幸せは願っている。故に我が妻とする事にしたのだ。網道の様な分家からの無用な干渉から守る為にも」

という風間が告げた言葉、否、深い想いによる配慮があった現実に、ただ千鶴は驚いた。

否、横柄な態度しか知らなかった千鶴は、風間の想いと配慮を初めて知り、ただ戸惑った。

「え……」

「俺もおまえの想いを無視して幸せを奪う事は選ばん。故に、婚約は解消だ。そして、解消の代価として雪村家の再興には助力をする」

「……有り難うございます」

そういう千鶴の答えから、風間は養父への態度が変わらない、否、変えないと察した。

と同時に、それが雪村千鶴の弱さでも強さでもあると風間は知るが故にただ嘲笑った。

「相変わらず甘いな」

「養父も私とっては家族ですから」

と風間に答える千鶴の笑みは陰りも卑屈さも無く、ただ芯の強さだけを感じさせた。

その強さも愛しいと想う風間は、ただ千鶴の背を押す様な言葉を残してから立ち去った。

「……俺もおまえの幸せを願っている。現世でも斉藤との未来を迷う事なく選べ」

「はい!」

 

 

 

千鶴から風間との婚約が解消となった経緯を知らされた薫はすぐに斉藤を探し出した。

「斉藤!」

「南雲?」

そう薫に答えた斉藤は、常の余裕が無い薫の態度を不審に思った。

だが、それを斉藤が問う前に、その理由である吉報を薫が先に告げた。

「風間と千鶴の婚約は解消になった」

「それは本当か?」

「ああ。風間から婚約の解消を申し出た。そして、解消する為に雪村家の再興に助力するとも言ったらしい」

という薫が告げた現実は、斉藤にとっては想定外だったが、想いを貫く時だと思った。

そして、その様な斉藤の決意を察した薫は、その決意を応援するように後押しをした。

「多分、お節介な奴らの所為だとは思うけど、これで千鶴が想いを偽る必要は無くなった」

「……感謝する」

そういう斉藤の短い言葉は、強い決意と千鶴への深い想いを薫にも感じさせた。

それ故に、薫は常に見せる冷笑とは違う笑みで、ただ斉藤の想いを肯定した。

「感謝よりも千鶴を幸せにしろ。それはお前だけにしか出来ないからな」

「ああ、わかっている!」

と短く答えた斉藤は、すぐに薫の前からどこかへと走り去った。

その背を見送った薫は、すぐに率直な疑問が浮かんだ。

そして、その疑問へ答える者がいないとわかっていたが、それ故に言葉として漏れた。

「……千鶴の居場所を聞かなかったけど、斉藤はわかってるのか?」

 

 

 

 

 

……すみません。斉藤さんと千鶴嬢の会話は次回の最終話となります。

ただ、SSLの斉藤編を始める際にオールキャラになると書いた通りといえるラストになるかと(遠い目)

同志は少ないと思いますが、特定CPを前提としたオールキャラが好きなので、最終話も楽しんで頂ければ、と思っています。