定めと抗い 第4話「告白~想いと思いの交錯~」

千鶴と二人だけとなった斉藤は、告白しようと口を開いてはすぐに口を閉ざした。

告白をされる事があっても、斉藤から告白した事が無く、口下手な不器用さも問題だった。

その様に告白に戸惑う斉藤とは対照的に、千鶴は硬い表情のままだった。

否、未経験故に告白で戸惑う斉藤の態度は、付き合いの長い千鶴にも気付ける事だった。

故に、斉藤から告白されると察した千鶴は、意図的に硬く聞こえる声で問い掛けた。

「……斉藤先輩。出来れば先に私の思いを聞いて頂けませんか?」

「思い?」

そう答えた斉藤は互いの温度差に気付き、千鶴の意図を確認する様に問い返した。

だが、未経験な告白に戸惑うだけの斉藤は、千鶴の思いに気付けなかった。

そして、ただ思いを貫こうとする千鶴は、淡々とした口調で己の思いを語った。

「私は雪村の本家の跡取りとして生まれ育ちました。そして、私が跡取りとなった為に、双子として生まれた薫は赤子の時に跡取りに恵まれなかった南雲家の養子となりました。でも、薫は南雲家を掌握する事で私と暮らす権利を得ましたが、雪村の姓を名乗る事が今でも許されていません。そして、私はいまだに跡取りでしかなく、薫の努力に報いる事も、雪村家の期待の応える事も出来ていないんです」

という千鶴の『告白』を聞いた斉藤は、ようやく互いの温度差と思いの違いに気付いた。

それ故に、千鶴の思いを理解した斉藤はあえて再確認をする様に問い返した。

「……つまり、千鶴は想いを殺してでも思いを遂げる、というのか?」

「……」

「ならば、俺は抗う」

そう斉藤が真っ直ぐな視線で告げる意志の強さも感じる宣言は千鶴を激しく動揺させた。

その様な斉藤の言動は常と変わらず、戸惑っていた方が不思議だったと千鶴も思った。

だが、斉藤らしい静かでも強い意志を感じる言動は、ただ千鶴は返す言葉を奪った。

そして、その様な千鶴の戸惑いを察しつつも、斉藤は己の想いを語った。

「俺一人の想いならば、諦める事も身を引く事も選ぶが、千鶴の想いを殺す者はたとえ本人でも許せん」

「斉藤先輩……」

「俺は千鶴には幸せになって欲しいし、幸せを与える存在になりたいと思っている。故に千鶴が不幸になる選択は誰にも強いさせない」

と告げられた千鶴は、想いを殺してでも貫きたい思いを、斉藤に理解してもらおうとした。

だが、斉藤の想いは、千鶴が抱く想いと変わらぬ想いであるが故に、ただ言葉を失った。

そして、千鶴が戸惑う思いを言葉にする前に、二人の背後から場違いな声が邪魔をした。

「いい加減にしろ、土方歳三!」

「二人の会話を聞いてもわからねぇって言うのか、風間!」

そう風間と土方の唐突な、否、覗き見をしていたという言葉を聞いた千鶴は微笑んだ。

「……どのようなご用件ですか、土方先生に風間先輩?」

「あ、いや……告白の邪魔をしてすまねぇ。だが、こいつには見せた方が早いと思ったんだ」

と土方は邪魔をした事を謝罪しつつも、覗き見を提案した事は良案だと主張した。

だが、土方にだまし討ちの様に覗き見をさせられた風間はただ己の主張を言葉にした。

「この様な茶番を見る意味など何も見出せんぞ、土方歳三!」

「……では、最後までお見せすればよろしいのでしょうか?」

そう土方と風間に問い返す千鶴の冷静な態度と笑みは、絶対零度の冷たさを感じさせた。

そして、その笑みの怖さを知り、経験した事がある斉藤は落ち着く様に千鶴をなだめた。

「……千鶴、怒る理由はわかるが、土方先生が困られている」

「……すまねぇ、斉藤」

「いいえ、お気遣い頂き、申し訳ありません」

と言った斉藤は土方の気遣いに感謝し、思いを貫く事を主張する千鶴は沈黙していた。

その様な状況ゆえに、土方からの拘束から逃れた風間は立ち去る事を選んだ。

「俺は貴様と違い、生徒会の運営でも忙しいのだ。故に生徒会室へ戻る。ではまた会おう我が妻よ」

「千鶴……」

そう斉藤は沈黙する千鶴に想いを理解してもらおうとした斉藤の言葉を千鶴は遮った。

「すみません、斉藤先輩。私の思いは変わりません」

「……」

「では、失礼します」

と言った千鶴は斉藤と土方に一礼をすると、静かにこの場から立ち去った。

主張が一貫していた千鶴に対し、無言だった斉藤の意図を確かめ様と土方は問い掛けた。

「……追いかけねぇのか、斉藤?」

「……本当に俺の一人芝居ではないのでしょうか?」

「千鶴の想いまで疑うのか?」

「いえ……ただ、想いを遂げる事だけが幸せなのでしょうか?」

そう斉藤から問い返された土方は、過去、否、現世よりも昔の自身の選択を思い返した。

それ故に、土方は斉藤の問いの正否を、言葉にする事が出来なかった。

「……そうだな。それぞれにとっての幸せは、本人にしかわからねぇかもな」

「……」

 

 

 

 

 

3話のあとがきで斉藤先輩と千鶴嬢と風間さんの出番が多いと書きましたが……土方先生の出番が想定外に増えました。

いえ、風間さんの出番がほぼ土方先生に奪われたかと(遠い目)

そして、斉藤先輩が千鶴嬢に想いを告白する展開なのに、微糖も無いビターな展開となっています……

また、次週に更新の5話では斉藤先輩と千鶴嬢の会話は無いので……甘さは最終話までお待ち頂ければ、と。

ただ、当サイトらしい甘さにはなると思うので、出来る限り甘くなるように頑張ります!