定めと抗い 第1話「気付いた想いと抗えぬ現実」

今日も薄桜学園での紅一点である千鶴の周りには斉藤と沖田と平助と薫が居た。

「ほんと、一君と千鶴は似た者同士だよな」

そう平助が言うと、共に居た沖田も軽い口調で同意をした。

「まあ、二人ともからかい甲斐も有るしね」

「……沖田、失点が欲しいのかい?」

と沖田に問い掛けた薫に対し、すぐに千鶴が諌める様な強い口調で自制を求めた。

「薫、沖田さんは先輩なんだから、そんな口調は駄目だよ」

「……それって、僕は先輩である理由以外では敬う必要がないってこと?」

「総司、からかうのもいい加減にしておけ」

そう斉藤は千鶴をからかおうとする沖田を制するように鋭い視線を向けた。

だが、殺気めいた視線を向ける斉藤に対し、沖田は軽い口調で問い返した。

「そういう一君だって千鶴ちゃんは啼かせたいって思ってるんでしょ?」

という沖田のからかう様な問い返しは、冷静沈着な斉藤を激しく動揺させた。

そして、沖田の言葉は共に居た平助は動転させ、薫の黒いオーラが更に深みを増した。

「そ、総司、ここは学校だってば!」

「沖田は本当に失点が欲しいんだね?」

「斉藤先輩は好んで人を泣かせるような方じゃありません!」

そう沖田の軽口に対して、生真面目な反論をした千鶴の言動で周辺の空気が一変した。

そう。

千鶴の言葉によって斉藤は頬を紅く染め、平助は苦笑い、薫は憮然とし、沖田は笑った。

そして、お約束の様に斉藤と千鶴の視線が合うと、周囲は甘ったるい雰囲気へと変わった。

しかし、その様な窒息しそうな甘さに耐える気が無い沖田はその雰囲気をぶち壊した。

「あー、はいはい、僕が悪かったから、甘い空気は二人だけの時にしてね」

と沖田に指摘されると、互いの想いに気付いていない斉藤と千鶴はすぐに否定をした。

「そ、その様な空気などありえん……」

「私なんて斉藤先輩には不似合いですから……」

「……千鶴の控えめを超えてる、自己評価の低さは相変わらずだよなぁ」

そう平助は色恋沙汰への鈍感さを好意的に評価し、薫も苦笑いながらも自覚を促した。

「そうだよ千鶴。おまえは俺の可愛い妹なんだから……」

という千鶴達の会話を遮る様に、風間と付き従う天霧と不知火が割り込んできた。

「相変わらず、群れぬと何事も為せぬのは昔から変わらぬな」

「そういう生徒会長サマこそ、三下が居ないと行動も出来ないの?」

そう沖田は風間の変わらぬ横柄さに苛立つように刺々しい指摘を返した。

だが、その様な沖田の言動を気にしない、否、負け犬の遠吠えを聞く様な横柄さで応えた。

「ふん、相変わらず分がわからぬ男だな、沖田」

「沖田への評価には同意するけど、分がわかっていないって言葉はそのまま返すよ」

という薫の棘しかない、否、悪意と害意しかない言葉に対し、風間はあえて聞き流した。

「……今日はめでたい日であり、おまえは義弟とのなるのだから、今回は許してやろう」

「また、千鶴を嫁にするって言い張る気か?」

「そうだな。だが、正確に言えば、親の公認を得た婚約者となった、という言葉が正解だな」

そう平助に答えた風間の言葉は、今までの嫁発言とは違う、リアルな答えだった。

それ故に、薫が風間の答えの意味を確認するように叫んだ。

「どういう意味だ、風間!」

「風間は雪村網道に雪村家を再興する一環として結婚を認めさせました」

そう天霧が告げた言葉の意味に気付いた千鶴は、反射的に想い人である斉藤を見た。

また、斉藤も反射的に千鶴を見たが故に、斉藤も千鶴も互いの想いに気付いた。

同時に、不本意な形で恋情を断たれる絶望と、互いの想いに縋りたい切望を確認し合った。

そして、その様な斉藤と千鶴の想いと変化に二人以外は気付けなかった。

否、風間の許嫁発言と、天霧の補足めいた状況説明の方が衝撃だった。

だが、皆よりも早く立ち直った沖田は、問い掛けという形であからさまに風間を非難した。

「……つまり、雪村家の再興というエサで千鶴ちゃんを嫁にするんだ?」

という沖田の軽口にしきれない怒りへ同意する平助も風間に怒りをぶつけた。

「現世でも千鶴の意志や想いを踏みにじる気かよ、風間!」

「おまえのような男を千鶴の夫と認める気は無いし、義弟なんて言葉も認めない!」

そう薫も沖田と平助の怒りへ同意する様に、ただ風間の宣言と状況に抗おうとした。

だが、その様な反論を予測していた風間は、ただ千鶴だけに視線と言葉を向けた。

「これから自宅に戻って網道に確認する時間は与えよう。俺が寛大で良かったな、雪村千鶴?」

「……わかりました。養父がそう決めたならば、雪村家の跡取りとしての務めを果たします」

という千鶴の風間に対する答えは、沖田は驚かせ、平助は沈黙する事しか出来なかった。

また、薫も千鶴の言葉の意味と思いに気付いたが故に言葉を失った。

そして、千鶴の答えと両片想いである事に気付いた斉藤は、冷静といえる決意を口にした。

「……千鶴がそう思うならば、俺は応援する」

そう告げられた千鶴はあからさまに硬直し、その反応から薫は斉藤を叱責した。

「斉藤!」

「ほう、現世では随分と分がわかるようだな、斉藤?」

と斉藤の言動を揶揄しながらも認めた風間に対し、斉藤はあえて風間に答えなかった。

そして、ただ斉藤はこれからすべき事、否、日常へと戻ろうとした。

「定期報告の時間だ。土方先生が待っておられる。急ぐぞ、南雲」

そう斉藤に告げられた薫は、ただ千鶴を気遣う様な視線と言葉を向けてから場を離れた。

「……千鶴、俺が帰るまで早まるなよ?」

「今日は薫が戻るまで俺が千鶴と一緒に居る」

と平助が風間から千鶴を守る様に背に隠すと、沖田も少しだけ目を細めながら笑った。

「じゃあ、僕は裏を取ってあげるよ。これでも色々と情報網は持ってるからね」

その様な反応に対し、風間は答える事も気にする事も無く、無言でこの場から去った。

そして、天霧は一礼をしてから風間の後に従い、不知火は飄々とした態度を変えなかった。

 

 

 

 

 

予告小説から○年後にSSLの設定を捏造した斉藤編は連載開始となりました。

故にお待ち頂いた方には謝罪と感謝をしながら、連載の更新をしたいと思っています。

また、土方編同様、斉藤さんと千鶴嬢以外の出番が多いというか、さいちづがメインのオールキャラとなっていますが、その点もご容赦を。

ただ、土方さんルートの千鶴嬢への想い込みがない分、土方編より物語として成立したかと。

いえ、土方さんルートの千鶴嬢に萌えたが故に二次創作に至った為、想い入れが半端ではなくて。

ですが、斉藤編は『おもい』を主軸にストーリー展開していく予定なので、斉藤さんと千鶴嬢の『おもい』と登場するキャラ達との会話や関係性も楽しんで頂ければ、と。