まどろみ

クラインの第二王女であるディアーナがダリスの王アルムレディンに嫁いだ翌朝、二人は同じベッドで眠っていた。

そして、アルムレディン……アルムの腕枕で眠っていたディアーナは先に目を醒ました。

もう少しで起床の時間だと思ったディアーナだが、あえてアルムに声を掛けなかった。

「……」

じっと見詰められているアルムはいきなりディアーナに応えた。

「……そんなに見詰められたら穴が開いてしまいそうだよ、姫?」

「お、起きていたんですの!?」

アルムが起きていた事に驚いたディアーナは場所をわきまえない大声を上げた。

そんなディアーナへアルムは余裕を感じさせる笑みを添えて再び応えた。

「そんなに熱い視線で姫に見詰められたら寝てなんていられないよ?」

「……意地悪ですわ」

「冗談だよ。それよりも声がかなり掠れているけど大丈夫かい?……って、僕の所為かもしれないけど」

そう気遣うアルムに対して、ディアーナはいつもの様に可憐な笑みを返した。

「そうですわね……でも、嬉しかったから構いませんの。それよりも腕枕をしているアルムこそ、大丈夫ですの?」

「大丈夫だよ。でも、君のこそ大丈夫かい? 慣れない枕だっただろう」

ディアーナはダリスに馴染めていない事を、アルムが気遣っていると気が付いた。

その想いに対して、ディアーナは掠れた声でもわかるくらい喜びに満ちた声で応えた。

「アルムの枕ですもの。一番、心地良いですわ」

「……有り難う、姫」

そう言って、アルムはディアーナを優しく抱きしめた。

それを受け容れる様にディアーナはアルムの背に腕を回しながら少しお茶目に応えた。

「……アルム、私には名前がありますのよ? それとも敬称の方が良いと言うなら別の言葉にするべきですわ」

そう言われたアルムは抱きしめていた腕を緩め、ディアーナにかしこまって応えた。

「そうでございましたね、王妃様」

「そうですわよ、陛下」

「ちょっとかしこまりすぎたかな、奥方様?」

「そうですわね、旦那様?」

そう言い合う二人は急に黙り込んでしまった。

そして、少しの沈黙の後、二人は抑える事無く笑いあった。

「あはは」

「ふふふ……」

と、笑っていたディアーナは、アルムの笑い声に含む物を感じて問い掛けた。

「どうしたんですの?」

「いや、まるで夢のようだから……覚めてしまわないかと思ったんだ……」

己の手を見ながら、そう呟くアルムに対して、ディアーナはにっこりと微笑んで答えた。

「ならば、ずっと夢を見ていればいいのですわ」

「ディアーナ?」

「全ての民が、夢だと思える様な毎日を送れる様に、頑張れば良いのですわ」

そう言われたアルムはディアーナを強く抱きしめた。

「そうだね……有り難う、ディアーナ」

「ふふふ、どう致しまして、アルム」