のちに『氷炎の錬金術師』と呼ばれるようになるアグニ・カーチス。
彼女は士官学校入学前から国家クラスの武闘派国家錬金術師と対等だと噂されていた。
だが、アグニは国家錬金術師の資格を取らず、士官学校へと入学した。
それ故に、アグニは入学当初から良くも悪くも才色兼備等と噂されていた。
また、男女を問わずにファンクラブが出来る程の好意も多く寄せられていた。
そして、そんなアグニが銘を持つ理由となるロイとの初対面は親友のミスが原因だった。
そう。
学内で情報通とされているマース・ヒューズらしくない、うかつな言動の所為だった。
「お、アグニ! 今日は授業が重なったんだな」
そうマース・ヒューズに声をかけられたアグニ・カーチスは非常に硬い表情で答えた。
「……こんにちは、ヒューズさん」
「おいおい、そんな他人行儀な挨拶は無いだろ~」
とヒューズがアグニに対して親しげだった為、隣にいたロイ・マスタングは驚いた。
「……おい、ヒューズ。お前はカーチスさんと知り合いだったのか?」
そう問われたヒューズは、自分のミスに気付き、あわててこの場から逃走した。
「! すまん!!」
「おい、どこに行く気だ、ヒューズ! 今度の授業は逆方向だぞ!!」
「……では、私も次の授業があるので失礼します、マスタングさん」
と、アグニが硬い表情のまま、ロイの前からただ立ち去ろうとした。
しかし、アグニ・カーチスの噂を知るロイはあえて親しげな声をかけた。
「ヒューズと親しいならば私にとっても……」
そうロイに言われたアグニは、硬い表情を更に硬化させてから深い礼で拒絶した。
「失礼します」
とアグニが硬い表情で言い去った理由がまったくわからないロイはただ呆然と見送った。
状況がわからずにただ呆然としていたロイに、戻ってきたヒューズが状況を確認した。
「アイツは次の授業に向かったか?」
「……何故、カーチスさんとの関係を黙っていた?」
そうロイに問われたヒューズは、あえて誤魔化すような軽い口調で問い返した。
「おいおい、おまえさんもアグニのファンクラブに興味があるなんて初耳だぞ?」
「彼女の錬金術の腕前を知らないとは言わせんぞ」
というロイの答えは、ヒューズの想定内だったが故に、返す言葉がなかった。
いや、ロイの興味が『アグニ・カーチス』の噂だけへの関心ではないと気付いたが故に。
しかし、アグニがロイを知るきっかけとなった時の事は知らないとも気付いた。
それ故に、ヒューズはロイが知る『アグニ・カーチス』の情報を再確認した。
「じゃあ、なんで女を口説くような言葉をかけたんだよ」
「……彼女には失言だったとはすぐに気付いたが」
そう答えたロイの言葉から、ヒューズはアグニを噂以上に知らないと思った。
そして、ロイの錬金術への強い探究心も知るヒューズはあえて先制する様に釘を刺した。
「失言以上だな。だから、オレから紹介は出来ねぇぞ」
「どういう意味だ?」
「……知らないなら、それでもいい」
「そうか……だが、俺がそんな言葉で納得すると思っているのか?」
とロイに問い続けられたヒューズは降参する様に妥協策を言葉にした。
「……わかった。紹介はする。だが、アグニを女扱いするな。親しくなりたいならな」
「意図はわからんが、彼女を口説き落とす気は無いぞ?」
そうロイが単刀直入にヒューズの懸念を否定した為、あえて軽い口調で答えた。
「なら構わん。明日にでも時間をつくらせる」
「……そうか。明日を楽しみにしているとも伝えてくれ」
「ああ……」
というヒューズのらしくない歯切れの悪い答えに対し、ロイはただ不審に思った。
しかし、国家錬金術師と対等だと噂されているアグニとの会話をただ楽しみだと思った。
このお題を利用する際の決定打は「許せよ親友!」というお題のタイトルから、
マース・ヒューズが安易に想像できた所為だといえるかと。
というか、このお題が氷炎とヒューズの関係を明確に表しているかと。
また、氷炎とエドの双子の妹というオリキャラの繋がりは「ロイ・マスタング」ですが、
鋼キャラと関わりが深い、原作に違和感が無いオリキャラと感じて頂ければ幸いです。
使用お題「親友お題1」お題配布サイト「疾風迅雷」