「カゴの鳥」仲花

「ちゅうぼうのどんかん!」

「ちゅうぼうのかいしょうなし!」

そう大喬と小喬に突っ込まれた仲謀は、忙殺されている事実も忘れて即座に反応した。

「どういう意味だ、大小!」

という仲謀のツッコミ返しに対し、大喬と小喬はただ呆れる仕草を返した。

また、二人のツッコミに唖然とした仲謀の近臣達は、事情を察してすぐに立ち去った。

それ故に、大喬と小喬は満足すると、怒りで思考が止まった仲謀の不手際を指摘した。

「仲謀が花ちゃんだけを選ぶ為に頑張ってるのは良いよ」

「それに、花ちゃんは可愛いから、仲謀が独占したがるのもわかるし」

「だったら、邪魔をするな」

「仲謀が花ちゃんの不安の解消も出来ない甲斐性無しだからだよ」

「その上、花ちゃんの不安にも気付けないなんて鈍感すぎるよ」

そう告げられた仲謀はようやく怒りが静まり、花への配慮を考えられるようになった。

「……花に何かあったのか?」

「だから、仲謀は鈍感なんだよ」

「こ~んな甲斐性無しでも良いなんて、花ちゃんは一途だね」

「花に何があった!」

と叫んだ仲謀は、ただ揶揄だけを言葉にする大喬と小喬から花の事を聞き出そうとした。

だが、仲謀が花の事だけが思考の全てとなる事を良しとする事を、大喬と小喬は強調した。

「それは仲謀が確認すればいいよ」

「そうそう。花ちゃんだって仲謀に会いたいだろうし?」

そう大喬と小喬に告げられた仲謀は、花だけを妻とする事への周囲の説得と、婚儀の準備と日常的な執務だけでも忙殺されていたが故に、仲謀が花に会いたくても逢えない事実を主張した。

「それは時間的に出来ねぇって知ってるだろ!」

「そんな事ないよ?」

「そうだよ。こういう時は私達を頼るって学習が出来ていないの?」

と仲謀に答える大喬と小喬は意味深な笑みを浮かべながら提案をしてきた。

否、大喬と小喬の実行力を知るが故に、仲謀は真剣な眼差しと共に問い返した。

「……いつだ?」

「今晩でも大丈夫だよ?」

「でも、花ちゃんを襲うのは駄目だよ?」

「だったら、とっとと準備に取りかかれ!」

そういう仲謀の命令するような口調に対し、大喬と小喬は再び揶揄する様に答えた。

「仲謀がヤル気になったよ~」

「花ちゃんの身が危険だね~」

「黙って準備しろ!」

 

 

 

大喬と小喬の強引かつ非常識な手段により、仲謀は数週間ぶりに花の私室に訪れた。

だが、仲謀の多忙さと自ら周囲に遠慮していた花は、久方ぶりの再会にただ驚いた。

「……仲謀?」

「……なんでそんな間抜け面なんだよ?」

「だって、仲謀は忙しいから、しばらく会えないと思ってて……」

という花の答えは、仲謀にとっては機嫌を損ねる答えだった。

否、久方ぶりの再会を花も喜ぶ、と思っていた仲謀にとって、ただ驚く事は不満だった。

それ故に、仲謀は懸念していた花への不安へ配慮する言葉も忘れてただ怒った。

「じゃあ、おまえは俺と会えなくても良かったのかよ!」

「ち、違うよ!」

そう花は怒りを鎮めて勘違いを正そうとしたが、仲謀はすぐに立ち去ろうとした。

その為、花は急いで仲謀の袖を掴むと、強引に自身の方に身を傾かせてから抱きしめた。

「私だってすごく会いたかったから、仲謀が会いに来てくれたのは嬉しいよ!」

という花の言動に対し、仲謀は意外だったが嬉しさを隠せなかった。

だが、怒りを静められない、否、照れを隠したい仲謀はぶっきらぼうな問いを返した。

「じゃあ、なんで意外そうな顔で驚いたんだよ」

「……だって、仲謀にすごく会いたかったから、本人だと思えなくて」

そう言われた仲謀は、花の照れているともいえる拗ねた表情に煽られた。

そう。婚儀まで待つ、という自身の誓いと強くなる自身の欲との戦いに無言で堪えていた。

だが、色恋沙汰に対して酷く鈍い花は、仲謀から強く抱き返される事実に戸惑っていた。

「ち、仲謀?」

「そんなに可愛い事を夜の私室で言うな! 我慢が出来なくなるだろ!!」

「そ、それは私の言葉だと思うけど……」

という花の答えは、仲謀にとって想定外でも聞き流せない言葉だと思った。

それ故に、仲謀は不安を残さず告げるように促すと、花も正直な思いを言葉にした。

「仲謀が会いに来てくれるまで、すごく不安だったの。仲謀と一緒に生きていくって思っても、仲謀が側に居ないだけで……本当に私で良いのかな、って思ったりして」

「俺はおまえだけが良いんだ!」

そう仲謀から強く断言された、否、変わらぬ想いを聞いた花はただ驚いた。

否、仲謀の変わらぬ想いが花の不安を払拭し、同時に花も自身の想いを再確認した。

それを表情から察した仲謀は、意味深な笑みで花の不安を解消する方法を告げた。

「それに、そんな不安は結婚してからいくらでも解消してやるから安心しろ」

「……結婚後じゃないと解消できないの?」

という花の鈍すぎる問い返しに対し、仲謀は自身の欲と誓いとの戦いを再開させられた。

「お、おまえ、わかってて言ってるのか?」

「?」

「そろそろ限界だよ~」

「花ちゃんを襲うのは駄目だよ~」

そういう大喬と小喬は、葛藤する仲謀の心を見抜きながらも揶揄する事も忘れなかった。

そして、大喬と小喬の声が聞こえた花は、仲謀が私室に現れた理由と助力を察した。

「大喬さんと小喬さんに協力してもらったの?」

「ああ。あいつらのおかげで会いに来れたからな」

「じゃあ、大喬さんと小喬さんにも『ありがとう』って伝えてね、仲謀」

と花に頼まれた仲謀は、名残惜しそうに互いの身体を離すと、互いの唇をそっと重ねた。

それから、仲謀は名残惜しむ気持ちを抑え、花の私室へ侵入してきた窓辺に向かった。

「ああ、また会いに来る」

「うん。ありがとう、仲謀」

そう仲謀に答えた花は、私室の窓から去る姿が消えるまでじっと見送っていた。

それ故に、花も共にある事が当たり前となる夫婦となる事が更なる楽しみとなった。

 

 

 

 

 

……今回もケンカップルの会話が長くなりすぎました(遠い目)

ですが、これでも抑えに抑え、削りに削ったのですが……

ただ、そんな仲謀と花ちゃんの会話と大喬と小喬のツッコミも楽しんで頂ければ、と。

また、明日の更新は公花のSSです。