「カゴの鳥」文花

花ちゃんが文若を選んだ事は本当に青天の霹靂だった。

でも、新婚といえる時期でも甘さの欠片もない雰囲気は想定内だった。

だったら、部下の『世話』をするのも丞相の役目、だよね?

 

 

 

孟徳が上機嫌で仕事をしている、と知った元譲はあえて理由を知ろうと執務室へ訪れた。

しかし、孟徳は上機嫌だったがその理由を頑なに語ろうとはしなかった。

だが、文若がものすごい勢いで孟徳の執務室に現れた為に、元譲は頭を抱えた。

そして、怒り狂っている文若の形相も予想していた孟徳はただ上機嫌に微笑んでいた。

それ故に、頭に血が上ったままの文若は、孟徳への怒りと陳情を込めて叫んだ。

「丞相、責任を取って下さい!」

「俺は男を抱く趣味なんてないし、男は妊娠なんてしないぞ?」

そう孟徳は文若の怒りも執務室に来た理由も理解した上で煽る様に冷静に答えた。

その様な孟徳の冷静な態度で、文若も少しだけ落ち着いたのか、的確な反論をした。

「想像するだけでも死にたくなる様な事は言わないでください」

「おまえが言い出したんだろう」

と、孟徳が文若にそう答えた為、元譲は二人の会話を制する様にただ状況説明を求めた。

「孟徳、おまえは少し黙れ。そして、文若は冷静に状況を説明しろ」

「花の事です」

「やっぱり、花ちゃんは俺の助言をすぐに実行してくれたのか」

「花は素直すぎる上に、丞相の様な方の言葉も真摯に聞き入れるのです! ですから……」

そう文若がただ孟徳に怒りをぶつけ様とした為、元譲はただ現状を把握しようとした。

「つまり、孟徳がおかしな事を花に言った所為で問題が発生したのか?」

「このままでは執務になりません。すぐに花を元の状態に戻してください!」

「良いじゃないか、文若。おまえ達は結婚しても変わらな過ぎて潤いも無かっただろう? 上司の有り難い配慮を黙って受け取るんだな」

「丞相!」

と叫んだ文若が怒りに任せて孟徳に突進しようとした為、元譲が羽交い絞めにした。

そして、文若の行動を制する事に成功した元譲は想定外な状況を把握しようとした。

「今、花を独りにしても大丈夫なのか?」

「今は私の私室に閉じ込めていますし、入り口には兵と女官を配置しています」

「……なら、花の現状を説明してくれ」

そう元譲から問われた文若は少しだけ冷静さが戻った生真面目な口調で状況を説明した。

「昼間から媚薬を大量に服用した所為で、今は必死に理性と戦っているかと」

「な!」

「潤んだ瞳で見上げてくる表情は紅く、艶を含んだ声音で名を呼ばれれば……」

という孟徳の面白がるような言動は文若の怒りを更に煽った。

「丞相!!」

「孟徳やり過ぎだ。花の状態を元に戻してから、二人に謝れ」

そう元譲に言われた孟徳は悪戯が見つかった子供の様な仕草でネタばらしをした。

「でも、俺が渡したのはただ気分が高揚するだけの薬だぞ」

「……孟徳」

「花ちゃんの様に慣れてない女性だと媚薬は辛いだろうし、文若が昼から相手をしてくれるとは思えないから、ちょっと過剰に説明を盛ってから薬の服用を勧めただけだ」

という孟徳の悪戯の全容を知った文若はただ唖然として言葉を口に出来なかった。

また、元譲はただ深いため息と共に孟徳へ悪戯の内容と現状の再確認を求めた。

「では、花の状態はもう治まっている、と?」

「だろうな。ただ、薬の効能は治まっても過剰に盛った説明による状態はおまえが静めてやるんだな」

そう告げる孟徳は性質の悪すぎる悪戯をしたとは思えない程に冷静かつ上機嫌だった。

それ故に、元譲は孟徳を諌める様に周囲にも響き渡るような重低音で叫んだ。

「孟徳、性質の悪い冗談はいい加減にしておけ!」

「じゃあ、俺が静めても良いと?」

という孟徳の問い返しは、元譲に呆れを、文若には更なる怒りを煽った。

「丞相!!!」

「だから、文若が説明をしてから抱いてやれば解決だ。それに、おまえと花ちゃんにはこれから数日の休みをやるから安心しろ」

「……では、邸に戻らせて頂きます」

「ああ。休暇明けには嬉しい知らせを持ってこい」

そう孟徳が答えると、元譲から解放された文若は慌ただしく執務室から退室をした。

また、文若の思いとこれからの後始末で頭が痛くなった元譲は再び孟徳を諌めた。

「……孟徳、おまえはもう少し大人になれ」

「……花ちゃんの幸せを邪魔はしてはいないだろ?」

「花の幸せは文若の精神状態にも関係はしているだろう」

「だから、決定打も欲しんだよ」

という孟徳の言葉の意味と悪戯の理由を察した元譲は大きな溜め息を吐いた。

「……程々しにしておけよ、孟徳」

 

 

 

 

 

……花ちゃんの出番がない文花となりました。すみません!

ですが、文花が前提の会話なので、文花と明記させて頂きました。

ただ……書くのがとても楽しかったです(マテ!)

また、明日は仲花のSSになります。