8違う、逆に私が救われているの

ガンダムWの新作小説『フローズン・ティアドロップ』のネタバレが多く含まれています。

 

 

 

 

 

リリーナとカトルの言葉を聞いていたヒイロは、とうとつに病室へとはじめて訪れた。

病室で休もうとしていたリリーナは、ヒイロの来室を歓迎する様に微笑んだ。

その笑みに陰りがないと思ったヒイロは、あえて詰問する様にリリーナに問い掛けた。

「……人間に自由や自立心を望まない、支配された『平和』が正しいと思うのか?」

「いいえ」

「おまえが『リリーナ・ピースクラフト』に戻ることが『世界』と『平和』の為に必要なのか?」

そうヒイロに言われたリリーナは、問われた真意を理解し、あえて言葉で応えなかった。

そして、ただ微笑むだけのリリーナに対し、ヒイロは更にきつい視線と共に問い続けた。

「世界よりもオレの命を選択した事が正しいというのか?」

「私は自分の選択を後悔していません」

というリリーナの答えは、ヒイロにとって聞きたくない、想定したくない応えだった。

それ故に、ヒイロはリリーナに対して更にきつい視線だけを返した。

それでも、リリーナはあたたかで美しい笑みを崩さず、ただヒイロに答えた。

「私は何度でも貴方を選びます。ヒイロが自分の為に生きられる世界を願う限り」

「……」

「だって、私の願いは……ヒイロ、貴方が生きている世界だから」

そうヒイロに告げるリリーナの瞳は、美しい笑みとは対照的な悲しみに満ちていた。

そのようなリリーナの悲しみを、ヒイロは理解する事が出来なかった。

いや、感情を捨てる事で生きてきたヒイロには理解する事が出来なかった。

それ故に、ヒイロは淡々とした口調ときつい視線と共にリリーナへ応えた。

「……オレはそんなことを願ってはいない」

「……では、そう思える世界を私はつくります。だから、ヒイロ、貴方は生きてください」

というリリーナの想いに対し、ヒイロはただ無言を返した。

あまりにもヒイロらしい答えに対し、リリーナは再び満面の笑みで想いを続けた。

「貴方にも選択を迫っている事はわかっています。でも、ヒイロには自分の為に生きて欲しいのです」

「……それが願い、か?」

「ええ。それが私の願いで、その願いを叶える為だけに、私は生きる事を選びます」

そうリリーナが断言すると、ヒイロは決意を秘めた瞳と短い言葉で応えた。

「……了解した」

「え?」

と、問い返したリリーナは、ヒイロの真意と決意がわからず、ただ驚いた。

そして、その様なリリーナに対し、ヒイロは言葉ではなく、ただ背を向けた。

その様なヒイロの言動が理解できないリリーナは、再び名だけで意図を問うた。

「ヒイロ?」

「……約束はしない。だが、オレも選ぶ」

「……!」

「おまえはオレを止めた。だから、オレはおまえを止める」

そうヒイロに応えられたリリーナは、裏も表もない、満面の笑みで感謝を言葉にした。

ヒイロが選んだ『こたえ』が、遠く険しくとも、リリーナの道と重なるが故に。

そう。

リリーナが選んだ『道』と、ヒイロの選択が交わる事に罪悪を感じていた。

しかし、リリーナが『道』を選んだ時から願っていた応えであった故に、ただ微笑んだ。

「ええ。ありがとう、ヒイロ」

 

 

 

実際にリリーナ嬢が世界よりもヒイロを選んだ時は……ヒイロはどうするのでしょう?

その様な展開を原作で読んでみたい気もしますが……ちょっと怖い気がします。

 

 

 

 

 

護りたいあなたへ捧げる10のお題 (2)配布元「疾風迅雷」