ガンダムWの新作小説『フローズン・ティアドロップ』のネタバレが多く含まれています。
リリーナの『選択』が、否、リリーナの想いが信じられないヒイロは、ただ問い質した。
それ程に、リリーナが『平和』よりも『ヒイロ』を選んだ事実を認められなかったから。
しかし、リリーナはその様なヒイロの戸惑いさえも、包み込むように微笑んでいた。
それ故に、ヒイロはさらに戸惑い、ただリリーナの側で問う事しか出来なかった。
「……オレが生きる為だけに選んだというのか?」
「私に『ヒイロ』が居ない世界で生きろ、というのですか?」
というリリーナの答えは、ヒイロの想定も予測もつかない問い返しだった。
いや、リリーナ以外の誰もが、予想もつかない想定外な『想い』だった。
故に、ヒイロは返す言葉を失い、ただ佇む事しか出来なかった。
そして、その様なヒイロの言動を予測していたリリーナは、あえて微笑みながら応えた。
「私は貴方が考えるよりも、独善的で身勝手な人間なのです。だから、貴方が居ない世界など、貴方が犠牲となり続ける平和など要らないのです」
「リリーナ!」
そうヒイロが、リリーナの名を叫びながら、その声の強さに見合う鋭い視線も向けた。
しかし、リリーナは女神の微笑みと呼べるような美しい笑みをヒイロに返した。
否。ヒイロの思いがわかるが故に、そしてより強い決意をしていたが故にただ微笑んだ。
「私は大量虐殺を認める行為を自ら選択した愚かな女です。貴方に生きて欲しいと願う為だけに。あなたが忌避した『リリーナ・ピースクラフト』に戻ることになろうとも」
「……」
「……ヒイロ。『生きて』ください。自分の為に」
「……それが願いか?」
という、溜め息まじりのヒイロの問い返しに対し、リリーナは満面の笑みを返した。
そして、その笑みにみせられたヒイロは、言葉を返す事も否定する事もしなかった。
……リリーナ嬢が『ヒイロが居ない世界に価値がない』と断言する、とは思っていません。
あくまでも、『世界よりもヒイロを選んだリリーナ嬢』を書こうとした所為です。
ただ、原作でリリーナ嬢がそう断言したら……ちょっとビックリ、でしょうか?
そして、その様な展開になったら、ヒイロの反応がすごく楽しみですね。
護りたいあなたへ捧げる10のお題 (2)配布元「疾風迅雷」