4失うこととは狂うこと

ガンダムWの新作小説『フローズン・ティアドロップ』のネタバレが多く含まれています。

 

 

 

 

 

リリーナの『選択』が、否、リリーナの想いが信じられないヒイロは、ただ問い質した。

それ程に、リリーナが『平和』よりも『ヒイロ』を選んだ事実を認められなかったから。

しかし、リリーナはその様なヒイロの戸惑いさえも、包み込むように微笑んでいた。

それ故に、ヒイロはさらに戸惑い、ただリリーナの側で問う事しか出来なかった。

「……オレが生きる為だけに選んだというのか?」

「私に『ヒイロ』が居ない世界で生きろ、というのですか?」

というリリーナの答えは、ヒイロの想定も予測もつかない問い返しだった。

いや、リリーナ以外の誰もが、予想もつかない想定外な『想い』だった。

故に、ヒイロは返す言葉を失い、ただ佇む事しか出来なかった。

そして、その様なヒイロの言動を予測していたリリーナは、あえて微笑みながら応えた。

「私は貴方が考えるよりも、独善的で身勝手な人間なのです。だから、貴方が居ない世界など、貴方が犠牲となり続ける平和など要らないのです」

「リリーナ!」

そうヒイロが、リリーナの名を叫びながら、その声の強さに見合う鋭い視線も向けた。

しかし、リリーナは女神の微笑みと呼べるような美しい笑みをヒイロに返した。

否。ヒイロの思いがわかるが故に、そしてより強い決意をしていたが故にただ微笑んだ。

「私は大量虐殺を認める行為を自ら選択した愚かな女です。貴方に生きて欲しいと願う為だけに。あなたが忌避した『リリーナ・ピースクラフト』に戻ることになろうとも」

「……」

「……ヒイロ。『生きて』ください。自分の為に」

「……それが願いか?」

という、溜め息まじりのヒイロの問い返しに対し、リリーナは満面の笑みを返した。

そして、その笑みにみせられたヒイロは、言葉を返す事も否定する事もしなかった。

 

 

 

……リリーナ嬢が『ヒイロが居ない世界に価値がない』と断言する、とは思っていません。

あくまでも、『世界よりもヒイロを選んだリリーナ嬢』を書こうとした所為です。

ただ、原作でリリーナ嬢がそう断言したら……ちょっとビックリ、でしょうか?

そして、その様な展開になったら、ヒイロの反応がすごく楽しみですね。

 

 

 

 

 

護りたいあなたへ捧げる10のお題 (2)配布元「疾風迅雷」