ガンダムWの新作小説『フローズン・ティアドロップ』のネタバレが多く含まれています。
現状を、いや、ヒイロを助ける唯一の方法である『PPP』の起動をリリーナは選んだ。
それを知ったヒイロはその選択を止める為、リリーナの病室へと強引に通信を入れた。
『やめろ、リリーナ……』
といったヒイロが、リリーナの状態を確認すると、更に声を荒げるように叫んだ。
『おまえはピースクラフトに戻るな!』
「いいえ、ヒイロ……」
そう答えたリリーナは、激昻しているヒイロとは違い、冷静な態度と口調だった。
その上、リリーナは意志の強さを秘めた瞳で、ヒイロを真っ直ぐに見つめ返した。
「これは私たちが生き残るたったひとつの方法です」
『リリーナ、オレのことは気にするな……』
とヒイロが答えた時、その言葉の続きを想像したリリーナは表情を暗くした。
いや、ヒイロという少年を知る者が、多くいたが故に続きを安易に予想が出来た。
だが、それ故にリリーナはヒイロの言葉を遮った。
常に『オレの命は安い』と告げる、ヒイロ・ユイという少年を誰よりも貴く、守り、守られたいと想うリリーナの感情を伝える為に。
「ヒイロ、それは違います……貴方は自分の命をもう少し買い被るべきです」
そうリリーナに告げられたヒイロは、返す言葉をなくしたように沈黙した。
それ故に、リリーナはヒイロの答えを聞く事なく、いや、あえて答えを求めず、ただ想いを言葉にした。
「貴方はまだ自分の人生を全力で生きてはいない」
というリリーナの言葉に対し、ヒイロは反論する事が出来なかった。
いや、反論する言葉どころか意志さえもリリーナに奪われた。
だから、リリーナは瀕死の状態ながらも、笑みに近い表情でヒイロへと微笑んだ。
「もっと生きてください……貴方の魂が一際輝く瞬間を、いつか私に見せてください」
そうリリーナに告げられたヒイロは、自分に言い聞かせる様な短い問いを言葉にした。
『それは、任務か?』
「私の願いです」
というリリーナの答えは、ヒイロには想定は出来ても、言葉を返す事が出来なかった。
いや、ヒイロにとって、現状を受け入れようと足掻けなくなる、最悪の答えだったから。
しかし、それに気付いていたリリーナは、あえてヒイロに微笑みながら言葉を続けた。
「さよならは言いません。きっとまた会えると信じていますから」
そう言い切ったリリーナは、一方的に通信を切った。
それは、かつて死を覚悟したヒイロを止めようとしたリリーナからの通信を、ヒイロが一方的に切った時と同じ様に。
それが、小さくも意味がある意趣返しだと思ったリリーナは、口元を小さく歪めたが、すぐに真剣な面持ちで『PPP』を起動させた。
ラストに書いた『意趣返し』ですが、これはTVシリーズの後半を見た事がある方は想像しやすいかと。
というか、このシーンを何度か読み返した際に『意趣返し?』と思ったのは私だけではない!と思うのですが、どうでしょう?
そして、こういう譲れない決意等が有るシリアスなシーンがあると……萌えてしまうのはヒイロ&リリーナ至上主義者的には正しい、とも思いたいです。
というか、こういう会話が成立するところが、ヒイリリに萌える最大の理由だと思えるのです。
なので、新作小説でもこういう展開がある事を願っています。
護りたいあなたへ捧げる10のお題 (2)配布元「疾風迅雷」