ガンダムWの新作小説『フローズン・ティアドロップ』のネタバレが多く含まれています。
「皆様、本日は私のためにお集まりいただき誠にありがとうございます」
そうリリーナが挨拶したように、自分の誕生会をかつての居城であったサンクキングダム城で自ら執り行った。
そして、この誕生会は社交界の集会という華やかさとは無縁な、『平和』を考える討論会や勉強会というシンポジウムに近かった。
何故ならば、リリーナは自分の誕生会を、大統領となる為に催した物の一つとしたから。
故に、誕生会としては異例な3日間と設定された。
そして、リリーナは親しい人々だけではなく、いずれ政敵となるであろう政治家や元連合軍の軍人も招待した。
その様な意図の所為か、かつて世界国家元首であったクイーン・リリーナのバースディパーティーとしては慎ましくて質素とも言えた。
だが、それ故にこの場に居た者達は平穏なままに終わるだろうと思われた。
しかし、その思いを裏切る様に、武装をした集団が、武力でサンクキングダム城を占拠した。
そして、城にある核爆弾と人質を盾に、プリペンダーの解散と彼らの仲間の解放と身代金を要求した。
「平和は誰かから与えられるものではない。自分の手で勝ち取るものだ」
と、リリーナは過去にも説いたように、武装集団のリーダー・ディズヌフに対しても、厳しい声で詰問した。
だが、ディズヌフはプリペンダーの存在する現状が『偽りの平和』であり、『PPP』は『真実の平和』を実現する事が出来ると、リリーナに対して強く説いた。
確かにプリペンダーという組織は、完全平和と矛盾する存在だとリリーナも思っていた。
しかし、人々が平和を求めた翌年に起こったマリー・メイア軍の蜂起を阻止した時は、プリペンダーという存在がなければ解決しなかっただろう。
また、ガンダムの戦闘を見た民衆が『平和を手にした責任』に気付いて果たす気持ちになったのも事実だった。
そして、光に満ちた世界と相反する、人知れず日蔭の仕事をしている『彼ら』を気の毒に思った事もある。
けれども、支配による抑圧で戦争をなくす『PPP』を、リリーナは選択できなかった。
そして、このまま人質と共にこの世から消えてプリペンダーに事後を委ねる事も、『平和を手にした責任』から逃れているとも思った。
なにより、リリーナは『平和』を守りたいのであって、『平和』に守られたくなかった。
それ故に、リリーナはピースクラフトに戻る事も、人質となった人々と共に死を選ぶ事も出来なかった。
「リリーナ嬢、どうやら貴女は地球圏政府に見捨てられたご様子だ」
というディズヌフの言葉により、プリペンダーによる『火消し』がはじまった事を知ったリリーナは、ただ己の主張を固持した。
そして、その様なリリーナを助けようと、武装蜂起した集団の衣装を身にまとったヒイロが現れ、ディズヌフを無力化してから殺そうとした。
だが、急な横槍と想定外の抵抗により、リリーナが瀕死の重傷となった上、ヒイロはディズヌフを逃してしまった。
それでも、ヒイロはディズヌフが搭乗したビルゴを破壊する事に成功したが、自身は身動きが出来ない状態となった。
また、核爆弾にセットされた時限装置の実質的な破壊も、内蔵コンピューターのハッキングも『PPP』という選択をしなければ解除が不可能だと知った。
それ故に、誰もが『敗北した』と思う中で、瀕死だったリリーナが意識を取り戻した。
そして、現状とヒイロの状態を知ったリリーナは、躊躇う事なく『PPP』を選択した。
それが最悪な状況下で、ヒイロを助けられる唯一の方法だったから。
しかし、リリーナの選択を知ったヒイロは、珍しくらい声を荒げた。
だが、リリーナはヒイロに『生きること』を願い、自ら冷凍睡眠も選択した。
それ故に、リリーナはただヒイロから貰ったテディ・ベアを抱いて眠りについた。
今回も燃えに萌えているガンダムWの新作小説の捏造を書かせて頂きました。
現在も連載中で、掲載雑誌の購入には至っていない為、連載との齟齬があると思われます。
ですが、今回も『捏造小説』という免罪符を振りかざしてみようと思っています。
なので、原作至上主義の方はロングレンジまでの退避と回避をお願いします。
そして、今回の捏造したメイン設定は『世界よりヒイロを選ぶりリリーナ嬢』です。
多くの方が、ヒイロはリリーナの死に耐えられないが、リリーナはヒイロの死後も『平和』を求めて生きていくという想像が多いと思いますし、私もそう思っていました。
ですが、『プリペンダー5』でリリーナ嬢がヒイロの命を助ける為に『世界』よりも優先した選択をした為、リリーナ嬢がヒイロを最優先する妄想も有り?と思ったのです。
なので、今回はリリーナ嬢がヒイロだけを選ぶ、ヒイロの事を最優先するリリーナ嬢に挑戦してみました。
……まあ、今回も玉砕色が濃厚ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
護りたいあなたへ捧げる10のお題 (2)配布元「疾風迅雷」