志と恋心 第2話「輪廻」

土方と千鶴が『再会』をしてから一週間後。

沖田の呼び掛けで、山南も利用するファミレスに新選組の幹部だった者達が集まった。

薄桜学園に居る幹部達が良く利用する為、店員は冷静だが利用客は違った。

一人でも大騒ぎをするレベルの美形の集団の所為だが、当人達は気にしていなかった。

また、いつもはその様な状況も楽しむ沖田だったが、今回は真剣に会話を主導していた。

「で、平助は黙ってたんだ?」

そう沖田に問われた平助は、わずかに視線を逸らしたが、すぐに訴える様な視線も向けた。

「……千鶴の記憶はあいまいだったし、まさか再会した時に全て思い出して、また土方さんを好きになるなんて、想像も出来なかったから」

「……確か、桜が舞い散る中でたたずむ男の後ろ姿を何度も夢で見て、泣いていたって?」

と原田からの補足というフォローを受けた平助は、力説する様に言い訳を言葉にした。

「だから、千鶴にとって、あの頃の記憶は悲しいんだと思ったんだ」

そう平助も言い訳だとわかっている事を知りつつも、斉藤は淡々と状況の補足をした。

「だが、古語には「愛し」とかいて「かなし」と読むものもある。それに、あの頃の記憶は確かに楽しいだけではないが、悲しい記憶だけでもないはずだ」

「そうですね。私達は土方君と彼女に多くを託して先に逝きました。だから、託された彼らの想いは想像しか出来ませんが、ただ悲しむだけの人生を送る程に弱くはないはずです」

という山南の言葉により、言い訳を言う事も状況を確認する者もいなくなった。

しかし、空気を読めない、否、色事に疎い永倉は淡々と状況確認をした。

「……要は千鶴ちゃんが土方さんを今でも好きで、土方さんも千鶴ちゃんに惚れてる、でいいんじゃねぇか?」

そう永倉が言い切る様に問い掛けた言葉を聞いた原田は苦笑った。

「……おまえは簡略し過ぎだ、新八。そんなんだから女にモテないんだぞ?」

「少しばかりバレンタインでチョコを貰う数が多いからって、余裕ぶってんのか、左之!」

という永倉の悲壮感な叫びに対し、沖田は状況を忘れた様な道化じみた言葉を口にした。

「そうですねぇ……平助も千鶴ちゃんという可愛い幼馴染みが居ても、それなりに貰っていますし?」

「なに!」

「総司は余計無い事を言い過ぎ!」

そう平助は沖田が口にした言葉を肯定も否定も出来ず、ただ大声で場を制そうとした。

しかし、現世では永倉以上に色事に疎い斉藤の天然な発言が場を沈黙させた。

「だが、バレンタインでもらうチョコは生ものが多いから、誕生日プレゼントよりも扱いに困るとは思わないか?」

という斉藤の発言、否、周囲への問いかけに答える者はいなかった。

そして、その様な反応を斉藤は不思議に思っていたから、原田は再び苦笑った。

「……本当に斉藤は天然だな」

「では、この集りの意味を教えて頂けますか、沖田君?」

そう沖田にあえて再確認をした山南は柔らかな笑みと紳士的な言動で強引に話を戻した。

「……ただ確認したかっただけですよ。元新選組の面々として、千鶴ちゃんを仲間として受け入れるのか、って」

「……愚問だな」

「うん。僕もそう思う。でも、皆は?」

と沖田は、斉藤の言い分を一言から完全に察すると集まった面々にただ問い掛けた。

「俺は千鶴が望むなら、いつでも大歓迎だぜ?」

「そうだな、俺も千鶴の事は妹のように思っているからな、今も」

「俺も兄貴分として、千鶴ちゃんを守るぜ!」

そう原田と平助と永倉が昔から変わらぬ主張を告げ、山南も同意する様に微笑んだ。

「確かに斉藤君の言う通り、愚問ですね。彼女を認めたからこそ、私達は彼女に土方君を傍で支えて欲しい、新選組の行く末を見届けて欲しい、と願ったのですから」

という皆の意見は、沖田の想定内であったが故に、返す言葉が無かった。

否、沖田も雪村千鶴という存在の凄さに、改めて負けたと思った。

それ故に、沖田は敗北宣言をする様に、ただ千鶴の事を揶揄するよう言いながらも認めた。

「ほんと、千鶴ちゃんって最強だよね。剣の腕は前世よりも無いのに、肝は前世以上に据わってるし」

「土方さんに望まれた唯一の女性だからな、雪村は」

そう斉藤が断言すると、やはり集まった面々は否定も肯定も出来なかった。

だが、その様な状況でも、原田はあえて状況の収集と今後の提案を言葉にした。

「で、『幼馴染みの平助君』はどう思ってるんだ?」

「千鶴が本気だって事は俺でもわかる。だから、俺は千鶴の背を押すだけだ」

という平助の言葉は、『幼馴染み』以上の想いを感じさせた。

しかし、それも前世と同じだと確信している面々は、あえて今後の事を言葉にした。

「そうですね。『今』はその時期ではありませんが、『土方君と雪村君の想い』は守りたいですね。あの頃は託す事しか出来ませんでしたから」

「ああ。俺も借りはきちんと返すつもりだぜ?」

そう永倉が断言する様に意志を主張すると、集まった面々も同意する様に笑みを見せた。

それ故に、沖田はこの面々を集めた理由でもある提案を言葉にした。

「なら、あとは作戦会議だけですね?」

「作戦会議?」

と平助は沖田の言葉の意図がわからず、ただ疑念を言葉にして問い返した。

しかし、沖田の言葉の意図がわかった原田は、やはり苦笑いながらも言葉を補足した。

「そうだな。土方さんの場合、自身の想いや千鶴の想いよりも、互いの立場と一般的な幸せを選ぶだろうからな」

「そんな選択自体が、不幸の元だと、土方君は気付かないでしょうからね」

そう山南は土方の想いと変わらぬ言動を理解するが故に、淡い笑みでそれを否定した。

そして、土方が至上と思うが故に千鶴との『幸せ』を願った斉藤は山南に指示を仰いだ。

「では『総長』として、今後はどのように動きますか?」

「まずは、今も土方君を至上と思っている元監察方を味方にしましょう。彼らの協力を得られれば、土方君を攻略できる確率が高くなるでしょうから」

「確かに箱舘まで一緒だった島田君や、今も土方さんから頼まれごとが多い山崎君の協力が有れば心強いですね」

と沖田も的確で確かな今後の方針と指示を言葉にした山南を支持しながら笑みを見せた。

だが、沖田の笑みの黒さと、山南の言動の裏も知る原田と永倉は小声で確認し合った。

「……本気だな、山南さんも」

「……ああ。山南さんも敵には回したくねぇよな、現世でも」

「何か言いましたか、原田君に永倉君?」

そう問う山南の黒くも恐ろしさを感じる笑みを見た原田と永倉は人形の様にただ頷いた。

「「山南さんの意見に賛成です!」」

「では『任務』を開始するとしましょう」

と山南は集った者達に宣言すると、詳細な策と指示を提案した。

 

 

 

 

 

……今回は予告通り、土方先生と千鶴嬢の出番はありません。

一応、登場人物たちの会話は『ひじちづ』が前提ですが……すみません!

ですが、次回は土方先生と千鶴嬢が登場します!

……メインで活躍するキャラは違いますが(遠い目)