志と恋心 第1話「はじまり」

薄桜学園の唯一の女生徒である雪村千鶴は、万事において控えめな行動を心掛けていた。

しかし、その雪村千鶴が何故か廊下を全力で疾走をしていた。

しかも、鬼よりも険しい表情だった為、学園の生徒達も教師達もただ千鶴を避けていた。

そして、保健室へとノックもせずに入った千鶴は探していた土方を見つけた。

それ故に、千鶴は土方への想いを、心からの思いを叫びながら叫んだ。

「いい加減にしてください!」

そう千鶴に言われた土方は、自身が教師で、薄桜学園の教頭である事も一瞬だけ忘れた。

否、昔にそう千鶴から叫ばれた事を思い出した土方は返す言葉を失った。

そして、ただ自身の怒りをぶつけるだけの千鶴はただ想いを言葉として叫んだ。

「『土方さん』はいつもそうです! ひとりで苦労を背負いこんで、自分ばかりが辛い思いをして……」

と千鶴に言われた土方は、昔を思い出しながらもあえて同じ思いから否定をした。

「それが俺の性分なんだよ!」

そう土方が自身の偽らざる思いを聞いた千鶴も昔を思い出して一瞬だけ言葉に詰まった。

その様な千鶴に対し、土方はあえて昔から変わらぬ思いと答えを言葉にした。

「俺が何とかできる問題なら、俺が苦労すればいいじゃねぇか!」

「見ている者の気持ちも少しくらい考えてください!」

と千鶴にすぐに否定された土方は、昔と変わらぬ表情で言葉を返す事が出来なかった。

否、昔と変わらぬ会話故に、自身が成長していないのか、等と土方は苦笑いたくなった。

しかし、昔と変わらぬ事に気付きながらも、千鶴は昔から変わらぬ想いを言葉にした。

「そんな土方さんだから、少しでも傍で支えたいんです! そう思わずにはいられないんです!」

そう千鶴から変わらぬ心からの叫びと想いを聞いた土方はただ降参した。

いや、土方も千鶴以上に昔から変わらぬ思いと恋心が存在している事をただ肯定した。

しかし、男としての矜持から素直な肯定が出来ない土方は、あえて昔と同じ言葉を返した。

「参ったな……姉貴に言われている様なおまえの言葉は、逆らい辛いんだよ。いう事を聞かなきゃならん気がしてくる」

と千鶴に告げた土方は、無防備に叫び続けていた小さな体をしっかりと抱きしめた。

土方から静かに抱きしめながらも離さない意志を強く感じる拘束感に千鶴は驚いた。

しかし、千鶴は土方に抱きしめられる事に抵抗する事なく身を委ねた。

ただ、土方の言葉に秘められた想いと、昔を思い出させる言動に対し、千鶴もただ驚いた。

そして、ある意味では千鶴以上に驚いている土方は、あえて昔と似た言葉を口にした。

「おまえが俺の傍にいる様になってから、いくつかわかったことがある」

「……」

「俺は……おまえに支えられていたんだ、と」

そう千鶴に告げた土方はその言葉を紡ぐ優しげな表情と熱い視線を向けた。

そして、その様な土方の視線を直視したが故に、ただ千鶴は瞳を大きく見開かせた。

また、その様な千鶴に対し、土方もあえて想いを隠さずに素直な吐露を言葉にした。

「おまえが俺の傍にいると、ひとりで立つ事も苦しくなくなる……きっと、おまえの存在に救われていたんだ、今も」

という土方の吐露を聞いた千鶴は、流れる涙を止めず、ただ真っ直ぐな視線を返した。

そして、その様な視線を返されたた土方は、ただ静かに千鶴へと問うた。

「俺は、『土方先生』は『先生』として……先に生きる者として、導く者として、俺は『生きている』と思うか?」

「……はい」

そう千鶴は昔と変わらぬ真っ直ぐな視線と共に力強く肯定する様に微笑んだ。

泣きながらも変わらぬ強さを感じる千鶴に対し、土方は安心しきった表情で微笑んだ。

「おまえに肯定されると気が楽になる」

「つらい事も、苦しい事も、これからは私にも分けてください。私が土方さんの支えになれるなら、ひとりで抱え込まずに、頼ってください」

と千鶴が昔から変わらぬ愛情と思いを伝えると、土方も素直な答えと想いを認めた。

「ああ……傍に居てくれ」

 

 

 

千鶴が薄桜学園に着いた時、大きな桜の木の下で大空を見上げる男の背中を見つけた。

はらり、はらり、と桜が舞い散る中で佇む男の背を見た千鶴は泣きたくなった。

それ故に、千鶴は泣きながらも、愛しくも哀しい、見慣れた男の名を口にしようとした。

「と、し……」

そう千鶴がただ泣いていると、その気配に気づいた男が振り返ってから苦笑った。

「おまえは相変わらず涙もろいな、千鶴」

 

 

 

 

 

今回はラストの展開から始まり、次回は土方先生も千鶴嬢も出番が有りません(え?)

あと、土方さんと千鶴嬢と他の登場人物も前世の記憶がある事を前提としています。

また、「志と恋心」での前世は土方さんルートを基準とする記憶となっています。

 

そして、SSLの設定を捏造した連載の開始が遅くなり、申し訳ありませんでした。

ですが、少しでも楽しんで頂けるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。