ここ数日、平助の態度がおかしい、と千鶴は思っていた。
だが、それを指摘しようとすると、平助はあからさまに避けながら誤魔化した。
しかし、平助を幼馴染として心配している千鶴に対し、平助は降参する様に千鶴に問うた。
「……なあ、千鶴が一君とキスしたっていう噂、ホントなの?」
そう平助に問われた千鶴は、10日くらい前に斉藤から触れられた事を思いだした。
しかし、平助が想像していた反応とは違う千鶴の態度から、少しだけ気を緩めた。
「その反応だと嘘でもないけど、真実でもない、か?」
「……うん。斉藤先輩との仲を疑って尾行してきた人達に誤解と撒く目的で、だけど」
「でも、だからってディープキスなんて……」
と平助に忠告めいた言葉の誤りに対して、千鶴は即座に否定をした。
「ち、違うよ! 斉藤先輩はまぶたの上にキスしただけだよ!!」
「……ホントか?」
「こんな嘘を言っても利なんてないよ!」
「じゃあ、俺もする!」
そう言われた千鶴は、平助の唇が額に触れられた事にただ驚いた。
そして、その様な千鶴の反応を予想していた平助は、ただ言い訳と謝罪を口にした。
「今の千鶴はまだ誰かさんのものじゃないし、幼馴染みとしての親愛だし……現世でも悔いを少なくしたかっただけだから」
という平助の言動が理解できない、否、色事に鈍すぎる千鶴は気付けなかった。
そして、それを深く理解していたが故に、平助はただ謝罪だけを繰り返した。
「ごめんな、千鶴」
私が書くスタンダードな平助君に仕上ったかと思います。
平助君と千鶴嬢の恋愛を私が書くのはかなり難易度が高いのですが、
平助君の片想いや親愛以上恋愛未満という関係は書いていて楽しいです。