謎のトラックがシンから帰還したロスと退役したハボックによるものだと知ったマスタング組の面々は、その事実に喜びと更なる闘志に火を点けられた。
そして、トラックの外装をロイが錬金術で変えてから中央司令部に向かおうとした。
しかし、全ての門が閉ざされていた為、ロイとホークアイは今後の話し合いをしていた。
また、アグニはあえてブレタとフュリーや元マスタング組の面々との会話をしていた。
「本当に少佐は大佐の『盾』だったんですね」
そういったフュリーの信頼は、東方司令部時代以上に強くなった。
その様なフュリーの強い信頼に対し、アグニは口元に小さな笑みを浮かべながら答えた。
「ええ。私はその為だけに生きているから」
「少佐がイシュヴァール後にどんな生き方をしたかは知りませんが、共にあの戦場で生き残った者は信じていますよ」
というイシュヴァールで生き残った同志の言葉を聞いたアグニは笑みを隠さなかった。
「……ありがとう。とりあえず、これからもよろしく、で良いかしら?」
そうアグニに問われたフュリーは信頼と畏敬の念を込めて即答した。
「もちろんです!」
「……なら、これから俺達はあのラジオ局で、大佐と少佐と中尉が向かわれる、ですか?」
と問い返したブレタに対し、アグニは少しだけ苦笑ってから答えた。
「……多分、そうなると思う。マリアちゃんをお願いするわ」
「任せてください、少佐」
そうフュリーはすぐに答え、ブレタはアグニがロイを至上としている事を理解した。
だが、アグニへの想いが複雑なブレタはただロイの護衛を願った。
「……大佐をお願いします、少佐」
「ええ。マリアちゃんには大総統夫人をお願いするわ」
とアグニがフュリーとブレタに笑顔で答えてから、マリアと共に居る大総統夫人を見た。
それから、アグニは真摯な態度でトラックの片隅に居る大総統夫人に声をかけた。
「大丈夫ですか、大総統夫人?」
「ええ……ただ、これからもマリアさんは私と一緒ですか?」
「もちろんです。彼女も大総統夫人のお力になりたいと願っていますから」
そうアグニが答えると、大総統夫人は安堵する気持ちと感謝を隠さずにマリアに伝えた。
「……ありがとう、マリアさん」
「いいえ……私の様な者でもお役に立てるなら、光栄です」
と答えるマリアの表情は、穏やかで見る者を安心させる穏和な笑みだった。
しかし、その笑みと相反する心中を察したアグニは、ただマリアの名を口にした。
「マリアちゃん……」
「大丈夫です。私も出来る事をしたいと願って、自分で選びましたから」
そうアグニに答えたマリアは、穏和な笑みに似合わぬ覚悟をした瞳を向けた。
それ故に、状況もわからない大総統夫人は不安の色を隠さない視線をマリアに向けた。
そして、その様な視線を向けられたマリアは、ただ穏やかな笑みを大総統夫人に返した。
その為、大総統夫人は安堵したが、アグニはさらに複雑な思いをマリアに対して感じた。
だが、強い決意をしているマリアの意志を尊重する為、ただアグニは二人から離れた。
今回はマスタング組が補給を受けてセントラル内を移動している最中の会話となります。
そして、次回はマスタング組が別行動となる際の捏造小説となります。
使用お題「親友お題3」お題配布サイト「疾風迅雷」