5絶交宣言(お題使用1)

等価交換は錬金術でなくとも成立する。

だから、私はロイの近くで守る為に代価を差し出し、権利と義務を手に入れた。

……そう。

私はお父様側の『目的』も、軍が『やべぇ』という事も知っていた。

そして、私はロイを裏切り続けながらも、ロイを守り続けたいとも思っている。

きっと、ロイはこんな『側近』など『必要』とはしないだろう。

それでも……私はロイを近くで守りたかった。

 

 

 

マスタング組の面々が地方勤務となり、ホークアイが大統領補佐官という人質となった。

その様な人事が実行されても、アグニ・カーチスはロイ・マスタングの補佐官だった。

それはアグニがロイを守る場所と手段を大総統と取引で得た結果でもあった。

それ故に、アグニにはロイを守る以外の権利も義務もなかった。

だから、アグニは取引で得たこの事実が暴露されてもロイが変わらない事が怖かった。

「ロイ……」

「……私はお前を手放す気も離れる気もないぞ」

そう言ったロイは再会の誓いを交わしたホークアイが去ってからチェス盤を手に取った。

そのチェス盤に隠されたものを知るアグニはロイの言動を黙って見守った。

いや、ロイの思いがわからないが故に、アグニには返す言葉も浮かばなかった。

その様に戸惑い続けていても、己の信条は貫こうとするアグニに対してロイは苦笑った。

「本当に私の傍に居る女性達は頑なだな。マリアも独自で取引をしているようだし」

「え……」

「知らなかったのか?」

「……私はロイを守る事に関してしか情報は与えられないから」

というアグニの端的かつ実直な答えは、以前と変わらない様にロイは感じた。

そして、その変化の無さ故に、ロイがアグニへは問い難かった事を言葉にさせた。

「だから、ヒューズの死の真相を知らなかったのか」

「ええ……ロイとお父様側が対立する結果になるとは思ったけど、私も知らないわ」

そう答えられると、ロイはアグニの思考を揶揄する様に軽口めいた問いを返した。

「……絶交宣言なんて、鋼のみたいな子供じみた言葉を宣言するなんて思っていたのか?」

「……ロイから不要だと言われたら、どうしたら留まれるかとは考えていたわ」

「それこそ不要なものだな。おまえは俺を裏切ったわけではないだろ?」

とロイに問われたアグニが、珍しいくらいあからさまな驚きと戸惑いを見せた。

「私は大総統の地位を目指しているんだ、それくらいの覚悟と度量はあるつもりだぞ?」

「……ありがとう、ロイ」

「感謝は私もだ。おまえの選択のおかげで全てを取り上げられなかったからな」

「私の義務はある日までロイ・マスタングの命と体を守る事だけ……まずは連絡する?」

そうアグニに問われたロイは、チェスの駒に隠されたモノを取り出した。

「ああ。あの人にはこちら側の助力をして頂こう」

「でも、こちらが利用されるだけ、かもよ?」

というアグニの口調は以前から変わらぬ軽さと強さをロイに感じさせた。

だからロイもその様な強い信頼と深い絆へ応える様に真剣に問い返した。

「……覚悟の上だ。止める気か、アグニ?」

「今更ロイの言動を止める気はない。ただ、私はロイを守る盾で有れれば良い」

「……これからも頼むぞ、氷炎の」

そうロイは、シュヴァールから続く呪いじみた宿業と覚悟を確かめる様に淡々と告げた。

そして、アグニはロイの意図を全て察した上で、肯定する様に飾らない微笑みを見せた。

「ええ。任せて、ロイ」

 

 

 

 

 

冒頭のモノローグは以前に更新した氷炎の錬金術師の小説の改稿版です。

そして、それ以降の小説は新作といえるかと。

約束の日がメインの連続更新をしていますが、今回はあえて氷炎とマスタング組との

立場やスタンスが違っている理由を少しですが書いてみました。

いえ、マスタング組の面々もアグニの言動を信じていたが故に裏切られた、

という思いがあったと思いますし、事情故にロイを守り続けて欲しいとも思ったかと。

それも今回の連続更新では捏造をしていきたいと思います。

 

 

 

使用お題「親友お題3」お題配布サイト「疾風迅雷」