「この願いの名を、おまえは知っているのか?」
そう問い返されたリリーナは、ヒイロの意図がわからず、ただ言葉を問い返した。
「願い?」
「ああ。おまえが『幸せ』となる事、それが叶う『世界』となる事だ」
「私が幸せになる世界?」
「ああ、そうだ」
という、ヒイロの言葉は、リリーナにとって想定外だった。
いや、ヒイロのおもいを初めて知ったが故の驚きだった。
「……ヒイロが求めるものは『平和』ではないのですか?」
「否定はしない。だが、オレが求める『世界』には、おまえの『幸せ』が不可欠なんだ」
「……ありがとう、ヒイロ。私も同じです」
そう応えたリリーナは、穏やかで嬉しげな満面の笑みを添えて応えた。
そんなリリーナの応えは、ヒイロにも驚きを与えた。
「同じ?」
「確かに私も『平和』の為に全力を尽くしています。でも、その『平和』な『世界』でヒイロが『幸せ』になる事を私も望んでいるのです」
「リリーナ……」
「私も今はヒイロが『笑顔』となれる、『幸せ』になれる『世界』は想像しか出来ません。でも、ヒイロが私の『幸せ』を望んでくれるなら……それだけで私は幸せです」
とリリーナが答えた時、ヒイロはあえて言葉を返さなかった。
いや、言葉を……答えが必要ないと確信したから。
「ヒイロの願いに名はつけられませんが、これだけは理解してください。私の幸せは、ヒイロの幸せなのだと」
「……了解した」
そうヒイロは短くも強い思いを込めて応えた。
そんなヒイロに対して、リリーナも強くも真摯な想いを込めて見つめた。
「ならヒイロ、約束してください」
「約束?」
と問い返したヒイロは、リリーナの視線と言葉を受けて問い返した。
だからリリーナも、真っ直ぐに見詰め返しながら、確認をするように答えた。
「私達の幸せは互いの為にあるのだと」
「そして、重なる事を、か?」
「ええ。今はそれだけで『幸せ』です」
そう答えるリリーナは、本当に幸せそうだと、ヒイロは思った。
だから、ヒイロはあえていつもの口調でそっけない態度を返した。
「了解した。ならば早く地球に戻れ。明日は地球で仕事だろう?」
「ええ。今度はきちんと連絡をしてから会いに来ます。だから……」
と答えるリリーナは、少しだけ不安げに瞳を揺らした。
なので、ヒイロは安心をさせるように、小さな笑みを口元に浮かべながら答えた。
「余裕を見つけて休暇を合わせる。拒否はしない。だから安心しろ」
「ありがとう、ヒイロ」
切ない恋愛お題(2)お題配布元:疾風迅雷