6 自分には不相応

ヒイロに告白し、『偽り』を返されてから数カ月後、リリーナは急な休暇を取らされた。

それは働き過ぎているリリーナの体調を思った、ドロシーによるものだった。

しかし、ドロシーの別荘で休暇を取るどころか、書類を持ち込んで仕事をしていた。

「リリーナ様、少し休まれては? お仕事に逃避されても想いは消せませんわ」

という指摘のように、リリーナは封じた想いをかき消そうと、過剰労働を率先していた。

しかし、リリーナには想いを持つ事で、ある種の罪悪感も感じていた所為でもあった。

「……そうかもしれません。ですが、それ故にも私は出来る事を、全力で務めたいのです」

「「リリーナは幸せになるべき……いや、幸せになって欲しいと願っている。オレなどが望める事ではないが、そう願わずにはいられないんだ」とヒイロ・ユイが言ったそうですわ」

「……私はそのように思われるほどの人間ではありません」

『ドーリアン外務次官』しか知らぬ者が驚きそうな程、リリーナは消沈していた。

しかし、ドロシーは普段からは想像も出来ないほど穏やかな笑みを返した。

「私はヒイロ・ユイに同意見ですわ。貴女をリリーナ様と呼び続けている今でも」

「ただ私は私なりに『平和』への貢献を……」

「ええ、そうですわね。でも、前にも言ったはずですわ。理想を掲げるリリーナ様がいかに魅力的で、戦禍の火種となるのかを」

そう言われたリリーナは言葉を失った。

ドロシーの言葉通りの事が過去に何度もあったが故に。

しかし、ドロシーの意図はリリーナを追い詰める事ではなかった。

「リリーナ様も御自分をもっと理解するべきですわ」

「私も?」

「あの戦乱の世で『平和』を求められたリリーナ様は『平和』を実現した功労者ですわ」

「私に力はありません。多くの人々が『平和』を望んだからこそ実現したのです」

「そんな謙虚さもリリーナ様の魅力ですけど、私は行動するリリーナ様の方が好きですわ」

「行動する?」

と、リリーナはドロシーの言動の意図を探るように問い返した。

含む物を持たないドロシーは、そんなリリーナの慎重さに微笑みながら答えた。

「ええ。ご養父の復讐の為に銃を手に取った時や、サンクキングダムで主権を放棄した時や、世界を統合したクイーンとなられた時や、愚かな簒奪者に囚われながらも世界に向けてメッセージを送った時のように」

「……」

「ヒイロ・ユイの意志を尊重するのも良いですが、私は行動するリリーナ様も好きですわ」

そう言われたリリーナは、ドロシーの想いに気付き、感謝するように微笑んだ。

その笑みの意味に気付いたドロシーは、敬意を示すようにリリーナに対して一礼をした。

その礼に見覚えがあったリリーナは苦笑いを返しながら、ドロシーへの頼みを口にした。

「……有り難う、ドロシー。では、行動する為の一手を手伝って頂けますか?」

「勿論、喜んで」

「では、次の休日にヒイロと逢わせてください」

というリリーナの頼みは、ドロシーの想定内だった。

しかし、そう言ったリリーナの毅然とした表情は、ドロシーの想定外だった。

それでもドロシーは敬意と了承を表するように、リリーナに対して最敬礼を返した。

「それは簡単ですわ、リリーナ様。安心して任せてください」

 

 

 

 

 

切ない恋愛お題(2)お題配布元:疾風迅雷