5 忘れていた幸せ

「……どうしてウィナー家の当主がこのコロニーに居るんだ?」

帰ってきた自宅のマンションの部屋の中にカトルがいる事をヒイロは素直に驚いた。

カトルの情報網を駆使すれば、居所を見つけられるのは容易に想像できた。

しかし、多忙を極めるカトルが、遠いこのコロニーへ直接訪れている事が想定外だった。

そして、そんなヒイロの驚きを想定していたカトルは、微笑みながら軽口を口にした。

「リリーナさんの行動範囲はサーチ済みでも、ボクは違うんだね」

「……何の用だ、カトル」

「ヒイロに会いたかった、では納得してくれませんか?」

というカトルの軽口に対し、ヒイロは冷たい視線だけを返した。

なので、カトルは苦笑いを浮かべながらも、真摯な瞳でヒイロを見返した。

「半分は冗談です。でも、ヒイロに直接、伝えたい事があるんだ。リリーナさんに関して」

「リリーナに問題はないはずだが?」

「違うよ、ヒイロ。『ドーリアン外務次官』じゃなくて『リリーナさん』に関してだよ」

「……フォローを頼んだ件か?」

「それも理由の半分かな」

来訪の理由を口にしようとしないカトルに対し、ヒイロは表情も変えようとしなかった。

「ずいぶん分割された半分だらけだな」

「そうですね。でも伝えたい事は少なくなった方だよ。今のヒイロは幸せそうだから」

そう言うカトルは、軽口を止めて自身で調べ上げたヒイロの近況を確認しながら告げた。

しかし、告げられた内容が理解できないヒイロは、不審げな視線で言葉の補足を促した。

「ヒイロの事をリリーナさんと話すと、いつも君の暮らしを気にかけているんだ。ヒイロと再会できるのは『何か』があった時ばかりだからって」

とカトルに言われたヒイロは、感情がなかった表情にあからさまな嫌悪の色を見せた。

「……なら、オレは「幸せそうだ」とでもリリーナに伝えろ」

「そう思うなら直接、伝えませんか?」

「どういう意味だ?」

「リリーナさんと任務以外で逢いませんか、という意味しかないですよ」

「必要ない」

そう答えたヒイロは、端的にカトルの来訪の無意味さも否定した。

しかし、そう答えられる事も想定内だったカトルは引くどころか、更に言葉を重ねた。

「ねえヒイロ、誰にも休息は必要だと思いませんか。そして、リリーナさんが今、仕事に逃避している事には気付いていますよね?」

「……その役目はおまえ達の方が適している」

「……今はまだ、なんですね」

「?」

「いえ、ある人の言葉です。察しはつくと思いますが」

と、カトルが答えた言葉を聞いたヒイロは、即座に意図と人物が理解出来た。

だが、ヒイロはそれに応える気は全く無かった為、常となった無表情で無言を返した。

そんな昔から変わろうとしないヒイロに対し、カトルはただ苦笑いを返した。

「今はボクが引きます。でも、ヒイロも逃げられませんよ。相手がリリーナさんですから」

「……」

 

 

 

 

 

切ない恋愛お題(2)お題配布元:疾風迅雷