誘惑~誤解させないで!~仲謀編

仲謀と花が結婚してから半年以上の時間を夫婦として積み重ねた。

そして、『初夜』までの問題が嘘の様に、仲謀は花だけを愛し続けていた。

それどころか、最近の花は日が高くなるまで起床できない日も続いた。

それを大喬と小喬は揶揄しながらも2人の幸せを喜び、子敬も密かに応援していた。

また、花が仲謀からの愛情を一心に受け入れ、仲謀を尊重する花を周囲は歓迎した。

だが、花には一つだけ不満というか、不安があった。

それは、仲謀に愛され続ける夜の負担が大きすぎる事だった。

それは世継ぎを望むせいかと思った花は、この国での子宝に関する情報が欲しいと思った。

なので、花は城へ定期的に訪れるようになった呉夫人へ隠す事なく相談をした。

だが、仲謀のわかりやすい意図と、それに気付けない花に対し、呉夫人は再び呆れた。

いや、花には呆れというよりも申し訳なさを感じた呉夫人はただ再確認を求めた。

「……花さん。玄徳軍に帰りたくありませんか?」

「え?」

「いえ、そう思っても当たり前だから、正直に言ってちょうだい」

そう呉夫人に問い続けられた花は、再び自身の言動が問題なのかと思った。

しかし、結婚前から色恋沙汰に鈍すぎる花は、呉夫人の言動が理解できなかった。

それ故に、花は呉夫人に現状の問題を指摘してもらおうと問いを返した。

「えっと……やっぱり今回も大問題、なのでしょうか?」

「……本当に仲謀の選択眼と独占欲だけは褒めましょうか」

と、手加減なく仲謀への非難を言葉にする呉夫人に対し、花は返す言葉がなかった。

そして、花を認めたが故に正直かつ率直な再確認を呉夫人は問いとして答えを求めた。

「本当に仲謀などを夫として後悔をしているのでは?」

「……私にも不足している部分は多いと思います。でも、仲謀の傍も妻である事も誰にも譲りません」

そう言う花の答えを聞いた呉夫人は、驚く様に目を見開いてから穏やかな表情になった。

それから、花への思いを更に深めた事を示す様に、互いの手を取り合うとまっすぐに見た。

「ありがとう、花」

という呉夫人の言動は花にとって驚きだったが、その言動に含まれた好意には気づいた。

そして、意図的に名前を呼ぶ時の呼称が無い事にも気づいた花はただ驚いた。

その様な花に対し、穏やかに微笑んでいた呉夫人が急に悪戯を企む様な笑みを見せた。

「あなたのような娘を得られて、本当に嬉しいわ。だからこれはそのお礼よ」

「……お茶、ですか?」

そう問い返した花に対し、呉夫人は楽しげな事を企む様に微笑んでいた。

「ええ。薬草に近いモノだけど淹れ方はお茶と同じよ」

「これを仲謀に飲ませると……どうなるんですか?」

と問いかえす花の聡明さに気付いた呉夫人は更に楽しげに笑い、背中を押す様に告げた。

「察しも早いのね。でも、結果は見てのお楽しみ、かしら。大丈夫。体に害があるものじゃないし、明日は仲謀も休暇をとらせるわ」

「……が、頑張ります!」

そう答える花の初心さと仲謀への想いを再確認した呉夫人は満面の笑みで決意に答えた。

「ええ。次に会う時が楽しみだわ」

 

 

 

呉夫人と花が話し合った日の夜。

仲謀が寝室に入ってくると、花は呉夫人からもらった茶を淹れた。

最近は花を抱き潰すばかりの仲謀だが、行為前はこのように穏やかに過ごす日が多かった。

しかし、呉夫人の茶の効果がすぐに出た為、仲謀は花の意図を問うような鋭い視線を向けた。

「……誰にこの茶を貰った?」

「えっと……仲謀のお母さんからだよ?」

という花の答えを聞いた仲謀は意図が全く分からなかった。

いや、呉夫人が花に渡した理由は察する事が出来たが、花の意図がわからなかった。

だから、仲謀は花の意図を確かめる様に、比較的冷静な口調で状況を伝えて意図を問うた。

「……じゃあ、今の俺の状態もわからねぇか? これだけ身体が痺れてるのに、おまえが欲しくてたまらない」

「え?」

「そして、この茶は一度でも達しないと痺れがとれない」

そう仲謀から冷静に説明された花は、その冷静さと状況を理解が出来ずに不安となった。

それくらい、花にとって現状は想定外で仲謀の冷静さが不思議だった。

「……飲まされた事がある、の?」

「いや、父上から聞かされたことがあるだけだ。第一、おまえが淹れた茶以外を俺が一気に飲む事はねぇからな」

という仲謀の答えを聞いた花は、不信感は拭えたが、状況への対処がわからなかった。

「ご、ごめん。仲謀」

「で、この茶を飲ませた理由も白状するんだろうな?」

そう仲謀に問われた花は、この茶を飲ませるに至った理由の説明を求めた。

「……私に仕事をさせたくない理由を教えてくれる?」

という花の問い返しは、仲謀には想定外で抜身の刀を突き付けられたような問いだった。

だが、その様な仲謀の戸惑いを感じつつも、花は自身のただ夜の意図を確かめようとした。

「最近の仲謀は私に眠らせないだけじゃなくて、体力まで奪う様に何度も抱くから……その、少しでも早く子供が欲しいのかな、って相談したの」

「……」

「そしたら、この茶を渡されたの。そして、仲謀の予想通り、私はこの茶の効果は知らない」

そう花が経緯を話した為、仲謀は呉夫人の意図は完全に理解した。

しかし、今後もこの手を使われたくないと思った仲謀は、花に警告する様に冷たく問うた。

「いくら母上でも、毒を渡される、と考えなかったのか?」

「それは……自分で淹れてみたけど、女性には効果が無いようだったから大丈夫かな、って」

という花の答えは、仲謀の想定外で、それ故に互いの身も危ないと思った。

それくらい、普段は聡明と言える花の突拍子の無い無自覚な言動が危ういと仲謀は思った。

「……そんなこと言われたら、俺はおまえを監禁する事を躊躇わなくなるぞ」

「え?」

そう花が仲謀の更なる理解不能な言動を問おうとしたが、仲謀が花を先制する様に告げた。

「俺がおまえを抱く理由はただ欲しいからだ。そして、仕事はさせたくないんじゃねぇ。ただ独占したいだけだ」

「……私は仲謀の奥さんじゃないの?」

「どうしてお前は色恋沙汰に関しては鈍いんだ!」

という仲謀の叫びに驚きつつも、花はただ言葉での説明を求めようとした。

だが、それも察した仲謀は、再び花の言葉を制止する様にこの状況の打開しようとした。

「これ以上の答えを言葉で欲しかったら、おまえから触れてこい」

「えっ!」

「これ以上の会話は、欲を満たして痺れを取ってからだ……というか、おまえが欲しすぎてもう我慢の限界だ」

そう花に告げる仲謀の艶やかさに戸惑いながらも魅了された花は仲謀に触れられなかった。

ただ戸惑うように見える花に対し、仲謀は荒れ狂う自身の欲を抑えつつも静かに問うた。

「俺に触れるのは嫌か?」

「……どうして私を監禁したくなるの?」

と問い返した声が乾いている事に気付いた花は、自身の欲も煽られている事に気付いた。

それ故に、花は仲謀の思いを確認したかったし、仲謀にもただ求めて欲しいと花は思った。

その様な花の想いに気付いた仲謀は、欲以外の感情で顔を紅くしながらも正直に答えた。

「っ……お前にどうしょうもなく惚れてるせいだ!」

「……ありがとう、仲謀」

そう仲謀に答えた花は互いの欲を満たし、仲謀の身体は自由となった。

しかし、それだけで煽られ続けた仲謀が満足は出来ず、花は何度も気絶しかけた。

だが、それでも仲謀は花を気絶はさせず、仲謀は行為で疲れ切っている花に声をかけた。

すると、ギリギリのところで意識を保っているはずの花が、仲謀へと明確な声音で問うた。

 

 

 

「……答えてくれる、仲謀?」

そう花に問われる事を覚悟していた仲謀は、ただ言葉遊びの様に軽い口調で問い返した。

「……答えないとどうする気だ?」

「仲謀が執務中だろうと面会中だろうと、関係なく傍で煽り続ける」

という花の答えは、仲謀には想定外だったが故にただ驚いた。

しかし、仲謀の反応は予想して花は、真剣である事を伝える様に最後通牒も突きつけた。

「これは子敬さんの許可もあるから、あとは仲謀の返答次第だよ?」

そう花に告げられた仲謀は、花の本気さを勘違いして頭に血をのぼらせたまま怒鳴った。

「……そんなに俺に抱き潰されるのは嫌か!」

「仲謀を嫌いになる事なんてありえない」

「じゃあ、なんでだよ!」

「仲謀が独りで抱え込む所為だよ!」

という花の叫びは、仲謀が隠したかった愛情とはいい難い醜い感情と直面させられた。

そして、仲謀の隠している想いを知りたいと思っている花は、ただ思いのままに問い続けた。

「どうして私を抱き潰すの?」

「……意識的にはしてねぇ」

「でも、ここ1カ月はお手伝いも出来ない程に日中は起きられないし、いくら簡単な仕事ばかりでも、滞るはずの作業が誰も気にしない程の根回しがされてる、よね?」

そう冷静に花が問う為に、完全に頭に血が上っている仲謀はただ素直な想いを言葉にした。

「……夫が妻を独占して何が悪い!」

「この国では普通の奥さんはお仕事をしないし、家で夫を待っているのが普通だから?」

「……ただおまえを独り占めしたいだけだ! それの何が悪いってんだ!」

と花への独占欲をあからさまに告げる仲謀に対し、花は仲謀の身体を静かに抱きしめた。

「……仲謀」

そう花から静かに名を呼ばれ、身体で感じた互いの鼓動に気付いた仲謀は冷静になれた。

そして、それを察した花は、まずは自身の想いを言葉にしながら仲謀に思いを伝えた。

「私は仲謀が好きだから、私は仲謀の傍に居たいから、仕事も勉強も続けてる。でも、仲謀が嫌ならはっきりと言って欲しい。そして、お互いの本音も交わして2人で『答え』を見つけよう?」

「……男の本音なんて女が聞いても気分を害するだけだ」

「私は仲謀の想いをそんな風に思わない」

という花の言葉は、真摯で深い想いを仲謀に感じさせた。

それ程までに想われている事実を再確認した仲謀は、花に対する本音を少しだけ吐露した。

「……本当におまえを抱き潰す気はなかった。ただ、おまえを何度も抱いた翌朝は辛そうだから、おまえがいつ休んでも良いように子敬に根回しはさせていた」

「……」

「それに……最近のお前は日常でも俺を煽る言動ばかりだから、夜も抑える事が出来なかった」

そう仲謀に言われた花は、あえて聞き役に徹していた事を忘れたかのように確認をした。

「煽る?」

「結婚してからは自国の服じゃなくて……俺が贈った服を着てるだろ?」

という仲謀の言葉は、花にとって想定外だった。

いや、現代で過ごしているならば当然だった事を指摘された花は不思議そうに問い返した。

「だって仲謀の妻になったから、制服は着れないよ?」

「は?」

「だって、制服は学生が着るものだから、奥さんになったら着ないよ」

「……そういう事は早く言え」

そう告げた仲謀は真っ赤な顔を隠す様に花を抱きしめ返しながら表情を隠そうとした。

だが、仲謀がそこまで顔を紅くする理由が思いつかない花は、まだ不思議そうだった。

それ故に、仲謀は更に顔を紅くしつつも、花に事態を理解させる為の言葉を重ねた。

「おまえが俺の服を着るって事は……誘ってると思っていたんだよ!」

「!」

「だから、ついおまえの些細な言動でも煽られて、仕事にも集中できなくて、子敬にも揶揄された。そして、おまえを抱き潰す事で仕事がはかどるなら、と根回しを強化しやがった」

と花に告げた仲謀は、再び頭に血がのぼっていく事を、自覚しつつも止められなかった。

そして、仲謀の想いと事態を理解した花も、顔だけでは足りないくらいに紅くなった。

「……えっと、それは私が悪い、のかな?」

「俺だけが悪いという気か?」

「じゃあ、お互いが悪かったって事で、これからは独りで抱え込まないでくれる?」

「それは俺のセリフだ。悩み事が出来たらまずは俺様に相談しろ」

そう仲謀に告げられた花は、その決意を確かめる様な問いを返した。

「……仲謀への不満でも?」

「俺様がそれくらいで気分を害する様な小物に見えるのか?」

と花に告げる仲謀が自信満々だったが為に、花は仲謀の思いを更に確かめようとした。

「……だって、仲謀は俺様なところも変わらないし」

「……」

「酒を飲まなくても周囲も気にせず暴走する事も多いし」

そういう花の言動は、仲謀には想定外でも自覚している事だった為に聞き流せなかった。

「……おい」

「王子様然とした容姿と違ってかなり口も悪いし」

「……俺を怒らせたいのか、花!」

と仲謀が再び頭に血をのぼらせたような口調で叫んだが、花はそれを制する様に笑った。

「でも、仲謀が好きな気持ちだけはぶれないよ。だから、仲謀も私に少しでも相談してね。ただ私が仲謀に甘えるんじゃなくて、仲謀も私に甘えて欲しいから」

「……今夜も寝かせねぇぞ」

そう仲謀が花に告げると、花も仲謀を受け入れる様に微笑みながら自身の想いも告げた。

「大好きだよ、仲謀」

「ああ。俺もだ、愛している」

 

 

 

 

 

……想定外に仲謀編は長くなりました。

いえ、ケンカップルの会話が楽しくてついつい長くなってしまいました。

これでも削ったのですが……読まれている方に楽しんで頂ければ、と。

というか、ここまで全年齢小説で長くメインCPだけの会話を書いた事は少ないかと。

ええ。同人活動の契機となったNLCPは……会話が成立しづらい方だったので(遠い目)