誘惑~甘える~孟徳編

朝食後に花は孟徳と喧嘩という名の言い争いとなった。

そして、花は孟徳の制止も聞かず、朝食の後片付けるとすぐに買い物へと出かけた。

しかし、一人になり、冷静な思考が戻った花はすぐに反省した。

そして、孟徳の言い分が正しいと思った花は、謝罪と仲直りをしようと思った。

だが、上手く伝える方法がわからずに困っていると、村の女性に話かけられた。

その時、花が喧嘩の仲直りをしたいと告げると、夫に甘えれば万事解決だと答えた。

その自信満々な態度に戸惑いながらも、花は買い物を終えるとすぐに家に帰った。

そして、買い物の荷物を片付けると、あからさまに機嫌が悪い孟徳に声をかけた。

「……ただいま帰りました」

そう花に声をかけられても、孟徳は書から視線を外さず、言葉を返す事も無かった。

それ故に、花は躊躇いつつも書を読んでいる孟徳を抱きしめた。

そして、花から孟徳の頬にキスをしてから謝罪を言葉にした。

「……ごめんなさい、孟徳さん」

「……これは誰の入れ知恵?」

と、孟徳は自分を抱きしめる花に対し、冷静かつ沈着な態度で問い返した。

いや、孟徳を深く知るようになった花は、もう怒っていない事には気づいた。

しかし、孟徳の声音は花に向ける声としては低く、詰問する様な声音だった。

それ故に、花は孟徳の意図がわからず、孟徳は花への言葉を重ねつつも問い質した。

「だって、花ちゃんが俺に甘える、なんてめったになかったからね」

「そ、そうですか?」

「うん。贈り物を喜んではくれたけど、何かが欲しいって言わないし、俺が甘える事があっても、花ちゃんに甘えられた事はあまりなかったからね」

そう孟徳に答えられた花は、自身の態度を思い返し、返す言葉を失った。

いや、孟徳の言葉に反発した今朝の言動も含め、花は自信を無くした思いを素直に吐露した。

「……やっぱり私、恋人としても奥さんとしても失格、ですね」

「そんな事ないよ!」

と花に告げる孟徳は、先程までの無言も詰問も嘘の様な甘い声音で断言した。

それは孟徳が花だけに見せる甘い表情と優しい声音だった。

それ故に、花も率直な思いと孟徳への想いも素直に吐露する様に告げようとした。

しかし、それを制する様に、孟徳はニッコリという文字が見える笑みを花に向けた。

「あ、ただ、花ちゃんが俺に甘えた結果は……想像が出来てる?」

「結果、ですか?」

「うん。今、こんな風に君に甘えられたら、2、3日は離せなくなるよ、俺は」

そう花に告げる孟徳の表情は甘くも包み込むような優しさに満ちていた。

だが、そう孟徳に告げられた後、幾度も気絶するくらい愛され続けた事を花は思い出した。

そして、その様な花の思考を読み取ったように、孟徳は更に甘い声音で囁いた。

「だから、たっぷりと甘えさせてあげるよ」

「ま、待ってください!」

と花に抵抗された孟徳は、気分を害する事なく、ただ答えられなかった問いを再び問うた。

「……じゃあ、答えてくれる?」

「……この村の女性に喧嘩した事を話したら、甘える事で解決だって言われたんです」

「……で、それだけでこんなに盛大に甘えてくれたんだ」

「はい……」

そう花に答えらえた孟徳は、急に真面目かつ真剣は表情になると小声で呟きはじめた。

そして、その呟きは近くにいる花にも聞こえたが故にただ驚いた。

それくらい、呟く孟徳は意外で、花に甘えられる方法と過去を悔やむ様が可愛いと思った。

それ故に、花は苦笑いつつも孟徳を抱きしめる腕に力を込めてから笑顔で問い掛けた。

「そんなに甘える事が孟徳さんにとって嬉しい事なら、これからもしますよ?」

「ほんと?」

「はい」

「じゃあ、今日から1週間は甘え続けてくれる?」

と問いかけてくる孟徳の問いは、花にとって想定外でも、その状況を予測する事は出来た。

それ故に、花はその状況を確認する様に、孟徳の問いに答えではなく問いを返した。

「その間の食事や家事は放置ですか?」

「もちろん!」

「却下です!」

そう花に断言された孟徳は、盛大かつ子供の様に駄々をこねようとした。

「えー!」

「えー、じゃないです!」

「じゃあ、どこかの宿泊施設に行って……」

と、孟徳が現実逃避の様な事を告げようとした為、花はそれを制する様にニッコリと笑った。

「孟徳さん?」

「……はい、俺が悪かったです。ごめんなさい」

「でも、多めに日持ちする食事を作って、家事もある程度片付ければ、2日くらいなら……」

「2日も花ちゃんを独占できるの?」

そう孟徳は花の言葉を再確認する様に満面の笑みで問い返した。

その様な孟徳の言動は、花よりも『大人』でもある人物とは思えない程だった。

けれども、臣下の最高位である丞相だった頃から、花への態度は変わっていない。

それ故に、孟徳が愛おしいと想う花も、自然と微笑みながら問い返した。

「……そんなに私を独占したいんですか?」

「君は俺を独占したいと思ってないの?」

「私はすでに孟徳さんを独占しています。だから、良いんです」

と、孟徳に答える花が出逢った時から変わらないが故に、孟徳は花が更に愛おしいと想った。

「……本当に君は無欲だなぁ」

「じゃあ、どうしたら孟徳さんは満足するんですか?」

そう問い掛けてきた花に対し、孟徳は口元を歪めながら互いの額を合わせた。

その様な孟徳の言動に花は驚きつつも抵抗はしなかった。

それ故に、孟徳は至近距離から真っ直ぐで真摯な想いを込めて花を見つめた。

「甘いね、君は」

「え?」

「人の欲に際限なんてないんだよ。だから俺は君を求め続けるんだ」

という孟徳の答えは、花にとって想定外だったが、その答えはとても嬉しかった。

だから、その想いを込めて、孟徳へ甘えるように満面の笑みで自身の思いを告げた。

「じゃあ、孟徳さんは私だけを求め続けてくださいね。それが私の欲であり願いです」

そう告げられた孟徳は、強く花の身体を抱きしめてからその身を横抱きにした。

その様な孟徳の反応が嬉しかった花は、まだ日も高い事も忘れてただ身を委ねた。

そして、その様な反応が嬉しかった孟徳は、花の身を寝台に寝かせながらキスをした。

「……大好きだよ、花ちゃん」

「私もです、孟徳さん」

 

 

 

 

 

今回は村の女性の会話を入れるかを悩みましたが、

今回は孟徳さんと花ちゃんの会話だけにしてみました。

そして、私にしてはかなり甘めの新婚夫婦のような仕上がりかと。

 

というか、孟徳さんが丞相ではなくなると、甘いお話になりやすい事に気付きました。

いえ、孟徳さんが丞相だと今回の孔明編のような『対立モード』な会話が

主軸になるネタしか思いつかなかったのですが、思いでがえし後ならば、

孟徳さんと花ちゃんの会話が甘い仕様にする事も出来るようです。