3 これでいい。これでよかったんだ

リリーナの警護任務を終えたヒイロはプリペンダーの事務所で報告書を作成していた。

そんなヒイロのキーボードを打つ速さは人外で、雰囲気でも強く人を拒絶していた。

しかし、そんなヒイロに慣れているカトルは事務所へ入るなり、いきなり問い詰めた。

「ヒイロ、君はリリーナさんを傷付けたいのかい?!」

「……」

「君も、リリーナさんに希望を見出した者として、護ろうと思っていたはずだよ」

というカトルの言葉には、ヒイロとリリーナへの真っ直ぐな思いと純粋さが溢れていた。

そして、その思いの強さは、ヒイロに短くもカトルへ答えさせた。

「……リリーナの幸せはオレも願っている」

「じゃあ、どうして?」

「それをおまえが問い掛けるのか、カトル?」

そう問い返されたカトルは、隠している迷いを見透かされたと思って言葉を失った。

そんなカトルに対し、ヒイロは淡々とだが、応えるように自分の思いを口にした。

「オレ達はガンダムのパイロットだった。そして、この手は染まっているんだ」

「でも、ヒイロ。リリーナさんは……」

「リリーナの理想は地球圏に住む者の希望だ、理解はできる」

「だったら、ヒイロも幸せを求めても構わないはずだよ、いや、幸せになるべきだよ!」

と、カトルは自身の迷いを振り切るように強い口調で断言した。

しかし、ヒイロは自身の思いを変える事なく、ただ思いを口にした。

「オレは今の状況に不満が無いとは言えない。そして、戦いも無くなった訳ではないが『平和』と呼べる日々が続く今は『幸せ』だと思っている」

そう言うヒイロに対し、迷いを解消できないカトルは、告白するように問い返した。

「じゃあ、ヒイロはどんな『幸せ』を望むんだい?」

「……わからない」

とヒイロに答えられたカトルは単純に疑念を抱いた。

無言であろうとも、ヒイロが答えに窮する事が、カトルには珍しかったから。

「わからない?」

「リリーナの思いはわかる。だが、オレに『想い』はないんだ」

「……ごめん、ヒイロ」

「いや、かまわない。だが、リリーナへのフォローは頼む」

そう言うヒイロに対し、カトルは軽くもしっかりとした口調で応えた。

「それは請け負います。でも、本当にリリーナさんは……」

「リリーナは『平和』へと世界を導き、維持の先導もしている。そして、オレという存在も救ってくれた。それだけでオレは生きていける」

「ヒイロ……」

「リリーナは幸せになるべき……いや、幸せになって欲しいと願っている。オレなどが望める事ではないが、そう願わずにはいられないんだ」

と、リリーナへの『おもい』を口にするヒイロの言葉が、カトルは使命感に火を点けた。

「……わかりました。ヒイロのリリーナさんへの『おもい』は。ボクに任せて下さい」

「カトル?」

カトルが急に元気良く答えた為、ヒイロは不審げに名で問い返した。

すると、カトルは紳士的といえる笑顔でヒイロに応えた。

「リリーナさんへの『フォロー』は僕が請け負いますから」

「……ああ、頼む」

カトルの態度に違和感と不信感を感じたヒイロだったが、今までの信頼を優先した。

 

 

 

 

 

切ない恋愛お題(2)お題配布元:疾風迅雷