リリーナの警護任務を終えたヒイロはプリペンダーの事務所で報告書を作成していた。
そんなヒイロのキーボードを打つ速さは人外で、雰囲気でも強く人を拒絶していた。
しかし、そんなヒイロに慣れているカトルは事務所へ入るなり、いきなり問い詰めた。
「ヒイロ、君はリリーナさんを傷付けたいのかい?!」
「……」
「君も、リリーナさんに希望を見出した者として、護ろうと思っていたはずだよ」
というカトルの言葉には、ヒイロとリリーナへの真っ直ぐな思いと純粋さが溢れていた。
そして、その思いの強さは、ヒイロに短くもカトルへ答えさせた。
「……リリーナの幸せはオレも願っている」
「じゃあ、どうして?」
「それをおまえが問い掛けるのか、カトル?」
そう問い返されたカトルは、隠している迷いを見透かされたと思って言葉を失った。
そんなカトルに対し、ヒイロは淡々とだが、応えるように自分の思いを口にした。
「オレ達はガンダムのパイロットだった。そして、この手は染まっているんだ」
「でも、ヒイロ。リリーナさんは……」
「リリーナの理想は地球圏に住む者の希望だ、理解はできる」
「だったら、ヒイロも幸せを求めても構わないはずだよ、いや、幸せになるべきだよ!」
と、カトルは自身の迷いを振り切るように強い口調で断言した。
しかし、ヒイロは自身の思いを変える事なく、ただ思いを口にした。
「オレは今の状況に不満が無いとは言えない。そして、戦いも無くなった訳ではないが『平和』と呼べる日々が続く今は『幸せ』だと思っている」
そう言うヒイロに対し、迷いを解消できないカトルは、告白するように問い返した。
「じゃあ、ヒイロはどんな『幸せ』を望むんだい?」
「……わからない」
とヒイロに答えられたカトルは単純に疑念を抱いた。
無言であろうとも、ヒイロが答えに窮する事が、カトルには珍しかったから。
「わからない?」
「リリーナの思いはわかる。だが、オレに『想い』はないんだ」
「……ごめん、ヒイロ」
「いや、かまわない。だが、リリーナへのフォローは頼む」
そう言うヒイロに対し、カトルは軽くもしっかりとした口調で応えた。
「それは請け負います。でも、本当にリリーナさんは……」
「リリーナは『平和』へと世界を導き、維持の先導もしている。そして、オレという存在も救ってくれた。それだけでオレは生きていける」
「ヒイロ……」
「リリーナは幸せになるべき……いや、幸せになって欲しいと願っている。オレなどが望める事ではないが、そう願わずにはいられないんだ」
と、リリーナへの『おもい』を口にするヒイロの言葉が、カトルは使命感に火を点けた。
「……わかりました。ヒイロのリリーナさんへの『おもい』は。ボクに任せて下さい」
「カトル?」
カトルが急に元気良く答えた為、ヒイロは不審げに名で問い返した。
すると、カトルは紳士的といえる笑顔でヒイロに応えた。
「リリーナさんへの『フォロー』は僕が請け負いますから」
「……ああ、頼む」
カトルの態度に違和感と不信感を感じたヒイロだったが、今までの信頼を優先した。
切ない恋愛お題(2)お題配布元:疾風迅雷