違う大学に進学しても親交がある高校時代のクラスメイトと花は休日の食事を共にした。
また、それぞれが違う大学に進学した所為もあり、花と彩とかなの会話は盛り上がった。
しかし、花が高校時代から付き合っている広生との進展を聞いた彩とかなは驚いた。
それくらい、2人には花と広生の関係がキス以上に進んでいない事は衝撃だった。
そして、色恋沙汰に相変わらず鈍い花でも、2人の驚き方には戸惑って不安となった。
その様な花に対し、彩は素直な驚きと忠告する様な言葉を口にした。
「外野が口を挿む事じゃないけど、それは驚くかも」
「やっぱり……そうなのかな?」
「だって、長岡の独占欲とか考えるとありえない気がするけど?」
そう彩が花に問うと、すぐにかなもその問いへ同意する様に正直な思いを言葉にした。
「だよねぇ。毎朝離してくれない!っていうグチを聞かされてもおかしくないって思うし」
というかなの言葉は、花にとっては想像もつかず、ただ不安な思いが強くなった。
それ故に、不安からネガティブな思考となった花は言葉を返す事もなくただ沈黙した。
その様な花を気遣った彩は、軽い口調で状況を楽観する様な言葉も口にした。
「ま、まあ、長岡には長岡の考えがあるかもしれないし、深く考えない方が良いかも」
「でも、浮気してる気配はないみたいだし……これはもう誘うしかないよね!」
「……誘う?」
そう花が言葉の意図を確かめる様に首を傾げる様は、恋する乙女らしい色香があった。
その様な花に対し、彩は天然さに溜め息を吐き、かなは広生の忍耐力が凄いと思った。
そして、2人の反応も理解できない花に対し、彩は過ぎていると思うお節介を言葉にした。
「……花に長岡を誘惑する事ができるとは思わないけど、アクションと確認は必要かも」
「ゆ、誘惑?!」
と花は、彩の過ぎたお節介な言葉よりも、かなの言葉を補足する言葉にただ驚いた。
その様に驚く花は先程の色香が嘘の様に幼くも変わらないと思った。
それ故に、彩とかなは花と広生の関係に助言という名の過干渉をした。
「そうそう。花の天然な鈍さとフラグクラッシャーの所為で挫けてるだけかもしれないし」
「とりあえず、長岡の想いを確認する、って考えておきなよ、花」
そうかなと彩に告げられた花は、広生との関係を熟慮する様に再び沈黙した。
その様な花に対し、彩はあえて無言で食事を再開し、かなは楽しげに恋の報告を求めた。
「事後報告、待ってるからね!」
花が彩とかなにお節介な助言をされた日から数日後。
花は広生との久方ぶりのデートを楽しむ事が出来なかった。
いや、お節介な助言を活かそうと、花は出来る限りの方法で広生を煽った。
しかし、色恋沙汰に鈍い花の行為は拙く、それ故に広生は煽られずにただ心配になった。
だが、同時に花の言動は二人が出会った異なる世界の事を思い出させた。
その世界で出会った芙蓉のお節介で花が時々おかしな言動をしていた事を。
それ故に、広生は花の言動の意図とその背後にクラスメイト達がいる事に気付いた。
「……何を焦っているんだ?」
と広生が花の煽り応えず、ただ不安へ配慮する様な広生の言葉に対して花は驚いた。
すると、広生はその様な花の言動も出逢った頃から変わらないと思いながら苦笑った。
「確かにそういった欲が俺にもある事は認めるけど、責任が取れない今は求めない」
「だ、だけど!」
「……不安なのか?」
そう広生に問われた花は、素直な思いと不安を飾らない言葉で口にした。
「……だって、広生君はすごくモテるから、私なんかでいいのかなって」
「……それは俺のセリフ」
「え……」
「おまえと一緒になりたいのはおまえだけじゃないし、俺だって嫉妬も焦りもある」
という広生の同意と率直な答えを聞いた花は、ただそれを確認する様に短く問い返した。
「……ほんと?」
「こんな嘘をついても利は無いだろ。だから安心していい、俺にはおまえしかいないから」
そう広生に告白された花は、恥ずかしそうな表情ながらも嬉しさを隠そうとしなかった。
そして、広生の告白をただ聞く事しか出来ない花に再び苦笑いながらも想いを告げた。
「この想いだけはきっと変わらない、それはおまえも同じ、だろ?」
「……うん、私も好きだよ、広生君!」
と広生の告白に短くも応えた花は、真っ赤な表情のままでも真っ直ぐな視線を向けた。
それ故に、広生は花の意図と予想した経緯の正解を求めた。
「じゃあ、こんな事をはじめた理由は教えてくれるか?」
「……私の鈍感とフラグクラッシャーな言動の所為で、挫けてるかもしれないって」
そう花に告げられた広生は、女性に対する認識を改めた。
否。芙蓉の様な女性は珍しいと思っていたが、現代でも多いようだと。
その様な驚きを隠さなかった広生の態度を誤解した花は素直に事の経緯を言葉にした。
「広生君を疑ったわけじゃなくて、私の所為で進展してないのかなって思って」
「……確かにおまえは色恋沙汰には鈍くて天然だけど、それもおまえの魅力だと思ってる」
と広生に告げられた花は、ただ驚きながらたが目を見開いた。
その様な花に対し、広生は意図的に茶目っ気を感じさせる様に言葉を重ねた。
「それに、その所為だけで進展が無いなら、俺に甲斐性が無いって事にもなるだろ」
「そ、そんな事ないよ!」
「じゃあ、おまえは余計な心配はせず、友人の言動にも惑わされないこと」
そう言われた花は、不安だった思いを隠さずにただ広生へそれを見せながら再確認した。
「……本当に大丈夫?」
「……まあ、責任を取らずに済む方法で、お互いの欲を満たす方法もあるけど?」
と広生が花に問い返すと、花は広生の問いを正確に理解する前にただ真っ白となった。
いや、広生の問いを正確に理解できない花には軽く想像する事しか出来ない深淵だった。
その様にただ驚く花に対し、広生は意図的に艶やかな視線と色香が漂う笑みで誘った。
「おまえがどうしても、っていうなら、その方法を試そうか?」
「!」
「……そんな反応しか出来ないのに、俺を誘惑する気だったのか?」
「!!」
「ま、そんな反応が限界だって想定しているから俺はかまわないけど」
そう言った広生は、先程までの妖艶さが嘘の様な素の表情でただ口元を歪めた。
そして、その様な広生の言動にただ心臓を高鳴らせ、真っ白になった花は盛大に拗ねた。
「……広生君の意地悪」
「無計画に誘ってきたおまえが悪い。俺を誘惑するなら相応の覚悟もしておくべきだ」
「……覚悟なら出来てるよ、私だって」
と花は、広生の言葉を小さな声で否定したが、艶やかな誘いは避けたいとすぐに沈黙した。
そして、その様な花を気にかけて問い掛けてくる広生との会話の趣旨を変えようとした。
「広生君は意外に堅物だなって」
「俺が、というより、それが普通だと思うから」
そう言う広生の言葉は、現代人らしくないと思った花は、異なる世界の影響かと思った。
それ故に、花は広生の言葉を聞き流そうとしたが、広生の言葉の続きを聞いた花は驚いた。
「出来ちゃった結婚が普通な今でも、婚前交渉で立場が悪くなるのは女性の方だろ?」
「それって……」
「それに、俺達はまだ学生だし、俺の家族に花を紹介する時に余計な火種をつくりたくない」
という広生の想いと覚悟は、花には返す言葉がすぐに浮かばないが嬉しい言葉だった。
その様な花の沈黙の意図を確かめる様に、想いを言葉にした広生はただ名で問いかけた。
「花?」
「ありがとう!」
「ありがとう?」
そう広生は花の言葉の意味と想いを確認する様に同じ言葉で問い返した。
その様な広生の言動へ配慮できないくらい、花は告げられた言葉で舞い上がっていた。
それ故に、ただ花は広生への素直で正直な思いを言葉にした。
「うん。とっても嬉しいから」
「……俺はおまえとの未来をいつも見据えているから、そう思っているだけだ」
「うん。だから、ありがとう」
という花の手放しで喜ぶ様は、純粋過ぎるが故に広生は少しだけ『これから』を憂いた。
そして、その憂いが杞憂となる事を広生は心の中で祈りながら素直な思いを口にした。
「……そう手放しに喜ばれると、違う意味で挫けそうだな」
「?」
「今はわからなくてもいいから、2人の時間をもっと有効利用しよう」
そう花に告げた広生は、互いの身体を抱き寄せてから互いの視線も交じり合わせた。
互いの体温と真摯な視線を受け止めるだけで精一杯な花に対し、広生は再び告白した。
「好きだよ、花」
「……私も好きだよ、広生君」
PCの新装版と「思いでがえし」以外はほぼ知らない為、かなり捏造になっているかと。
というか、公式での2人の結婚時期等は設定があるのでしょうか?
とりあえず今回は慎重な広生君と天然な花ちゃんを想定しました。
大学生時代から同棲状態の深い関係もアリだとは思いますが、
全年齢展開に沿う清い関係を続ける2人もアリかな、と。