マリアがロイからのキスを回避できない、と思った時いきなり視界が明るくなった。
いや、瞳を閉じていてもわかるくらい、ロイとの距離が離れたとマリアは思った。
なので、マリアが瞳を開くと、目の前では不機嫌なロイと笑顔のアルが対峙をしていた。
「……姉さんを羞恥プレイに巻き込まないで頂けますか、マスタング大将」
そうアルがロイに黒さを感じさせる笑みで問い掛けたが、ロイはアルに答えなかった。
だが、アルの言葉を聞いたマリアは、ロイへの抵抗を込めてその言葉を支持した。
「ナイスなツッコミを有り難う、アル」
「なっ! 今の場合は間違いなく邪魔だろう!!」
「いいえ、正確で的確なツッコミです」
「ええ。姉さんがセントラルで出歩けなくなるのを止められて良かったです」
というエルリック姉弟の言動の一致に対し、ロイはただ驚き、アルフォンスに確認した。
「アルフォンスも私とマリアの関係を認めたのではなかったのかね!?」
「ええ。『約束』は認めましたが、姉さんの危機を見過ごす事は出来ませんから」
そうアルに答えられたロイは、再び不機嫌さを隠さずに対峙した。
だが、ロイに答える気が無いアルは、ただマリアに声をかけた。
「じゃあ、姉さん。一緒に帰ろうか」
「ええ。そうね」
「どういう意味かね?」
とマリアに問いかけたロイは、問いの答えを察しつつも、再び確認をしようとした。
「アルが旅立つ日まではリゼンブールで過ごすんです」
「4人で一緒に過ごすのは久しぶりですし、今を逃すと4人が一緒は難しいですから」
「もしかして、今日はデートを了承したのは……」
「ええ。しばらくセントラルを離れる報告とアルとの待ち合わせをここでしていた所為ですね」
「……本当に君は……」
そう言いながら撃沈しているロイに対し、あえて言葉を遮ったマリアはキスをした。
そのキスは親愛めいた頬へのキスだったが、撃沈したロイを浮上させるには十分だった。
それから、すぐにマリアはロイから離れたが、マリアは素の笑みでロイに告げた。
「これくらいは好きですから。約束、待っています」
とマリアに言われたロイは、キスをされた頬に手で触れながらも、感触を確かめていた。
そして、それをロイが実感する頃には、マリアとアルは雑踏の中に消えていた。
それ故に、アルと共に駅へと向かっているマリアに対し、その言動をたしなめた。
「本当に姉さんはマスタング大将に甘いね」
「そうね。お兄ちゃんが居たら瞬間沸騰モノかしら」
そうアルに答えるマリアは、家族にしか見せない、素の笑みでニヤリと笑った。
その笑みの意図も言動も理解しているアルは、ただ溜め息を吐いてから更に忠告もした。
「間違いなく、ね。あと、セントラルに戻ったら、マスタング大将とは当分、会わない方が良いよ」
「え?」
「姉さんは聡いけど、男心はもっと研究した方が良いよ。火を点け過ぎて困るのは姉さんになるんだから」
というアルの忠告に対し、マリアには想定内で意図的な発言だという様に答えた。
「……それを期待しているとしたら、小悪魔と言われるのかしら?」
「……確信犯的な行動を兄さんの前では控えてくれるなら、ボクは黙認するよ」
「うふふ。マスタング将軍の答え、とても楽しみだわ」
「多分、姉さんが思っている以上にぞくぞくしていると思うけど?」
そうアルに答えられたマリアは、再び素の笑みでニヤリと笑ないながら朗らかに答えた。
「なら、『これから』も安心だわ。恋愛とは縁遠いと思っていたけど、楽しいものね」
「……そのセリフも兄さんの前では駄目だよ、姉さん」
とマリアに答えたアルは、エドとは違う意味の暴走とその後を思って溜め息を吐いた。
はい。オチはアルフォンスでした。
わかっていた方、お付き合い頂き有り難うございます。
過度な期待をされずに読んでくださった方にも感謝を。
そして、過度な期待をされていた方、すみません。
当サイトのオリキャラが絡む恋愛モノはこれが限界です。
また、このSSにてロイとエドの双子の妹の恋愛模様はいったん終了となります。
ここまでお付き合い頂き、有り難うございました。
今後に更新する予定である鋼の錬金術師の小説は、
氷炎の錬金術師がメインでエドの双子の妹も登場予定の
原作沿いSSを連続で更新する予定となっています。
また、原作沿いSSの舞台の中心は約束の日前後になるかと。
なので、これからの更新にもお付き合いただければ幸いです。
使用お題「微エロ10題1」お題配布サイト「疾風迅雷」