ようやくロイに顎を掴まれていた姿勢から解放されたマリアは、大きな溜め息を吐いた。
「……私、マスタング将軍とは逢わなければ良かったと思う日があるんです」
「理由が知りたいな?」
「理由なんてシンプルですよ?」
と問い返したマリアは、いつもの駆け引きめいた会話に内心でほっとした。
そして、その内心を隠す様に、マリアは意図的に口元を歪めた。
また、その様なマリアの心情にも気づいているロイは、あえてその言葉の応酬を続けた。
「シンプルな理由ほど意外性があると思うんだが?」
「そうかもしれませんね。ただ、傷心していた少年の過激な反応と、乙女らしかぬ反応をする少女の反応が楽しくて、挨拶代りにプロポーズをする方が好きになるなんて……意外性としか言えませんね」
そうマリアに断言されたロイは撃沈する事なく、少しだけ残念そうに答えた。
「……そこで私に魅了された所為だ、とは言ってくれそうにないな」
「ええ。勿論です」
「だが、それが可愛いと言ったら、君は正気を疑いそうだな」
「……ゲテモノ趣味があったんですか?」
というマリアの問い返しは、ロイに撃沈ではないが、非常に虚しさと悲しみを感じた。
いや、ある意味ではロイに撃沈以上の感情をマリアは突きつけた。
その上、マリアは更に致命傷へ至る斬撃を与える様にロイへの問いを続けた。
「……もしかして、女性を多く知るが故に意外性が欲しかっただけ、とか?」
「……そんな理由で人生を決めるほど愚かではないのだがね?」
「大総統を目指す方が、色恋なんて感情だけで生涯のパートナーを選ばれたのに?」
そうマリアに言われたロイは、すべて意図的かつ意趣返しである事にも気づいた。
それ故に、ロイはマリアの真意を確かめる様に、ロイはマリアに対して問いを返した。
「……つまり、君は私の本気がわかっているのに、ゲテモノとか意外性などと言うのかね?」
「そんな私が可愛いからでしょう?」
とロイに問い返すマリアの笑みは、いつも以上に艶やかな大輪の薔薇の様だった。
そして、その問い返しを予測していたロイは、マリア以上に艶やかな笑みで応えた。
「ああ。だが、可愛いだけじゃなくて愛してもいるんだがね?」
「……」
「そんな風に堕ちてくれるから君が好きなんだよ」
そう告げるロイの笑みは、マリアの様な作られた艶ではない、自然な色香が漂っていた。
それ故に、再びマリアは降参の意志を示す様に、あえて表情を作らずに答えた。
「……完敗です。逆転以上ですよ」
「そう言ってくれるなら、君からのキスが欲しいな」
「恋愛ゲームをマスタング将軍はご希望で?」
と問い返したマリアは、ロイとの駆け引きめいた言葉の応酬に戸惑いながらも答えた。
だが、その様な応酬を楽しんでいるロイは、マリアの身体を抱き寄せると耳元で囁いた。
「いや、勝者へのご褒美が欲しいだけだよ」
すみません。今回のSS以上の甘さは無理です。
というか、なんとか想定外には甘い仕様にはなったと思いますが、
仕上げ段階でも砂糖を吐き続け過ぎて最悪な気分となりました。
それでも、一般的な糖度には達していないとも思うのですが……
当サイトのオリキャラが関わるとこれ以上は無理です。無茶です。限界です(涙)
使用お題「微エロ10題1」お題配布サイト「疾風迅雷」