ロイは久方ぶりに再会しても冷静に撃沈させてくるマリアに不満があった。
いや、マリアのロイに対する反応はいつも通りだが、それ故にロイは機嫌が悪くなった。
また、ロイはこのデートが楽しみだったが、マリアにその様な想いを感じられなかった。
その為、ロイは強引にマリアとの視線を合わせながら、マリアの真意をロイは問うた。
「君がデートに応じてくれたのは、私との時間を楽しみにしていてくれたから、だろう?」
「……逆プロポーズをした事は認めますが、いきなり人の顎をつかんで仰向かせてから顔を近づける男性を容認する程に経験豊富ではありませんが?」
そう告げる内容とは相反する様に、マリアはロイに冷たい視線と共に問い返した。
その冷たさも愛おしいロイは、女性受けする艶やかな笑みでマリアに問い返した。
「君があまりにも可愛くて我慢が出来そうにない所為なんだが?」
「……本当にマスタング将軍は冗談が好きですね」
「そうかね?」
「ええ。私へ挨拶代りにプロポーズをしていたのは、お兄ちゃんの反応が良かったせいでしょう?」
と問い返すマリアの冷静さは、この状況ではただロイを煽っていた。
そして、マリアは冷静かつ深い思考でロイとの距離を取ろうとただ足掻いた。
だが、それも予測していたロイは互いの顔を少しだけ離してから真っ直ぐに見つめた。
その様な真っ直ぐな視線に慣れないマリアは、交わっていたロイからの視線から逃げた。
それ故に、ロイは再び苦笑いながらも、マリアの顎を掴んで上向かせる事を続けた。
「確かに、それは否定できない事実だが、君への想いが本気になった事も間違いがないな」
「マスタング将軍にとってプロポーズなんて挨拶代りに出来る事かもしれませんが……」
そうマリアに告げられたロイは、マリアの誤解を解く為にロイは強く言葉を遮った。
「それはないな」
「え?」
「マダムに確認してもらっても構わないが、私がプロポーズをし続けた女性は君だけだ」
とロイに告げらえたマリアは、ただ驚きから目を見開いた。
だが、すぐに言葉の意味を理解したマリアは言葉の真偽を疑う様にロイへと問い返した。
「……冗談、ですよね?」
「こんな冗談や嘘に利があるとでも?」
そうロイに問い返されたマリアは、言葉も返す事が出来ずにただ驚いていた。
珍しい反応を見せるマリアに対し、ロイは再び苦笑いながらも本音を言葉にした。
「君が好きになったのは事実だったし、からかう事だけが目的なら、職権乱用で上官命令も色々としていただろうね」
「……本気、ですか?」
「ああ。今までの自分の言動から信用してもらうのが難しい事も承知しているがね」
「……」
「だから君が好きなんだよ、マリア」
とロイに素直な想いを告げられたマリアは、ただ戸惑って困惑するしか出来なかった。
「……それは知っています」
「いや、君は知識としてはわかっているかもしれないが、感情は違う、だろう?」
そうロイに問われたマリアは、先程までのロイを翻弄していた反応とは違っていた。
いや、本当はこの反応こそが、マリアには『普通』だとロイも知っていた。
エド以上に色恋沙汰をあえて遠ざけ、ロイが初恋の相手だとも知っていたが故に。
そして、マリアもそれを自覚していたから、ロイへ白旗を揚げる様にその事実を認めた。
「……否定はできませんね」
「君にはこれから感情でも感じてくれれば嬉しいよ。私達の時間は長いからね」
「でしたら、私の顎つかんでいる手を離して頂けますか?」
「この状況にも慣れた方がお互いの為だとも思わないかね?」
とロイが問い返すと、マリアは戸惑いが嘘だった様に、冷静かつ強い口調で拒絶した。
「このような状況には慣れる様なバカップルは御免です!」
……もしかして、このSSは一般的ではなくとも『甘さ』が有りますでしょうか?
私的にはエドの双子の妹の反応がとても書きやすくなり、
ロイの口説きは甘さ等を全力で増加してみたのですが……
とりあえず、想定外なストーリー展開となり、現在は設定から再調整中だったりします。
使用お題「微エロ10題1」お題配布サイト「疾風迅雷」