逆転という言葉にしてからのロイは、撃沈していた時とは違って積極的になった。
いや、あえて距離を置く様な笑みを浮かべたり、撃沈していたマリアが後手となった。
正確に言えば、ロイの反応に冷たかったマリアに対し、ロイが強引にマリアへと迫った。
そして、その強引さに戸惑うマリアが、ロイに強引さをギリギリで拒む展開となった。
「今は駄目ですよ?」
そうマリアは先程までと変わらぬ冷静な声音でロイを制する様に問い返した。
しかし、その問い返しをスルーしたロイは、マリアへの口説きという名の問いを返した。
「駄目じゃないだろう?」
「いいえ、駄目です!」
「何故だね!」
「マスタング将軍の大声と広い認知度で周囲から注目されている状況ですから」
とマリアが強引に迫ってくるロイを悲鳴めいた大声で強く拒んだ。
それ故に、ロイは不機嫌さを隠す事なく、あえて視線だけでそれを訴えた。
だが、大声を出しても、冷静さを保っていたマリアは、ロイの視線をスルーした。
そして、ロイへの更に牽制する様に、再び大輪の薔薇の様に微笑みながら問い返した。
「それに、アルが今はセントラルに居て、ヒューズ准将の奥様へ挨拶に行ってるんです」
そうマリアがロイに告げた言葉は、マリアに強引に迫ろうとしていたロイを止めた。
そして、ロイはエルリック兄弟にマリアとの会話さえも邪魔された過去を思い出した。
「……つまり、今日はアルフォンスに邪魔される可能性が高い、と?」
「……お兄ちゃんは瞬間沸騰機ですけど、アルは冷静に見せるので本当にコワイですよ?」
「冷静に見せる事に関しては君も充分コワイよ。瞬間沸騰した事も隠せるからね」
とロイに言われたマリアは、薔薇の様な微笑みを見せながら冷静に問い返した。
「うふふふ。マスタング将軍、女に街中で泣かされたと噂になりたいんですか?」
「啼く方でなら、場所も噂も気にならないのだが?」
「……お兄ちゃんもウィンリィにプロポーズしようと考えているみたいですし、アルもシンで錬丹術以外もゲットする気が満々ですけど、私には『約束』がありますから」
そうマリアが軽口めいたロイの問い返しに答えると、場の空気が一変した。
そして、その雰囲気をあえてつくったマリアは真剣な表情となり、ロイはただ苦笑った。
「……本当に君達兄弟は『鋼』の名に相応しい覚悟を容易く決めてしまうんだな」
「……それを先に提示したのはマスタング将軍ですよ?」
「私はただ可能性を提示しただけで、その覚悟を貫いたのは君達だよ」
というロイの言葉を聞いたマリアは、意図も他意も無い、素といえる笑みを見せた。
その笑みは、先程までの薔薇様な笑みとは違い、心を温かくさせる優しさに満ちていた。
「そう言われると嬉しいですね。それに、私とお兄ちゃんとアルが選んだ『道』は再び別れましたけど、再び交わる事も叶える事も出来ると確信していますから」
「ならば、私との道も重ねてみないかね?」
そうロイに求婚めいた問いを返されたマリアは、真剣な表情で問い返しだけをした。
「その覚悟はすでに出来ていますよ?」
「ならば、周囲の視線など……」
「乙女心がわからないと、数多の縁談を断った後の怨恨で刺されるかもしれませんよ?」
とロイに問い返したマリアの薔薇の様な笑みは、百花繚乱めいた艶やかさがあった。
しかし、マリアの笑みが艶やかになればなる程、『こわさ』が増す事もロイは知っていた。
それ故に、ロイは答える事も出来ずにただ沈黙するしか出来なかった。
そして、その様なロイを更に撃沈させる様に、マリアは艶やかさを増した笑みを見せた。
「マスタング将軍には優秀な護衛を務める女性が2人もいますけど、私、ただ女性に頼る男性はお断りですから」
「……」
本当に『恋愛モノ』として成立していないだろうオリキャラですみません!
ですが、『糖度』と『乙女』にこだわっていた頃と違い、書くのがとても楽です(←マテ!!)
一度は再び『糖度』と『乙女な反応』を目指して必死に足掻きましたが……
私はそういった女子力が見当たらず、ロイらしい『甘い囁き』は思いついても、
その『甘い囁き』に対する『乙女な反応』は全く思いつく事が出来ず……
かなり四苦八苦しましたが、全く文章と反応が浮かばなかった為にあきらめました。
なので、一般的な恋愛模様をお求めの方、申し訳ありません。
出来れば、「面白い」「こういうのもアリ」と思って頂ければ幸いです。
使用お題「微エロ10題1」お題配布サイト「疾風迅雷」