2滴る汗と(お題使用1)

ロイとマリアが待ち合わせた場所は、季節外れの暑さを体感させられるテラス席だった。

だが、暑さを感じていないのか、ロイはホットコーヒーを飲んでいた。

それ故に、焼け石に水なアイスティーを飲むマリアにはそれが不思議だった。

「今日は本当に暑いんですけど……マスタング将軍は汗をかかないんですね?」

「多分、イシュヴァール政策で東の砂漠へ赴く事が多かった所為かもしれないな」

そうマリアに答えるロイは、暑さを感じさせない優雅な仕草でホットコーヒーを飲んだ。

その仕草に対し、マリアは少しだけ苦笑いながらも、理由には納得と同意をした。

「確かに環境って怖いですよね。私、常に車で移動した護衛付きなんて贅沢、慣れないと思ってましたけど、今では『普通』だと思ってしまうんですよね」

「……だから、デートにも護衛を連れてきたのかね?」

とロイは、不機嫌さを隠す事無く、マリアの背後にいる護衛達を睨んだ。

その様なりロイの子供じみた言動に対し、マリアは再び苦笑いつつも制しようとした。

「……ですから、婚約は密約状態ですし、マスタング将軍には見合いも逆プロポーズも大盛況だってマダムが教えてくれましたよ?」

「……マダムとの交流が続くのは嬉しくも不安だな」

そうロイが言う様に、ロイの養母であるクリスは再びセントラルで城を得た。

それ故に、頻繁となっているクリスとマリアの交流がロイには心配だった。

クリスの店は若い女性、特に上流階級と縁が強くなったマリアが通うには不適切だから。

それに、ロイを坊やと呼ぶクリスとの交流を、ロイは避けさせたかった。

しかし、クリスやその店で働く女性達との会話も、マリアは楽しいと思っていた。

「マスタング将軍の過去も色々と教えてくれていますから、安心してください」

「……それが不安でしかないんだが?」

「ふふふ、過去の所為で婚約破棄だなんて事は言いませんから安心はしてください」

「つまり、君と出逢ってからの身の潔白は信じてもらえると?」

とロイは女性受けする艶やかな笑みを浮かべながら、マリアに問い掛けた。

すると、マリアは瞳の印象以上に意味深な笑みを浮かべたまま、ロイに問い返した。

「そうですね……お兄ちゃんから『マデリーン』という女性と二股をかけていたとは聞いた事がありますけど?」

「……マダムからの説明は無かったのかね?」

「そうですね……ただロイ坊やは昔から二股は出来ない不器用者だとは聞いていますが?」

そうマリアに問い返されたロイは、必死な表情で弁解と言い訳を考えた。

その様なロイの必死さに少し驚きながらも、マリアはフォローをする様に問い続けた。

「あら、本当に慌ててるんですね、マスタング将軍。半分は冗談ですよ?」

「……残りの半分は?」

「それは乙女の秘密です。女性の秘密は美しさの秘訣だそうですよ?」

という、マリアに問い返されたロイは、降参を示す様に肩をすくめた。

「本当に女性は怖いな」

「それは私のセリフです。今日のマスタング将軍はちょっと挙動不審気味です。何かあったのですか?」

「……それを今の君に聞かれるのは、男の矜持が折れそうだな」

そうマリアに答えたロイはただ苦笑いながら、ただロイはまっすぐにマリアを見た。

その視線と言葉の意味が分からないマリアは、ただ無言で首を傾げた。

そして、マリアの無言の問いに答えるつもりが無いロイは、ただ誤魔化す様に苦笑った。

「今日も君の魅力の虜だという意味だよ」

「……意味が不明すぎですが?」

「とりあえず、今度のデートでは護衛は無しとしてくれるよう、ブラッドレイ夫人にも言って欲しいな」

「それは無理ですよ。私は国家機密の監視役で、マスタング将軍は未来の大総統ですもの」

という、マリアの正直かつ真っ当な言い分を聞かされたロイは、再び撃沈させられた。

 

 

 

 

 

本来なら、ロイからエドの双子の妹へと日常的にプロポーズされるきっかけや、

エドの双子の妹がロイへの恋心に気付いた話も順に更新すべきだと思うのですが……

諸事情から連載終了後からの回想という形か、エピソードだけを抜き出す形になるかと。

 

 

 

使用お題「微エロ10題1」お題配布サイト「疾風迅雷」