1優しくするから(お題使用1)

ロイ・マスタングが大将に就任してから数か月後。

半年ぶりにロイは内密に婚約しているエドの双子の妹であるマリアと待ち合わせをした。

正確に言えば、ロイにとってはデートだったが、マリアは護衛付きの状態だった。

「お久しぶりです、マスタング将軍」

そう挨拶をするマリアは、年齢を不詳にさせる深さがある瞳でまっすぐにロイを見た。

その瞳を見たロイは笑みも添えられない簡易な挨拶に対しての不機嫌さを隠さなかった。

「……なぜ、婚約もした女性からそんな名で呼ばれないといけないだね?」

「……お兄ちゃんは国家錬金術師を辞めましたし、今の私はセリムさんの監視役ですから」

「君がその役を務める必要はなかったんだが……」

とロイは愚痴る様に告げようとしたが、マリアは強い意志でその言葉を遮った。

「私が求めるモノを得る為には、ブラッドレイ夫人にも教えを請うのが一番ですから」

「求めるモノ、か……だが、君が大総統夫人に相応しかろうとなかろうと、私の隣は君しか居ないんだが」

そうロイは強い意志と決意を秘めた瞳でまっすぐにマリアを見つめた。

その様な熱い視線を向けられたマリアは、再び意味深な笑みを添えて答えた。

「有り難うございます。ただの我がままですが、貴方が大総統を目指す限り、私もお飾りな大総統夫人になる気はありませんから」

「……その言葉は嬉しく思うべきか、止めるべきかは、今でも悩みどころだな」

「それは残念です。ブラッドレイ夫人はすごく応援してくださっているんですよ。好きな男性を守る術を得たいと思う気持ちも」

とマリアが正直に告げると、ロイの心中は複雑だったが、素直な思いだけは言葉にした。

「その気持ちは嬉しいんだが、ね」

「そう言ってもらえるのは私も嬉しいです」

「では、呼び方もそれなりになって欲しいと思う私の気持ちもわかるかい?」

そうロイに言われたマリアは、少し考え込んでから、独り言の様な小声で問い返した。

「……ロイ……さん?」

「……さんも要らないな」

「え?」

「ロイで構わない。むしろそう呼んでくれないか?」

と問われたマリアは、複雑かつ年相応な表情で戸惑いながらも、ロイに答えようとした。

「ロイ……ですか。ちょっと照れますね」

「これから呼び続ければ慣れるさ。私達は夫婦になるんだから」

「気が早すぎです。『約束』はまだ先の話、ですよ?」

「そう思わなくても俺は構わない」

そうサラリとロイに言われたマリアは、返す言葉に詰まり、赤くなった顔を伏せた。

「……そういう方は卑怯です」

「卑怯でも君を手に入れられるなら、どんな手段も汚名も気にならないさ」

とマリアに告げたロイは、伏せている顔に片手を添えてから顎を持ち上げた。

その言動にマリアは驚きつつも、ロイへと答える様に身を任せて瞳を閉じた。

だが……

「……将軍。マスタング将軍!」

そう大声で名を叫ばれたロイは、反射的に背筋を伸ばした。

そう。

今も護衛を兼ねている側近の女性達に名を呼ばれた時の様に。

だが、今日は休暇日だと思ったロイは声をかけた人物を見た。

すると、ロイのキスを待っていたはずのマリアが、護衛を従えながら心配していた。

「お仕事で寝不足なら、今日のお休みはお昼寝に変えましょうか?」

「……あれは夢か」

という夢オチである事に気付いたロイは、あからさまに肩を落としてから顔を伏せた。

そして、ロイの状態がわからないマリアは、ただ体調を心配していた。

「マスタング将軍?」

「……いや、婚約者からそう呼ばれ続けるのも悲しいと思ってね」

そうロイがいつもの様に日頃の疲れを感じさせない笑みで答えるとマリアも安心した。

だから、マリアはロイとの婚約が密約である事を指摘し、注意を促そうとした。

「ですが、婚約も含めた約束は私達兄弟とマスタング将軍の密約状態ですし……」

「それに、私は彼の監視役に就いた軍属だから、かな?」

とロイに問われたマリアは、あえて言葉で答えようとはしなかった。

それ故に、マリアはただ真っ直ぐな視線と強い意志を秘めた瞳でロイを見た。

その様なマリアの決意と想いの深さと強さを知るロイはただ苦笑った。

「とりあえず、互いの未来の為の一歩だとはわかっているよ」

「……そう言って頂けると嬉しいです、ロイ」

そうマリアにファーストネームで呼び捨てられたロイは大きく目を見開いた。

あからさまに驚いているロイに対し、マリアは気恥ずかしさを隠す様に言葉を続けた。

「……寝言が少し聞こえたからで、深い意味は無いです!」

「ぜひ、これこれからはそう呼んで欲しいな」

とロイはマリアにキスをしたいと思ったが、それを察したマリアはロイを避けた。

「マスタング将軍が願いを達成すれば叶う現実です。いくら私でも夫をファミリーネームでは呼びませんから」

「ならば、私は少しでも早く『願い』を達成するとするか」

「ええ、私も早い達成を楽しみにしています!」

そうマリアに清い笑みで告げられた為、ロイは手を出すどころか撃沈させられた。

それくらい、マリアの笑みは守りたいと思う程に清さに満ちていた。

そして、その笑みが意図的である事を見破れるものは、この場にいなかった。

その為、マリアは存分に清く笑い、ロイとの距離を少しでも離そうとした。

 

 

 

 

 

今日からロイとエドの双子の妹(当サイトのオリキャラ)との恋愛模様を

原作終了後を中心にした捏造設定の小説を連続更新する予定です。

ですが、一般的な恋愛模様よりも、糖度がかなり少ないビターな仕様となるかと。

いえ、ロイの甘い囁きはドリー夢小説の頃から変わらないのですが、

無理に『乙女な反応』と設定をしていたエドの双子の妹の『反応』を、

『私が書きやすい反応』にした為、かなり『乙女らしかぬ反応』となりました。

その為にシリアスな場面もコメディとしか思えない恋愛模様になると思いますが、

それを含めて色々な意味でも楽しんで頂ければ、と思っています。

 

 

 

使用お題「微エロ10題1」お題配布サイト「疾風迅雷」