8 心の底から安堵する自分に舌打ちしたくなった

急に登場したドロシーによって、ヒイロはリリーナの護衛から唐突に外された。

それでも、ヒイロは無表情だったが、いつも以上に不機嫌な雰囲気を纏っていた。

だが、原因であるドロシーは気にすること無く、ヒイロに暴言を聞かせていた。

「私のリリーナ様から告白を受けながら、断るなんて大罪でしてよ!」

「……」

「だいたい、幸せになる資格とか、愛される資格とか、そんなコトは関係なくてよ。リリーナ様が幸せになれないなんて、この私が許しませんわ!」

リリーナとの会話を盗聴したような言動ではなく、ただヒイロは思いを口にした。

「……リリーナの幸せはオレも願っている」

「そんな論理のすり替えで誤魔化すつもり!?」

「だから言ったはずだ……」

「オレにそのような感情は無い。そしてリリーナ、おまえにオレなど必要ではない」

再び、聞かされる盗聴疑惑に対し、今度は無言を返した。

しかし、そんな言動でドロシーのエキセントリックな怒りは収まらなかった。

「そんな言葉で、リリーナ様を否定するなんて、私も認めませんわ!」

「おまえに認められる必要はない」

「私だって、あなたを認めたくありませんわ。でも、リリーナ様が求めているのは、ヒイロ・ユイ、あなた一人だけなんですもの」

そう言われたヒイロは、一瞬だけ安堵の表情をした様な表情を見せた。

だが、その表情は一瞬で、直後に自己を嫌悪するような無表情に戻った。

そんなヒイロの心情を自己流に解釈したドロシーは、更にエキセントリックとなった。

「何ですの、その優越感に満ちた表情は! あくまでもリリーナ様が求める異性という意味ですのに、勘違いしないで頂ける?!」

「勘違いな鞘当ては必要ない。オレはリリーナを異性として必要とはしてない」

「なんですって! 私のリリーナ様の何処が不満なんですの!!」

「リリーナに不足があるのではなく、オレにその資格が無いだけだ」

「だからそんな言葉で……」

と、更に言い募ろうとするドロシーの背後から近づいてきたカトルが穏やかに止めた。

「そこまでだよ、ドロシー」

「カトル?!」

「今は見守るべきだよ。それが一番だって君も気付いているんだろう?」

そうカトルに言われたドロシーは、返す言葉を失った。

それを笑顔で確認したカトルは、リリーナをヒイロの方へ向かわせた。

「お預かりした姫君の護衛役はヒイロにお返しするよ」

「暴走は最小限で食い止めろ」

と、ヒイロは明らかな怒りを込めて静かにカトルへ応えた。

しかし、そんなヒイロの怒りも気にもしないカトルは、穏やかな笑みを崩さなかった。

「でも、原因の君にも身をもって体験してもらわないと不公平だよ。あ、リリーナさん、そろそろスピーチの時間ですよ」

そう言われたリリーナも、状況の険悪さに気付かないような笑みを添えて答えた。

「ええ。有り難う、カトル君」

 

 

 

 

 

切ない恋愛お題(1)お題配布元:疾風迅雷