9真剣に人生を語る(お題使用1)

士官学校の卒業を控え、希望進路を提出する時期となった。

それ故に、希望進路を巡り、情報交換や牽制が行われるようになった。

だが、アグニは実家の都合から、希望進路を提出する事が出来なかった。

それを知ったロイは驚き、事情を察したヒューズはあえて自分達の希望を話にかえた。

しかし、軍の暗部に気付いているアグニは、2人が語る明るい未来を共有できなかった。

「……本当にロイとマースは軍を信用してるのね」

そう苦笑うアグニは、ロイとヒューズが語る軍人としての明るい未来をそう評した。

その理由を察する事が出来ないヒューズは沈黙し、ロイは感じた疑念をただ問い返した。

「どういう意味だ?」

「……いえ、軍は矛盾した存在だから、そこまで信用できるかな、って思っただけよ」

「確かに国を守る為とはいえ、人を殺める事もあるから矛盾かも知れんが……」

というロイの答えに対し、アグニはあえて表情を見せない、無表情な笑みを見せた。

その笑みは親しみを感じる苦笑いでも、恐怖を感じる絶対零度の笑みとは違った。

それ故に、ロイはアグニの意図を確かめる様に、ただ名だけで問い掛けた。

「アグニ?」

「いえ……ただ、この国の成り立ちは戦争に塗れているから、そう思っただけ」

「確かに今の大総統になってから戦争や内紛が急激に増えているから、アグニが杞憂するもわかるが……」

そうロイが告げる一般論を聞き続えたアグニは、あえて無表情な笑みを変えなかった。

「……そうね、杞憂だったら良いのだけど」

「アグニ?」

と再び名だけで問い返してくるロイに対し、アグニは朗らかに笑いながら答えた。

「いえ、確かに杞憂だわ。ロイやマースの様な若者が夢もみられない現実なんて想像もするモノじゃないわね」

「ああ。それに周辺諸国の脅威にさらされている今こそ、国民を守る為にも軍の強化と志す者が必要だろ?」

そう告げるヒューズも、沈黙していたのが嘘の様な明るい表情でロイに同意を求めた。

その様な二人の意図がわからずとも、ロイは思いと決意を言葉にした。

「そうだな。この国の礎のひとつとなって人を守れるようになる為には、更に勉学へと勤しんでも足りないかもしれん」

というロイの思いと決意を聞いたアグニは、ただ驚き、戸惑っているようだった。

それ故に、ロイはアグニを心配する様に再び名で問い掛けた。

「……アグニ?」

「……いいえ、2人の青臭さに苦笑いたくなっただけ」

そうロイに答えるアグニは、いつもの冷静さを感じさせない、感情的な答えだった。

だが、アグニをよく知るヒューズは、ロイに気付かせない様、先に突っ込みを入れた。

「それはずいぶんと酷い言い草だな。おまえだって士官学校に入ったんだ。それ位の青臭さは……」

とアグニをかばうつもりだったヒューズは、自身の失言に途中で気づいた。

だが、アグニもヒューズをかばう様に、ロイに気付かれる前に、笑いながら問い返した。

「あら、マースも自分の青臭さに照れた?」

「……そうかもしれんなぁ。じゃあ、今度はおまえの青臭さを披露しくれるよな?」

「……私はただ守りたいだけよ、たった一人だけ、だけど」

そうアグニが真剣な表情で答えると、ヒューズは再び沈黙し、ロイは単純に問い掛けた。

「……軍人になったら守れる人か?」

「いいえ。護衛ではなく、隣に並びながら守りたい人がいるのよ」

というアグニの答えは、事情を知らないロイには理解が出来なかった。

だが、アグニが語らない事情の所為だとは察したロイは、あえて軽い口調で問い続けた。

「……好きな男でも出来たのか?」

「そんな艶めいた話じゃないわ。ただ、己の手を汚して築いた屍を背負っても、血の川を渡ろうとも、守りたいと思う人がいるだけ」

「……アグニ、考え過ぎは毒になるだけだぞ」

そうヒューズがアグニへ告げたが、アグニは真剣な表情でヒューズに答えた。

「そうね。でもそれが私にとって生きるという事だから」

と決意を語るアグニに対し、事情が分からないロイは単純に戸惑っていた。

「アグニ……?」

「ロイにもいつか話すわ。私が『生きる』意味を」

そうロイに告げたアグニは、清々しくも母性に満ちた笑みを見せた。

その笑みに無償の愛と哀しさを感じたロイは返す言葉を失い、ヒューズはただ沈黙した。

 

 

 

 

 

士官学校時代捏造はこのSSでいったんは終了とし、

次回に更新するSSはイシュヴァール殲滅戦の閑話となります。

 

また、お題を使用した紹介SSが終わり次第、氷炎の簡易なプロフィールをUPします。

ネタバレがありすぎるモノになるので、ネタバレが苦手な方はご注意ください。

原作のネタバレだけでなく、これから書いていく氷炎の過去等も書かれているので。

ですが、氷炎という当サイトのオリキャラに興味を持って頂いた方には

より氷炎というキャラを楽しんで頂けるようになるかと思います。

 

 

 

使用お題「親友お題1」お題配布サイト「疾風迅雷」