連休を学校外で過ごしていた面々が学園に戻ってきた日の始業前。
ヒューズが長々と恋人自慢をはじめた為、ロイは聞き流しながら離れようとした。
しかし、それを察したヒューズはロイを強引に引き止めた。
それ故に、ロイはヒューズに対して本気でブチ切れた。
それを遠巻きに見ていた面々が騒ぎを収めようと、アグニに状況を知らせた。
そして、その知らせを受けて、アグニがロイとヒューズに声をかけようとした。
だが、互いの主張と口論に熱くなりすぎているロイとヒューズは気付かなかった。
「だからおまえは女に本気になれないんだよ!」
「おまえの様にウザイ男になる位なら今のままで十分だ!」
そうヒューズとロイが熱い主張を叫び続けた為、アグニは二人の頭上で氷を練成した。
それから、すぐにその氷を溶かし、冷水となったモノをロイとヒューズにかけた。
その結果、ロイとヒューズは状況も互いの主張も忘れ、ただアグニの方を見た。
その視線を受けたアグニは、ニッコリと笑うと冷水を気化させてから再び問い掛けた。
「……で、お子様な口喧嘩になった理由は何?」
とアグニから問われたロイは、ただアグニの笑みの意味にも気づかずにただ主張した。
「女にはわからない男の深淵だ!」
「ロイ!」
そうヒューズは、ロイの失言をとりなそうとしたが、アグニは微笑みながら問い続けた。
「……そう。じゃあ、今日の実技訓練で勝敗を決めたらどう?」
「それは良いアイディアだな。良いだろう、その勝負、受けた!」
とロイは再びアグニの意図もその結果にも気づかず、ただ提案を受け入れた。
だが、アグニの意図に気付いているヒューズは、その予想を確認する様に問い掛けた。
「……敗者のペナルティはアグニが決めるのか?」
「あら、提案者の特典でしょ、それは」
そうアグニがヒューズに答えたのを聞いたロイは、あわてて提案を却下しようとした。
「……今日は具合が悪いな。勝負は後日にしよう」
「ああ、オレも賛成だぜ、ロイ」
「一度は了承した事を取り消すの、ロイ?」
とアグニが微笑みながら、ただ静かな口調でロイに問い続けた。
その笑みからは悪い予感がしたロイは、しどろもどろにアグニの提案を避けようとした。
「い、いや、本当に体調が、だな……」
「……無用な喧嘩していたくらいに健常なら大丈夫でしょ?」
そう微笑みながら問い続けるアグニに対し、ロイは返す言葉も奪われて立ち尽くした。
そして、ヒューズは珍しい足掻きで、アグニへと軽減を提案した。
「……ロイの失言は俺が謝るから、オレのペナルティは加減してくれ」
「うふふふ。マース、私が不公平って言葉も嫌いなのは知ってるでしょ?」
と問い返すアグニの笑みは、絶対零度より怖い、とロイとヒューズは再確認し合った。
また、遠くから見守っていた者も、アグニの錬成の凄さと言動がただ怖いと思った。
次からはシリアスなSSが続きます。
なので、コメディ的なSSはしばらくお休みかと。
ただ、次のお題ではエドの双子の妹の紹介小説となり、
主軸は恋愛模様の予定ですが……コメディになりそうです(遠い目)
とりあえず、次回のお題を使用したSSはシリアスとなります。
使用お題「親友お題1」お題配布サイト「疾風迅雷」