7 愛してる、は重荷ですか

カトルを引き連れたドロシーが開口一番でリリーナに問い掛けた。

「リリーナ様、その馬鹿を少しだけ貸して頂けますか?」

「……」

リリーナとは違う意味で、唐突なドロシーの事も知るヒイロは表情を変えなかった。

そして、そんな突飛な言動に親近感があるリリーナは笑顔で応えた。

「私は構いません。スピーチまでの自由時間は余裕がありますから」

「ねえ、ヒイロ。少しでいいから、リリーナさんの警護はボクにまかせてくれないかな?」

と、ドロシーに連れたカトルが口を挿んだ。

なので、ようやくヒイロが確認という名の了承を口にした。

「……レディ・アンの許可は取ってあるのか?」

「うん、ボクの端末でね。ただ、盛大な苦笑い付きだったよ」

それを聞いたヒイロは再び口を閉ざして、抵抗しようとしなかった。

すると、ドロシーは高慢な笑みを浮かべながら、ヒイロと人気のない場所に移動した。

「では、お言葉に甘えさせて頂きます、リリーナ様」

と言われたリリーナは、ドロシーを笑顔で見送った。

そんなリリーナに対して、カトルが意味深な表情で問い掛ける。

「……ヒイロに告白をしたのですか?」

「え?」

「先に気付いたのはドロシーです。彼女のリリーナさんへの想いは凄いですからね」

そう、情況を楽しんでいるような口調のカトルに対し、リリーナも軽い口調で応えた。

「……それでは、私はカトル君の嫉妬を身に受けないといけないのかしら?」

「そこまで狭量な男ではありませんよ、ボクは。でも、ヒイロほど割り切れませんが」

と答えたカトルは、急に表情を暗くした。

その理由がわかならいリリーナは無言で続きを求めた。

「ボクも資格があるかどうかわからないんです」

ヒイロと同じ『応え』を持っていると知ったリリーナは、カトルへ率直に問いかけた。

「……ヒイロを想うことも、愛して欲しいと思うことも、重荷なのでしょうか?」

「……ボクには、ウィナー家の当主として、妻と後継者が必要です。それでも時々、躊躇います。でも、そんなボクの背中をドロシーは蹴り飛ばすんです」

そう告げられたリリーナは本気で言葉を失った。

ドロシーならば、という思いと、それを甘受するカトルの情況を苦慮して。

だが、そんなリリーナの心境を読み切れなかったカトルは、慌てて言葉を付け加えた。

「あ、女性からそういう扱いをされて悦ぶ趣味は無いですよ?」

「いえ、余りにもドロシーらしくて……」

「そうですね。でも、ヒイロには逆効果かもしれませんけど」

と、カトルが急に意味深な笑みを浮かべながら、リリーナに問いかけた。

その真意が読み切れなかったリリーナは、疑念を問い返す事しか出来なかった。

「え?」

「ヒイロが必要としているのはリリーナさんですから。それはボクでもわかる事です」

「カトル君……」

「そして、ヒイロは『生きて』います。だから、リリーナさんが諦めなければきっと……」

そうカトルに告げられたリリーナは、その意図と思いへ素直な感謝を口にした。

「……有り難う、カトル君」

「いいえ。ボクもヒイロに救われ、ヒイロの幸せを願う一人ですから」

「私もそうですわ」

とリリーナは、ドロシーに対する親近感とは違う、共感をカトルに抱いた。

それはカトルも同じ思いだったから、軽い口調でリリーナに提案をした。

「では、お互い、共同戦線としますか?」

「ええ、是非」

 

切ない恋愛お題(1)お題配布元:疾風迅雷