6 悲しいよ

「オレの事など忘れろ。おまえは幸せになれ」

そう言い残して警護の確認に向かったヒイロに対して、リリーナは名を口にする事しか出来なかった。

そして、そんなリリーナの感情に気付けないヒイロは、戻るとすぐに行動を促した。

「もうすぐ入場の時間だ、リリーナ」

と言われたリリーナは、仕事の大切さを理解しながらもヒイロに問う事を優先した。

「……ヒイロ、あなたは今、幸せですか?」

「……どういう意味だ?」

「私は実現したい『平和』には、あなたの『幸せ』もあるのです」

そう告げられたヒイロは、リリーナに対して、無言を返す事しか出来なかった。

そして、ヒイロが無言であったにも拘らず、リリーナは率直なおもいを口にした。

「あなたが『平穏』を望むのでしたら、私はあきらめます。私の人生を含めた周囲は『平穏』とは程遠く、それでも私は求めるモノを諦めるつもりはありません」

「……」

「でも、あなたが自分の『幸せ』を遠ざけたり、私と共に『平和』を実現しようと思うなら……」

ここまでは黙っていたヒイロも、急に時計で時間を確認し、リリーナに時間を示した。

「……もうすぐ入場の時間です、ドーリアン外務次官」

ヒイロに想いを理解してもらえない事に慣れてしまったリリーナはすぐに切り替えた。

ヒイロが仕事上での呼び名を口にしたように、リリーナも仕事へと意識を切り替えた。

「……わかりました。護衛をよろしくお願いします」

「了解」

と、ヒイロに答えられたリリーナは無言で会場へと入場した。

 

この式典での役目であるスピーチまでの時間には余裕があった。

だが、交流という名のあいさつ回りも必要であったリリーナは切り替えて入場した。

先程、告白を断られたとは思えぬ穏やかな表情で、リリーナは要人達と会話した。

そして、それが一段落した時、こういった場では良く聞く声がタイミングよく聞こえた。

 

 

 

 

 

切ない恋愛お題(1)お題配布元:疾風迅雷