テロ予告が多い為、厳重に警戒された式典に向かうリリーナの護衛をヒイロが務めた。
宿泊先のホテルから、式典の会場に向かう車の中で、突然リリーナはヒイロに告白した。
「ヒイロ、私はあなたを愛しています。だから側にいてくれませんか?」
そういう、リリーナの唐突さに慣れてしまったヒイロは冷静に否定した。
「オレにそのような感情は無い。そしてリリーナ、おまえにオレなど必要ではない」
と、ヒイロが答える事を予想していたリリーナも、その言葉を冷静に否定した。
いや、冷静とは言えないくらい自然な微笑みを添えて答えた。
「私達が目指している事に必要のない人などいません。そうでしょう、ヒイロ・ユイ?」
「……平和と感情論は違うだろう」
そう応えたヒイロは、リリーナとの会話の論点を変えようとした。
だが、リリーナはそれに応じる事はなかった。
「論点をすり替えないで、ヒイロ」
「……おまえと討論する気はない。討論なら違う相手にしてくれ」
「では、はっきりと答えて、ヒイロ」
と、強くヒイロの真意を問い続けるリリーナに対して、ヒイロは短く答えた。
「……オレには資格が無い」
そう答えられたリリーナは、ヒイロを叱責するように問い返した。
「ガンダムのパイロットだったから?」
「……」
「答えて、ヒイロ!」
「オレにはそのような感情を持つ資格もないし、おまえの隣に立つ資格もない」
と答えたヒイロは、式典の会場の駐車場に入った。
そして、リリーナに無言で降りるように促した。
式典までの時間に余裕がない事を知っていたリリーナは、降車しながら応えを要求した。
「そんな答えは要らないわ。私はヒイロの想いが知りたいのです!」
「オレの事など忘れろ。おまえは幸せになれ」
そう言ったヒイロは、会場の警備をしている警護の面々と打ち合わせをしに行った。
VIP専用の入り口で待たされたリリーナは、ただ名前を口にする事しか出来なかった。
「ヒイロ……」
切ない恋愛お題(1)お題配布元:疾風迅雷