新呪術戦記・番外編『謹賀新年』

デュオ&ヒルデ編

デュオが黄龍の神子への年始の挨拶について話した時、急にヒルデは機嫌を悪くした。

そして、急にヒルデは朱雀の神子を辞めるように勧めた。

だが、デュオがそれに応える事なく、芳しい言葉を返さなかった。

「あのさぁ、確かに俺は神子を辞める気はないけどさあ、新年早々……」

そうデュオが事態を収拾させようとしたが、ヒルデの機嫌は更に急降下した。

「リリーナさんは認めたのに?」

「へ?」

「やっぱりデュオも美人が良いんでしょ! 私には辞めろって言う癖に!!」

「……やきもちは嬉しいけど、あの姫さんを認めたのは、容姿じゃなくて能力と気質だ。例えあの姫さんを巫女にあてがわれても丁重に断ってるよ」

「じゃあ、どうして……」

そう言うヒルデを、デュオは軽くも否定をさせない強さを込めて応えた。

「言っただろう、こういうコトは俺みたいな奴で充分だって」

「デュオ……」

「さて、こんな話は終わりにしようぜ。そろそろ黄龍の神子へ挨拶の時間だ」

 

 

 

トロワ&キャスリン編

「トロワ、そろそろ黄龍の神子への挨拶の時間よ」

そう言われたトロワは、無言で頷くと用意をはじめた。

するとキャスリンは強い口調で問い直した。

「……トロワ、返事は?」

「わかった」

それだけしか答えないトロワに対して、今度はキャスリンが無言を返した。

「キャスリン?」

「いい加減、無言を返す癖はやめなさい、トロワ」

「……言葉以外でも伝われば問題はないだろう」

「確かに、黄龍の神子と巫女の様な遣り取りもあるけど、限度ってものがあるわ」

と言うキャスリンの言葉を否定も肯定もする気がないトロワはあえて避けた。

「……時間なのだろう?」

「あ、待ちなさい、トロワ!」

 

 

 

カトル&ドロシー編

「まったく、私とリリーナ様の時間を奪おうなんて大罪でしてよ!」

年が明け、繁雑な儀式で日々の時間が過ぎる事に対し、ドロシーは怒りを露わにした。

そんなドロシーをカトルは穏やかに諭すように話しかけた。

「確かに、君の気持もわかるけど、今日は儀式が多いし、彼らの時間を邪魔するのは……」

「そうですわ! 黄龍の神子だからって、巫女のリリーナ様を独占し過ぎよ!!」

先日、ドロシーは『夫』でもある神子に対して、巫女として仕えると応えた。

そんな事情からも、カトルは複雑な想いを吐露するように呟いた。

「……本当に僕は誰にこの感情を向けるべきなのかな?」

「カトル?」

「いや、何でもない。そろそろ謁見の時間だよ、ドロシー」

そう穏やかに応えるカトルの心境に気付かないドロシーは素直な想いを口にした。

「リリーナ様と簡単にお話も出来ない日は、私にとって厄日ですわ!」

 

 

 

五飛&サリィ編

年が明けたのに、五飛は儀式以外では普段の着物しか纏わなかった。

その為にサリィは、周囲からの嘆願も有り、差しさわりのない言葉を選んで問い掛けた。

「五飛、今日もいつもの服なの?」

「黄龍の神子であるヒイロの許可は取ってある」

そう答えた五飛は、サリィにこれ以上の問答は不必要だと言い切った。

「でも、その巫女であるリリーナさんは詳しい事情を知らないでしょう?」

「巫女は神子に従う者。ヒイロの許可が有れば十分だ」

「まったく、相変わらずね……」

そうサリィが言った時、その後の展開を察した五飛は話の腰を急に折った。

「今日は儀式が多い、『白虎の神子』への敬意を忘れるな」

「わかっていますわ、『白虎の神子』様」

そう言われた五飛は、複雑な心境を表情に出しながらも答えてから立ち去った。

「俺は先に行く」

「ええ。後から私も手伝いに行くわ」

 

 

 

ヒイロ&リリーナ編

年が明けから分刻みで儀式が行われる事に対し、リリーナは初め故に手際が悪かった。

不手際と言われても仕方が無い状況で、リリーナは戸惑いと驚きを言葉にもした。

「本当に都とは違うのね。宮中でもこんなに忙しいなんて聞いた事もないけど」

「おまえは黄龍の巫女だ。この村の中心である黄龍の神子である俺の巫女なのだから当然だろう」

そうヒイロは、当然というような表情でリリーナに答えた。

そして、ヒイロの表情はいつも通り何の感情も読み取ることは出来ない無表情だった。

しかし、戸惑いを隠そうとしないリリーナの言動はヒイロに変化を与えた。

「……本当に珍しいな、おまえがそんな顔をするなんて」

「……そう言うヒイロは違う意味で楽しそうね?」

「ああ、お前の百面相は楽しいからな」

そう答えるヒイロの表情は年相応な明るい表情に見えた。

だからリリーナもつい年相応な拗ねた表情でヒイロに対して応えた。

「ヒイロのそんな顔だって、黄龍の神子だと名乗っていた時には想像も出来なかったわ」

「当然だろう。俺は感情を『封じ』られていたのだから」

とヒイロが答えた時、リリーナはその言葉に含まれる過去を思いだした。

「ヒイロ……」

「そろそろ無駄話も終わりだ。次の儀式が待っている」

そう答えられたリリーナは、ヒイロの言葉に応えるように気合を入れ直した。

「そうね。私も黄龍の巫女として恥じないように頑張るわ」

 

 

 

オールキャラ編

年明けの儀式が一段落し、月が空に現れた頃、ドロシーはリリーナの元を訪れていた。

「リリーナ様、今日は大変でしたわね。慣れない儀式ばかりで大変だったのでは?」

「ありがとう、ドロシー。でも、ヒイロが助けてくれたから大丈夫です」

「それこそ心労では? 黄龍の神子としては力があっても、人の感情に疎い……」

そうドロシーがヒイロへの鬱憤、いや嫉妬を露わにした時、五飛がサリィを連れて来た。

「ヒイロ、おまえが認めたのだからこいつを説得しろ」

「そのような言葉は、黄龍の神子様に対して失礼では、白虎の神子様?」

とサリィが問いかけた時、五飛とその後ろから現れたデュオの声が重なった。

「「ヒイロ!」」

「どうして逃げるのよ、デュオ!」

「そりゃあ、何度も同じ事を問われて答えるだけなんて、時間の無駄だぜ?」

そう答えたデュオは黄龍の神殿を逃げ場所としようとした。

しかし、それが無駄だとデュオが気付く前に、キャスリンがトロワを伴って現れた。

「あ、皆が揃ってて丁度いいわ。ねえ、やっぱりトロワの無口は直すべきよね?」

「……キャスリン、皆は聞いていないと思うぞ?」

とトロワはポツリと呟いたが、それに応える者は居なかった。

そして、静かであった神殿の変化に対し、ヒイロは憮然とした表情で呟いた。

「……ここは集会場じゃないぞ」

「そうね。でも楽しい事は大歓迎だわ」

そうリリーナは満面の笑みを浮かべながらヒイロの呟きに応えた。

「騒がしいだけだ。それにおまえが来るまでこの神殿で騒ぐ者など居なかった」

「それは嬉しい事ね」

「……おまえの価値基準は理解不能だな」

「それが人間だと思うけど……あ、言い忘れていたわ」

とリリーナが会話の腰を折ったので、ヒイロは無言で言葉を促した。

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」