いつかからだろう守りたいと思ったのは。
いつからだろう愛しいと思ったのは。
理由はいくらでもつけられるだろう。
だが、誰にもわかるわけがない。
それこそが人にとっての喜びであり、悲しみ。
そして、その矛盾が、迷いが、有益なもの。
そう思わせたのは、あいつだけだった。
リリーナ・ピースクラフト……リリーナ・ドーリアンか。
リリ-ナはいつでも俺の中にいる。
いつからいたのか、など俺は知らない。
ただ、リリ-ナに出逢うまで俺は空だった。
リリ-ナこそオレを人として生かす、ただ一つの夢。
守りたいと思う美しき夢……
リリ-ナと出逢ったのは砂浜だった。
ゼクスに落とされた俺は、自分のガンダムと離れていた。
そして、防護服を着たまま気を失って倒れていた。
そこへリリ-ナが現れ、俺を助けようとした時に素顔を見られた。
俺は地球に報復するためのきかい。
『失敗の続く日はどこまでも失敗する』などと言っていられない。
すぐに自爆を決意した。
小さなヒビを作ってしまったから…
だが、不幸か、幸か、不発に終わった。
だから、俺はその場から逃れ、『おまえを、殺す』と、言って遠ざけようとした。
なのに、リリ-ナは俺に近付いてくる。
そして、リリ-ナが俺にとって、決して小さくはない存在になる。
俺の気付かないところで……
故郷に裏切られ、未来も、希望もなく、悪足掻きである事を認めながらも、ただ、戦場に向かう俺の中で。
リリ-ナは俺に矛盾を与える。
『理想に溺れている』と思いつつも、その理想を実現の可能性を少しでも考えてしまう。
『そんな事は出来ない』
『いや、リリ-ナなら出来る』
『リリ-ナは理想に溺れる弱者だ』
『しかし、人々の希望となる象徴だ』
『俺は誰も必要ではない』
『でも、理由を欲している』
宇宙が混迷するように、俺もそうだった。
だが、未来へと続くものに気付いたとき、俺はそこから脱した。
リリ-ナとの出会いこそ、未来へと続く運命。
出会うべくして、であったのだという事を。
地球にとっても、宇宙にとっても、俺にとっても…
俺を人として生かす唯一無二の存在。
だから、守りたい。
だから、愛したい。
だから、欲しい。
けれども、それを表に出せはしない。
だから心の中で、一人つぶやく。
愛していると……