HEERO’S EMOTION 4

「あなたの意見は正しいわ。でも、その2つが融合して生み出されたものが今の平和の象徴ではないのですか? ピースクラフト家は戦乱の中での平和の象徴であり、ガンダムのパイロットもその中での戦争の象徴。そうではなくて、ヒイロ?」

と言いながら、リリーナが室内に入った時、ヒイロは名を呼ぶ事しか出来なかった。

「リリーナ……」

「ヒイロ、リリーナ様の言う通りではないか?」

と、ノインは問いかけるが、ヒイロはただ無言を返すだけだった。

そんなヒイロの襟首を掴もうとしながらゼクスは問いかけた。

「なぜ答えないのだ、ヒイロ・ユイ!」

「ヒイロ、『感情で行動する事に異論はない。感情で行動するのが正しい人間の生き方』なのでしょう。なのに、貴方はそう生きる事が出来ないのですか?」

そう言ったリリーナが微笑みながらゼクスを制止した。

そして、先程までの無表情が嘘だったかの様に、ヒイロの瞳は明らかに戸惑っていた。

「全ての人に理解してもらえないかもしれない。でも、私が貴方の傍に人として居たいと言う心はきっと理解してもらえる……そう私は信じているわ」

とリリーナに言われたヒイロは、ただ口を何回か開いてからすぐに倒れた。

「ヒイロ!」

倒れたヒイロを何とか支えようとしながら、リリーナは問いかけた。

「……」

しかし意識を失っているのか、ヒイロは何も答えなかった。

なので、リリーナはゼクスの手を借りてヒイロを客室にあるベッドに寝かせた。

そして、リリーナはすぐに部屋を出ようとしたので、カトルが呼びかけた。

「どうしたんですか、リリーナさん?」

「ヒイロの体がとても熱いから、医者の手配をしてきます」

「待ってください。多分、媚薬の副作用です。ここに中和剤があります」

そう言ったカトルは、リリーナに水薬を渡した。

水薬を渡されたリリーナは、すぐにヒイロに飲ませた。

コクンとヒイロの喉が鳴ると、体から高熱が失われていった。

しかし、ヒイロの意識が戻らなかった。

そんなヒイロをじっと見つめるリリーナに対して、見守っていたゼクスが言った。

「リリーナ、もしかすると薬の副作用だけではないかもしれないぞ」

「どういう意味ですか、お兄様?」

ゼクスの言葉の意味が理解できないリリーナはそう問いかけた。

すると、ゼクスは笑いを堪えながら答えた。

「つまり、ヒイロ・ユイも人だと言うことだ」

「……そうか、それなら納得できますね」

「そうですね。そう言えるかもしれませんね、ゼクス」

などと、カトルとノインは言ってからクスクスと笑い出した。

しかし、まだ意味を理解出来なかったリリーナはキョトンとした瞳を三人に向けていた。

そのような雰囲気をぶち壊すかのように少年達が客室に乱入して来た。

「リリーナ様、デュ……」

「おい、大丈夫か、お嬢さん?」

「ヒイロ無事か?」

「おい、お前達、他人の家にずかずかと入るな!」

と、デュオ、トロワ、五飛がパーガンを押しのけて口を開いた。

そして、その3人を見たゼクスとのインが怪しげな笑みを口元に浮かべた。

「君達に話がある。カトル、君もだ。いいね4人とも」

「リリーナ、ヒイロの事は頼んだぞ」

そう言うと、ゼクスとノインは4人の少年達を連れて部屋を出て行った。

少しばかり展開に追いつけなかったリリーナは、パーガンの退室の言葉によって気がついた。

「それではお嬢様、失礼します」

「……ええ。有り難う、パーガン」

パーガンがドアを閉めて足音が聞こえなくなった頃、ヒイロがいきなり身を起こした。

「ヒイロ、大丈夫ですか?」

「別にたいしたことじゃない」

と、いつも通りの無愛想な反応をヒイロにされたリリーナは安心して小さく微笑んだ。

そんなリリーナを見たヒイロはふと真面目な顔をした。

「あの時は取り返しのなかった事をした、許して欲しい」

「……ヒイロ、本当かしら?」

そう言ったリリーナは、少しばかり悪戯っぽい目でヒイロを見た。

「オレは本気で言っている」

「もう、二度目が無いと言うなら、金輪際、惑わされないでね、ヒイロ」

「ああ……リリーナ、もしオレが今ここで小箱を差し出したらどうする?」

「左手の薬指へのプレゼントなら受け取るわ」

そう言ったリリーナは、ヒイロのたとえ話に満面の笑みを返した。

すると、ヒイロも小さな笑みを返した。

さて、デュオ、トロワ、カトル、五飛は?というと……こんな雰囲気後で語るには相応しくない為、皆様のご想像にお任せします。

 

 

 

1997年発行アンソロジーより