ふらりと、連絡もなく、ケテルが珠紀の元に訪れた。
アリアから休んでこいと告げられたケテルが数日だったが滞在する事になった。
そして、ケテルが帰国する前日に、美鶴は珠紀の浮気疑惑がある事を告げた。
すると、ケテルは淡々とした表情のままで簡潔に答えた。
「……そうか。では、珠紀に殺してもらう」
「え?」
「珠紀と共にあれぬ未来しか無いならば、生きる意味など俺にはない」
という、ケテルの答えが想定外だった美鶴は、ただ驚き、戸惑った。
そして、その様な美鶴を気にせず、ただ珠紀の姿を探そうとした。
すると、話題の中心人物である珠紀が二人の前に現れた。
そして、珠紀が言葉を口にする前に、ケテルが唐突に告げた。
「ああ、ちょうど良かった。珠紀、俺を殺してくれ」
そうケテルに告げられた珠紀は、言葉も意図も理解が出来ずにただ戸惑った。
その様な珠紀に対し、簡単に状況説明と判断を求めた。
「珠紀との未来を望めないならば、俺には生きる意味などない。だから殺してくれ、珠紀」
というケテルの言葉を聞いた珠紀は、強い視線を美鶴に向けた。
すると、状況についていけず、口を閉ざしている美鶴は謝罪を言葉にした。
「も、申し訳ございません!」
「……やはり嘘か。では、念の為の確認をしよう」
そうケテルは淡々とした口調のまま、事実確認をしながら珠紀に問いかけた。
それ故に、珠紀も真っ直ぐな視線でケテルを見つめながらケテルに応えた。
「珠紀はロゴスの統率者の妻となるか、この地で玉依姫としてあり続けるか、と」
「……私は玉依姫としてケテルの帰りを待っているよ?」
と、珠紀はケテルの問いに対し、第三の答えを言葉にした。
否、ケテルと珠紀が想いを確認し合った時から変わらぬ思いを言葉にした。
それ故に、ケテルは再び口を閉ざしていた美鶴に視線を向けた。
「……時期尚早だったな、美鶴」
「……はい」
そう美鶴が答えるのを聞いたケテルは一人満足げにうなずいた。
しかし、ケテルと美鶴の会話を知らない珠紀は素直な疑念を言葉にした。
「……時期尚早?」
「ああ。珠紀と共に生きる事が出来るようになれば、当然の結果となるからな」
「それって、どういう意味……」
と、再び疑念を言葉にする珠紀に対し、ケテルは互いの唇を重ねた。
美鶴がケテルと珠紀の仲を進展させようと嘘をついた事を行動で伝えようと。
そして、美鶴の配慮も時期尚早である事を確認させる為にも。
しかし、ケテルの天然な行為に慣れない珠紀はただ目を見開いた。
そして、ケテルを煽ろうとしていた美鶴も、この展開には驚いた。
だが、二人の驚きに気付かない、否、気付けないケテルはすぐに重ねた唇を離した。
「……これで良いか」
「い、意味が分かんないよ、ケテル!」
「だから時期尚早だと言ったんだ。珠紀はまだ幼いからな」
そうケテルに告げられた珠紀は、『幼い』という言葉に過剰反応した。
「……それってどういう意味?!」
「……それは美鶴が教えてくれるだろう」
とケテルに話を振られた美鶴は、驚きから目を見開いた。
だが、珠紀の怒りを秘めた瞳と強い意志を感じる視線から逃れようとした。
しかし、珠紀は視線をそらした美鶴に詰問する様に詰め寄った。
「……教えてくれるかな、美鶴ちゃん?」
「た、珠紀様、落ち着いてください?」
「それは美鶴ちゃんの返答次第かな?」
そう珠紀に詰問された美鶴は、ケテルに助けを求めようとした。
しかし、ケテルは姿を消し、自ら蒔いた種であるが故の責を取らされた。
それ故に、笑顔で詰問をする珠紀を納得させる為、美鶴は数時間を費やした。
ケテル編は想定外なコメディエンドとなりました。
というか、ケテルの言葉は淡々としたコメディでもないと思うのですが……
というか、ケテルに幼いと言われる珠紀嬢って……
まあ、祐一先輩に似ていると言われているケテルですが、
似ている要素は多いと思うのですが、違う要素も多いかな?
というのが書いている最中に思った事です。
また、緋色の1と3の攻略キャラの中では、
一番書き上げるのに時間がかかったお方でした。