嫉妬してください♪拓磨編

学校から珠紀を家まで送った拓磨を、急に美鶴が引きとめた。

いつもとは違う、真剣で思い詰めた美鶴の態度故に、拓磨もそれに応じた。

すると、居間に通された拓磨は、何故か美鶴に荷物を預けさせられた。

そして、思い詰めた表情のまま、美鶴は拓磨に珠紀の浮気疑惑がある事を告げた。

「……それは本当、なのか?」

そう拓磨は答える事しか出来なかった。

否、美鶴の言葉の真偽よりも言葉の影響力に押し潰された。

そして、それを理解しているのか、美鶴は淡々と言葉を続けた。

「……はい。その様な相談を受けた数日前に、告白されている現場も見ました」

「……守護者、じゃないよな?」

という拓磨の表情は色を無くしたが、無表情というより凍りついていた。

その様な拓磨の変化に対し、淡々と告げていた美鶴が徐々に気圧された。

「え、ええ。同じクラスの方だそうです」

「名前も知っているのか?」

「……名前を知ってどうされるのですか?」

「……美鶴は知らなくていい。ただ名前を教えてくれ」

そう問う拓磨の声も低さを増し、殺気さえも漂わせはじめた。

その様な拓磨の変化に完全に気圧された美鶴は視線を迷わせはじめた。

「……えっと……」

「無理矢理ってのは趣味じゃないんだが……」

と告げた拓磨は立ち上がり、座卓の向かいに座る美鶴へと近寄った。

その行動に対し、気圧されている美鶴はただ硬直した。

そして、その場の空気に気付かない、否、気付けない珠紀が乱入した。

「ちょっと、拓磨、なに美鶴ちゃんを脅してんのよ?」

そう問う珠紀の登場に、何故か美鶴が一番早く反応した上で驚いた。

「た、珠紀様!」

「……丁度良かった。珠紀、誰に告白された?」

という拓磨の問いの意味と、殺気を漂わせる強気の態度に対し、珠紀はただ戸惑った。

そして、浮気疑惑で頭に血が上っている拓磨はただ珠紀に問い続けた。

「誰に告白されて、俺の元から去る気だ?」

そう拓磨に問われた珠紀は、ようやくこの場の空気と交わされた会話に気付いた。

それ故に、元凶といえる美鶴への厳しい叱責を名に込めて叫んだ。

「……美鶴ちゃん!」

「も、申し訳ありません!」

と気圧されていた美鶴が珠紀の叱責に対して謝罪した。

それを聞いた拓磨は、混乱しながらも二人の言葉の真意を問うた。

「……どういう事だ?」

「最近、美鶴ちゃんの様子がおかしいと思ってたら、こんな事か」

そう珠紀が呆れながら美鶴へと強く叱責する様な視線を送った。

そして、感情的になっている拓磨は、冷静な珠紀にも怒りをぶつけた。

「こんな事とはどういう意味だ! 誰に告白されたんだ、珠紀!!」

「……美鶴ちゃんの嘘だってわかんないの、拓磨?」

と珠紀に問い返された拓磨は再び混乱した。

いや、珠紀の冷静さと美鶴の言動から、拓磨も理解はした。

しかし、感情的になり、殺気さえもただ漏れていた拓磨は理解しきれなかった。

「……う、嘘、だと?」

「……はい、その通りです、珠紀様」

そう美鶴は完全降伏を言葉にし、拓磨は混乱したままでも状況を理解しようとした。

そして、冷静の受け答える珠紀は、美鶴の言動の真意を確かめる様に問い続けた。

「もしかして、言蔵家に戻った時、何か言われたの?」

「……次代の玉依姫が問題の争議となりまして、珠紀様には少しでも早くご懐妊して頂けるように勧めろ、という総意になったのです」

と美鶴が語る、裏事情という真実を知らされた珠紀は、大きな溜息をついた。

そして、拓磨もようやく状況を理解する事が出来るようになった。

「……だから、最近、この家に泊まれって強引に勧めていたわけか」

「……はい、その通りです」

そう美鶴が拓真の問いにも素直に白状すると、今度は珠紀が慌てはじめた。

「……え、拓磨、泊まるの?」

「……珠紀?」

「ちょ、ちょっと待って、待って。え、何で?」

「……なんで俺が泊まるだけで、そこまで動揺する?」

と、拓磨に問い返された、否、ツッコミをいれられた珠紀は更に動揺した。

「だって……拓磨の荷物が私の部屋にあったし……それに、敷いてあったお布団に枕が二つあったのも、美鶴ちゃんのせいなの?!」

そう珠紀が慌てながら告げる言葉を聞いた拓磨も顔を真っ赤にした。

そして、先程までの表情が嘘の様な美鶴が、ニッコリと笑って答えた。

「今宵からでも遅くはありません。今どき婚前交渉など当たり前です。いえ、学生結婚やできちゃった婚等の準備は完璧に手配させて頂きます。それに、愛情をプラトニックに確認するのも良いですが、互いの肌を合わせて確認するのも良いかと」

「「……」」

「私が邪魔でしたら、いつでも言蔵家に泊まりますので、ご安心ください」

そこまで美鶴に言われた拓磨と珠紀は再び沈黙した。

そして、沈黙した二人に対し、美鶴が言霊を使用しようとした。

その気配を察した拓磨と珠紀は、慌ててこの場から立ち去った。

それ故に、この作戦の潮時だと思った美鶴は、更なる策を弄しはじめた。

また、この日から、拓磨と珠紀は美鶴の策との戦いがはじまった。

しかし、それがきっかけとなり、拓磨と珠紀の関係は変わりはじめた。

そして、その変化がすぐに周囲へと知れ渡ってしまう事はまた後の話……

 

 

 

 

 

緋色の欠片の連続更新SSは拓磨からはじめました。

緋色の欠片(1と3)ではシナリオとキャラとCP的には、

拓磨のルートと珠紀との関係が一番好きです。

次をあえて挙げると祐一先輩と卓さんでしょうか?

また、これから同じテーマ『嫉妬』を中心にした

1と3の攻略キャラ×珠紀を週一で連続更新の予定です。

なので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。