悋気~嫉妬してくれますか?~仲謀編

庭園の東屋から仲謀の執務室の方を見て溜め息を吐いた花に、大喬と小喬が声をかけた。

「ねえ花ちゃんってば我慢が好きなの?」

そう問われた花は、大喬と小喬の唐突な行動ではなく言葉へ反応する様に身を固くした。

その様な反応に気付いている大喬と小喬は、あえて花の不安を煽る様に言葉を続けた。

「そうだね。仲謀が好きなのに逢わなくても平気なんて言うのは強がりでしょ?」

「あ、それに仲謀の性格だと、勝手に勘ぐって不安になるかも?」

「で、でも、私に会う為だけに睡眠や休憩の時間を減らしてもらうのは……」

という花の控えめ過ぎる答えを予測していた大喬と小喬は強く否定する様に忠告した。

「それは言って良い我が儘だよ、花ちゃん!」

「そうそう。その位の甲斐性は仲謀でもあるよ」

そう大喬と小喬に言われた花は、自身の想いの大きさ故に思いが揺らいだ。

いや、仲謀の言動も想像した花は、大喬と小喬の言葉が正しいと思い始めた。

「……そうかな」

「うん。仲謀だって花ちゃんに会いたいって思っているよ」

「じゃあ、さっそく仲謀を連れてくるね!」

という大喬と小喬の提案は、あまりに安易過ぎたが故にただ花は驚いた。

いや、大喬と小喬の実行力の凄さを知るが故に、花は安易に答える事を躊躇った。

しかし、花の迷いも躊躇いも気にしない大喬と小喬はただ思いのままに行動した。

「あ、花ちゃんは私室に戻ってね」

「そうそう。出来れば寝台で寝てた方が良いかも」

「あ、あのね、私も仲謀には会いたいけど、無理は……」

そう花は、徹夜状態で執務をしている仲謀の事を思ったが、大喬と小喬はただ笑った。

「大丈夫、大丈夫。花ちゃんの一大事だって言えばね」

「あ、でも、体調は悪いって言わないと、仲謀が暴走すると思うから加減してね?」

「……あ、あの」

「じゃあ、花ちゃんは待っててね、仲謀も楽しみにしていると思うよ」

「というか、我慢の限界を超えてるかもね、仲謀も」

と告げて去って行った大喬と小喬の言葉の通り、花は与えられている私室へと戻った。

そして、久方ぶりに仲謀と逢える事に少しだけ心を弾ませつつも心配もしていた。

大喬と小喬の言葉を肯定したい想いは強いが、多忙を極める仲謀の事を思うが故に。

 

 

 

だが、唐突に現れた3人の男性陣があまりに速かった為、花はただ驚いてしまった。

しかし、現れた3人の男性陣の中心である仲謀は、花の驚きに気付けなかった。

否、大喬と小喬の言動に煽られた仲謀はただ呆然とする花に声をかけた。

「おい、返事も出来ないほど体調が悪いのかよ?」

「……どちらかと言うと想定外の事態に、驚きを隠せないといった風情ですね」

そういう公瑾は、花と大喬と小喬の態度の意図に気付いたが故に大きな溜め息を吐いた。

同じ様に気付いて予測もしていた子敬は、おおらかで達観した感想を言葉にした。

「ふぉふぉふぉふぉ。若いとは良いですなぁ」

「大小、悪戯もいい加減にしやがれ!」

と叫んだ仲謀は大喬と小喬に責をとらせる様な怒声を浴びせた。

しかし、その様な怒声にも慣れている大喬と小喬は脅えもせずにただ反論した。

「えー嘘は言ってないよ?」

「そうそう。花ちゃんが仲謀に会えないのが不安だって言ったのは本当だよ」

「じゃあ、花が体調を崩して弱気になったから浮気しそうだって言う方が嘘か!」

「仲謀がやせ我慢しすぎて、花ちゃんの不安を解消できなかったら、男の甲斐性無しって事で、浮気されても仕方がないよ」

「それに、花ちゃんの人気が高い事は仲謀も知ってるでしょ?」

そう答える大喬と小喬の言葉に、先程とは違う意味で煽られた仲謀は本気で怒りかけた。

「……お・ま・え・ら」

「きゃー仲謀が本気で怒ったよー」

「花ちゃんと会えなかった日々の八つ当たりだよー」

という大喬と小喬が仲謀をからかうのを収める様に、公瑾は淡々と口を挿んだ。

「大喬殿に小喬殿。花殿を思う気持ちも仲謀様で遊びたい気持ちもわかりますが、政務に支障が有っては困ります」

「なに。今日は少しぐらい息抜きをしても良いでしょう。未来の妻に気を配るのも男の甲斐性ですから」

そう子敬は公瑾の言葉を肯定も否定もする事なく、おおらかな口調で休憩を提案した。

それにすぐ反応した大喬と小喬は、あえて公瑾と仲謀の事を名指ししながら賛成した。

「さすがは子敬だね! どこかの笑顔魔人とは違うよ」

「そうそう。我慢しすぎて八つ当たりしまくってる人とも違うね!」

という大喬と小喬の言葉に名指しをされた公瑾と仲謀はあえて沈黙した。

そして、余裕な態度を崩さない子敬はただ大喬と小喬にも提案をした。

「では、私に免じて、仲謀様と花殿を2人っきりにして頂けますか?」

「うん。もちろんだよ」

「その為に仲謀を嫉妬で怒らせたんだし」

そう大喬と小喬があからさまに同意した為、仲謀はため込んだ怒りを爆発させた。

「じゃあ、とっとと去れ!」

と叫ぶ仲謀の本気の怒りに気付いた大喬と小喬は、あえて怖がるふりをして退室した。

「きゃー仲謀の色情魔ぁー」

「花ちゃんに手を出したら駄目だよ、色情魔ぁー」

そう大喬と小喬が仲謀をからかう事を忘れずに退室すると、公瑾は的確に反論した。

「大丈夫ですよ。仲謀様にはそこまでの勇気も甲斐性も有りませんから」

「……お前が一番慇懃無礼だろ、公瑾!」

と仲謀に言われた公瑾はただニッコリと笑うと子敬と共に静かに退室した。

 

 

 

嵐の様な状況への反応が遅れていた花は、久方ぶりに会う仲謀にはじめて声を掛けた。

「……えっと……ごめんね?」

「それはどう意味の謝罪だ?」

「仕事、忙しかったんでしょ?」

「ああ。おまえの花嫁修業の倍くらいはな」

そう仲謀が淡々とした口調で答えたが故に、花は素直な驚きと確認を言葉にして問うた。

「じゃあ、今日も寝てないの?」

「……半月くらいは仮眠以上に寝ていないな」

「じゃあ、これからでも寝た方が良いよ!」

という花の答えは、寝台で横たわっている女としての自覚と配慮に欠けていた。

否、色恋沙汰に関して鈍すぎる花を思うが故に、あえて仲謀は警告を言葉にした。

「……それは誘ってんのか?」

「え?」

「俺は一度しか待たねぇって言った事を忘れたとは言わせねぇぞ」

「えっと……仲謀に睡眠をとって欲しいって言う意味だよ?」

そういう花の言葉が想定通りだった為、仲謀は互いの距離を縮めてから再び警告した。

「好きな女の私室の寝台で、好きな女に何もせずに寝れって方が拷問だぞ」

「……ごめん」

「ま、お前が俺の事をいつも考えて、休んで欲しいって思っている事はわかってる。でもな、俺だってお前に会いたいし、不安にもなるんだ。だから……出来るだけお前には会いたい」

と仲謀が素直な想いを吐露すると、花も我慢していた想いを静かな口調で言葉にした。

「うん。私も仲謀に毎日でも会いたいよ」

「じゃあ、今度は俺に言え。大小に言う前にな」

「ありがとう、仲謀」

そう感謝を言葉にした花の笑顔に魅せられた仲謀は互いの距離を無くしてから口づけた。

その行為に花は驚いたが、更に仲謀を魅せる様な艶やかな笑みを見せた。

その様な笑みをみせられた仲謀は、更なる行為への想いを誤魔化す様にかっこつけた。

「今回、俺様に無用な嫉妬をさせた代価だ」

「私も嬉しいから……」

という花の言葉は仲謀にとっては想定外で、ぐらつきそうな理性が更に不安定になった。

それ故に、仲謀は警告というより、素直な想いと行き場の無い怒りを言葉にして遮った。

「それ以上可愛い事を言うんじゃねぇ! 俺の理性にも限界があるってわかれ!!」

「……ごめん」

「……いや、余裕がない俺も悪い。ほんとにお前に関しては、いつも余裕がなくなるんだ」

「……うん」

そう花は答えると、間近な仲謀の肩に自身の頭を預けた。

全てを預ける様な花の体を、仲謀は力強く抱きしめながら素直な想いを再び吐露した。

「……だから覚えておけ。俺はお前をいつも求めているって」

「私も仲謀と一緒にいたいし、欲しいって思って欲しいよ」

「……ああー、もう。ほんとにお前は俺をどこまで試して、堕としたいんだよ!」

と叫んだ仲謀は、再び自らの深い欲との対峙を迫られた。

その様な仲謀の欲に気付かない、否、気付けない花はただ不思議そうに首をしげた。

その様な仕草にも煽られた仲謀は、ただ耐えるしかない現状への怒りをただ言葉にした。

「ほんとに我慢は婚儀までだからな!」

 

 

 

 

 

仲謀ルートはバットエンドの連続故に、ハッピーエンドと2週目の破壊力が凄かったです。

そして、それ故に仲謀ルートにもハマりました。

というか、三君主と裏主役の人達のルートは、色々な意味でも濃い上に

ストーリーへの引き込まれ感も凄まじく、萌えに燃える展開でした!

その素晴らしさを少しでも再現する事が出来、萌えを感じて頂ければ幸いです。