悋気~嫉妬してくれますか?~孟徳編

冒頭が微エロ?風味となっています。

艶表現が混ざる文章が苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

今宵も孟徳は大怪我から回復した花の部屋に通った。

そして、他愛もない話から艶めいた会話となり、孟徳は花の身を寝台に横たわらせた。

その時、花は思いつめた表情で孟徳へと短く問いかけた。

「……あの、孟徳さん」

「どうかした、花ちゃん?」

「あの……私は孟徳さんと夜を過ごせるのは嬉しいです。でも、孟徳さんも同じ、ですか?」

そう花に問われるのは、孟徳にとって予想外だった。

否、花を身体ごと愛した夜から、孟徳の想いを疑う事は少なくなった。

むしろ、愛されすぎるが故の戸惑いと喜びを孟徳に感じさせていた。

だが、花の問いが愛情への疑念では無いと見抜いていたが故に意図がわからなかった。

「……どうしてそう思うの?」

「だって……私ってまだまだ子供だし、色気も足りてないと思うし、胸も大きくないし、上手で気の利いた誘い方もできないし……」

という自虐に満ちた本音を聞かされた孟徳は、花の言葉を遮るように口に指で触れた。

「駄目だよ花ちゃん」

「え?」

「いくら花ちゃんでも、俺の想い人を傷つけるのは許さないよ?」

そう孟徳に告げられた花は、その言葉の意味と唇に押し当てられた指の存在に戸惑った。

また、涙目で見上げる仕草に、孟徳は欲を煽られたが、そこはじっと耐えてから答えた。

「俺が花ちゃんを好きなのは事実だし、花ちゃんを傷つけられるのも俺の特権なんだから」

「特権、ですか?」

「うん。それとも花ちゃんは俺以外もこうして受け入れるの?」

と、孟徳に問い続けられた花は、唇に触れていない手が下肢に触れている事に気づいた。

と同時に、強引ではなくも艶やかで慣れた手の存在に、花は驚きながらも孟徳に答えた。

「で、出来ません!」

「うん。正直な反応は嬉しいね。特に俺の事で頭がいっぱいって感じで」

「……孟徳さんもですか?」

そう花は、再び深い思いを感じさせる思いつめた表情で呟いた。

いや、花の本音を見抜いたが故に、孟徳はあえて聞き流すように問い返した。

「うん?」

「い、いいえ、何でもないです」

「……とりあえず、今夜はおあずけ、じゃないよね?」

「え?」

と花が孟徳の意図を確かめる様に問い返した。

相変わらず初心な花の反応に対し、孟徳は苦笑いつつも艶やかな表情で誘った。

「続き、しても良いかな?」

「……はい」

そう孟徳に応える花には陰りはなく、ただ深い愛情を感じて咲き誇る華の様だった。

 

 

 

花の元に連夜通える日々に満足げだった孟徳が、唐突に文若の執務室に現れた。

いや、花が働く職場でもあるが故に、孟徳の来訪はおかしくなかった。

しかし、大袈裟な程の足音を立てて、全力疾走で駆け込んでくる丞相は有り得なかった。

「花ちゃんいる!?」

と開口一番で現れた上司の言動に溜め息を吐きつつも、文若は冷静沈着に苦言を呈した。

「丞相。花に傾倒する事は止めませんが、落ち着きのない言動まで真似るのは……」

「花ちゃんはいないのか?!」

そう孟徳が同じ言葉を繰り返した為、文若は苦言ではなく答えを言葉にした。

「……花は休憩中です。そして、休憩時間の居場所までは把握しておりません」

「なら、元譲も知る、花ちゃんに気になる男が出来たっていう噂の真偽を知っているか?」

という孟徳の言動はあからさまな嫉妬よりも深い何かを感じさせる怖さがあった。

しかし、文若の冷静沈着な態度は変わらず、淡々とした口調で答えた。

「丞相ならば、嘘かどうかもわかるのでは?」

「俺はおまえに聞いている」

「……確かに、花から気になる男が出来たと思わせる言動は増えましたね」

そう文若が答えた時、孟徳の表情は即座に殺意と悪意に満ちた。

しかし、それを察した文若は暴走を止める様に名を言葉にしたが、孟徳は聞かなかった。

「何でもない。邪魔したな、文若」

「……花、ここが潮時だ。無用な嫉妬で政務を疎かにされては困るからな」

と文若が盛大な溜め息を吐きながら、室内に響き渡る程度に大きな声を口にした。

すると、執務室の物陰から身を隠していたらしい花が現れて謝罪を言葉にした。

「……すみません、文若さん」

「花ちゃん!?」

そう孟徳は唐突に現れた花に驚く事なく、ただ真剣な表情で近寄ってきた。

そして、花に言い訳の隙も与えない孟徳は、強要する様に自身の問いへ答えを強いた。

「気になる男が出来たって本当? もし間違いないならすぐに役職と名前を教えて!」

「……」

「あ、花ちゃんが悪いんじゃないよ。花ちゃんをたぶらかした罰を与えるだけだから」

という孟徳の問いの連続で強く問われた花は、唐突に泣き出した。

その様な花に対し、自身の怒りと殺意を隠しきれていると思っている孟徳は戸惑った。

そして、花の想いと孟徳の想いも見抜ける、否、安易にわかる文若が再び口を開いた。

「ご安心ください、丞相。花は嬉し泣きをしているだけです」

「……どういう事だ」

そう孟徳は短くも強い口調で状況を理解している文若に説明を求めた。

すると、文若は珍しくも短い言葉で『こたえ』を口にした。

「花が気にする男というのは丞相のことですから」

「……つまり、俺は花ちゃんの策に嵌ったのか?」

「丞相相手では子供だましかと思ったのですが、見事な策に成ったのは驚きです」

と告げられた孟徳は状況を理解したが、一つだけわからない事があった。

というより、この様な策で得られる利と目的が。

そして、『こたえ』を知る文若は、孟徳の疑念へ答える様に再び溜め息と共にぼやいた。

「しかも、丞相が嫉妬するか等という当たり前な事を確認したいなど……」

「は?」

「……花は丞相の気持ちを信じていても、過去に対する嫉妬が抑えられないとか」

「……」

「だから、花は丞相にも嫉妬する以上の独占欲があるかを確かめたかったそうです」

そう文若が仕事の報告をする様に事務的な口調だったが、的確な状況説明だった。

だが、この様な事に文若が協力する事は、常の態度を考えると有り得なかった。

「……珍しく協力的だな、お前にしては」

「花は協力を断ったら丞相を1カ月は無視すると言ったので」

「……それはとんでもない拷問だな」

と答えた孟徳は、告げられた『もしもの状況』を想像しただけで軽く絶望しかけた。

その様な素直な孟徳の言動に対し、はやり文若は盛大な溜め息と共に答えた。

「それに、花が丞相の正妻になる決意が早ければ早い程、こちらにも利はありますから」

「……すみません、孟徳さん」

そう告げる花はようやく止めた涙を隠す様にうつむくが、孟徳はあえて視線を合わせた。

「本気でそう思ってる?」

「はい」

「じゃあ、今から一週間は休暇だよ?」

と、孟徳が満面の笑みと共に選択肢を選ばせようとした時、黙っていた文若が遮った。

「丞相!」

「俺はいつも以上に働くぞ。愛妻との時間を多くする為にも」

そう孟徳が告げると、更に文若は眉間のしわを寄せてから溜め息共に声高に叫んだ。

「……わかりました。では、元譲殿、お願いいたします」

「……ああ」

「待て、元譲! 俺は男に担がれる趣味なんてないぞ!!」

「丞相。花との時間を過ごす前に、まずは仕事を片づけてください」

「あきらめろ、孟徳。仕事を放置した場合、2カ月は無視すると言っていたぞ」

という元譲の答えを聞いた孟徳は、花の策略の全貌に気付いた。

いや、花の恋戦にはめられたと知った孟徳は、全力で脱力して抵抗する事も止めた。

また、全く抵抗する事がなくなった孟徳に元譲は驚きつつも執務室に向かった。

そして、ようやく執務に戻れると思った文若は、あえて花に最終確認をした。

「……これでいいのか、花?」

「はい。ありがとうございます、文若さん」

「礼はいらん。丞相が仕事をさぼらない代価ならば安いものだ」

「あと、元譲さんにも感謝を伝えてください」

そう花は答えると、その言葉の意味を察するだろう文若に対し、真っ赤な表情となった。

そして、文若は乙女心を理解する気はなくとも、ただ花への配慮を言葉にした。

「……1週間後でも、問題はないだろうから、お前はこれから休め。1週間後の状態はわからないが、休める時に休んでおけ」

「……」

「これからも丞相のやる気はお前次第なのだからな」

「はい、頑張ります!」

と満面の笑みで応える花に対し、文若は書簡を手に取りつつも小さな声で答えた。

「……程々にな」

 

 

 

 

 

孟徳さんが元譲さんと文若さんの誤魔化しに気付かないとは思えませんが、

ハッピーエンド後の孟徳さんの場合、花ちゃんが絡むとアリかな、と思いまして。

また、孟徳×花なのに、文若さんの出番が多くてすみません。

というか、元譲さんと孟徳さんの会話も入れようとは思いましたが、

これ以上、色気もない話が増えるのは……と思って断念をしました。

 

そして、孟徳×花を書いていた時に聞いていた音楽は「POP STAR」です。

ファンタ2のシリウス殿下に合うと思っていましたが……孟徳さんの方が似合いそうです。

ただ、花ちゃんにメロメロ(笑)になっている孟徳さん限定ですが。

 

ただ、孟徳さんが絡む場合、恋愛モノよりも対峙モノの方に燃えるので……

乙女ゲーの二次創作には難有りな燃えだとも思います(遠い目)