願う事はただひとつ・番外4

「斎藤も『おまえの気持ちに応えてはどうか』と書状でも、それとなく訴えてくる始末だ」

 

 

 

深夜に土方の部屋へと、山崎が静かな気配と共に戸の外側に控えた。

そして、山崎の気配に気づいていた土方は、静かに戸を開いた。

すると、山崎は警護任務の為に屯所から離れている、斎藤の書状を差し出した。

「……副長、斎藤組長からの書状です」

「おう。すまねぇな、山崎」

そう短くも、労うような言葉を土方からかけられた山崎は、ただ生真面目に答えた。

「いえ、これも自分の役目ですから」

「そうか。返答はすぐに必要だと言っていたか?」

「はい。書状への返答は明け方までに、との言伝を頼まれています」

という斎藤の言伝を聞いた土方は、目を通していた書状を片付けた。

そして、差し出された斎藤の書状に目を通しながら、控えている山崎に指示を与えた。

「わかった。すぐに返事を書くから、そこで待ってくれ」

「はい」

そう山崎が短くも的確に答えたのを聞いた土方は、斎藤の書状に集中した。

だが、斎藤の書状の内容は簡単な報告と確認ばかりだったが、斎藤が近況報告と共に書かれた土方と千鶴への配慮に驚かされた。

いや、配慮というより、斎藤らしかぬお節介に対し、土方は素直に吹いた。

「副長?」

「……い、いや、なんでもねぇ」

「ですが!」

と、書状というより、託された内容に気付かない山崎に対し、土方は答えられなかった。

いや、それを説明する、否、それを認める事も否定する事も土方に出来なかったが故に。

だから、土方はあからさまに誤魔化しだと言える言葉で答えた。

「……いや、斎藤が似合いもしねぇ冗談を書いたから、驚いただけだ」

「冗談、ですか?」

「ああ、たち悪ぃ冗談だ。多分、任務でも疲れてるんだろ」

そう強引に誤魔化そうとする土方に対し、心酔をしている山崎はあえて引き下がった。

「……そうですか。では、返答はどのように?」

「書状は必要ねぇ。ただこう伝えてくれ。『余計な事は考えるな』と」

「……わかりました。これから、お言葉を伝えてきます」

「ああ、頼んだぜ、山崎」

と、土方が山崎に答えると、戸の外で控えていた気配はすぐに消えた。

そして、その気配が完全に消えた事を確認した土方は、すぐに斎藤の書状を燃やした。

それから、先程まで目を通していた書状に視線を戻した土方は、ただ苦笑った。

「……斎藤にまで世話を焼かせるとはな。俺も焼きが回ったぜ」

 

 

 

 

 

既刊「願う事はただひとつ」の番外小話です。

以前はイベントで無料配布をしていたペーパーに載せていましたが、

引っ越しの際に処分をした為、不親な仕様だとは思ったのですが、

この小話をサイトにてUPさせて頂きました。