願う事はただひとつ・番外1

「平助なんて顔を合わせるたびに、おまえに仕事を任せ過ぎるとうるせぇしな」

 

 

 

平助が羅刹となっても、土方の態度は変わらず、新撰組をも率いる幹部として扱った。

その様な土方の態度は、羅刹となった事で迷う平助にとっても有り難かった。

だからこそ、平助も土方と千鶴の関係への憂いが、いや、歯痒い思いを抱いていた。

そして、平助もただ思うだけでなく、土方との会話でも話題としようとした。

「……土方さん」

そう平助に改まって名を呼ばれた土方は、その言動の意図をすぐに察して制した。

「……千鶴の事は聞かねぇぞ」

「だけど!」

「千鶴に仕事の多さを指摘すれば、藪蛇になっちまい、俺の仕事を減らさないと、会話にもなりゃしねぇ」

という土方の言葉は、平助の瞳を大きく見開かせた。

いや、土方と千鶴の関係が、平助の予想よりも深くなっている事を気付かされたが故に。

しかし、それを土方も千鶴も気付いていない事実が、平助に溜め息をつかせた。

「……はー」

「どういう意味の溜め息だ、平助」

「いや、土方さんでも、恋すると変わるんだなって、思っただけ」

そう平助に言われた土方は、言葉を返す事なく、ただ眉間のしわを増やした。

その様な土方の不機嫌さには慣れていた平助は、明るい口調のままで言葉を続けた。

「ま、無言で否定も肯定もしないのは、土方さんらしいけど。でも、俺も千鶴の幸せも願ってるから、今は何も言わない。でも、それは土方さんも同じだから」

「……俺に『幸せになる』なんて資格はねぇよ」

と呟くように、自戒するように、土方は誰へでもない言葉を口にした。

それを聞かされた平助は、あえて言葉を返さなかった。

いや、その無言こそが平助の気遣いであり、受け入れられない土方の正直な思いだった。

それ故に、平助は土方に対して苦笑うようにただ、正直な思いを言葉として告げた。

「ほんと、土方さんは頑固すぎ。でも、だから千鶴の事も任せられるよな」

「……おまえも余計な事を考える暇があるなら、自分の将来と新選組の事でも考えてろ」

 

 

 

 

 

既刊「願う事はただひとつ」の番外小話です。

以前はイベントで無料配布をしていたペーパーに載せていましたが、

引っ越しの際に処分をした為、不親な仕様だとは思ったのですが、

この小話をサイトにてUPさせて頂きました。