4今だけ、だから(お題使用1)

屯所の庭の方をじっと見つめる近藤を見かけた永倉は不思議そうに声をかけた。

「……近藤さん、こんな所で考え事か?」

「あ、いや、俺は覗きなんてしていないぞ!」

そう永倉に答えた近藤は大仰に驚きながら答えた。

その様な近藤の様子を更に不審に思った永倉は、視線の先を確かめた。

近藤の視線の先と思えた庭には原田と千鶴が嬉しそうに話し合っていた。

それ故に、永倉は1人で納得し、その答えを近藤に確認した。

「……あ、なんだ。左之に用があったのか?」

「いや、そうではなくて……」

「じゃあ、千鶴ちゃんの方か?」

という永倉の問い返しに対し、近藤はただ沈黙した。

いや、永倉の問いが想定外なのではなく、近藤の想定とは違い過ぎた。

それ故に、近藤は永倉に対して返す言葉が無かった。

そして、近藤の想定が想像もつかない永倉は更に不審に思った。

しかし、その様な短くも長い沈黙は、近藤の問いですぐに終わった。

「……永倉君、原田君と雪村君の様子をどう思う?」

そう近藤に問われた永倉は、素っ頓狂な声でただ驚いた。

「は?」

「いや……俺もトシの小姓が良いと思っていたが、原田君の小姓とした方が良いかと、最近は思うのだが……」

「確かに最近の千鶴ちゃんは左之と親しいが、それは悪い事じゃねぇと思うぜ?」

という永倉の答えは近藤にとっては想定内でもあり、不安要素でもあった。

そして、その様な近藤の意図も想いにも気付かない永倉にはあえて答えなかった。

ただ、近藤は独り言の様に自身の思いを言葉にした。

「……永倉君に気付かれないならば、今のままでも良いかもしれんな」

「?」

「いや、やはり鬼副長の小姓が良いか、いや、トシに相談しよう……感謝する、永倉君」

そう近藤に感謝された鈍感に永倉は意図もわからず、ただ戸惑う思いを言葉にした。

「へ……いや、感謝されるような事は……」

「お、新八に近藤さんじゃねぇか。ずいぶん珍しい組み合わせだな」

と、先程まで話題になっていた原田が庭先から2人に声をかけてきた。

原田の言葉で近藤と永倉の存在に気付いた千鶴も、微笑みながら庭先から会釈した。

その様な2人に対し、先程まで永倉に不審に思われていた近藤らしかぬ様子とは違った。

いや、先程が不自然な言動が嘘であったかのように、近藤はいつもの様子で笑っていた。

「いや、永倉君に悩みを解決してもらったんだよ」

「へぇ、新八に相談か……新八に相談するなんて、近藤さんくらいだぜ、きっと」

「そりゃ、どういう意味だ、左之!」

そう原田の言葉に対して怒り出した永倉を、千鶴は宥めようとした。

「あ、あの、お二人とも落ち着いてください……」

「おいおい、俺はただ事実を言っただけだぜ、千鶴」

「いや、左之が売った喧嘩は買わせてもらうぜ、千鶴ちゃん!」

という原田と永倉がいつもの様に喧嘩をはじめるかの様な怒気を互いに発した。

それ故に、千鶴は止める事も仲裁する事も出来ず、ただ戸惑った。

その様な千鶴を思った近藤は、喧嘩をはじめようとした原田と永倉に対して一喝をした。

「二人とも止めんか!雪村君が戸惑っているぞ!!」

「……済まねえ、近藤さん」

「……いや、俺も大声を出してすまん」

「いや、俺達が悪かった。けど、近藤さんはおまえを叱ったんじゃないから、そんなに驚かなくても良いぜ?」

そう原田に気を遣われた千鶴は、ただ急展開する状況に対応しきれなかった。

いや、幹部達の口喧嘩に慣れてきたばかりの千鶴は未だに戸惑いを感じていた。

そして、新選組に少女がいる事に慣れていない、永倉もただ千鶴を気遣った。

「でも、近藤さんの一喝は女の子にはきついだろ。大丈夫か、千鶴ちゃん?」

「そ、そうだな……雪村君、大丈夫か?」

「あ、いえ……私は大丈夫ですから」

「だが、さっきから顔が赤いままだぜ?」

と永倉に指摘された千鶴は少しだけ赤かった頬を更に紅く染めた。

その様な千鶴の変化から、近藤は原田との関係に思い至った。

そして、それ故に近藤は鈍感な永倉と共にこの場から立ち去ろうとした。

「……まだ相談事があるから、一緒にトシの部屋まで付き合ってくれないか、永倉君?」

「それは構わねぇが……大丈夫か、近藤さん?」

「ああ。俺は大丈夫だぞ、永倉君。では、失礼する」

そう原田と千鶴に告げた近藤は、不審をあらわにする永倉と共に、副長室へ向かった。

その様な近藤の言動の意図に気付いた原田は千鶴と残された場にて苦笑った。

「……近藤さんにも気付かれちまったか」

「気付かれる?」

「俺達が想いを交わし合ったってな」

という原田の答えは、千鶴に嬉しさと不安を与えた。

いや、正確に言えば、千鶴は原田からの想いは嬉しかった。

だが、知られた事により、原田との仲にも問題が生じないかが心配だった。

しかし、その様な千鶴のおもいにも気付き、様々な配慮をしている原田はただ微笑んだ。

「これからはもっと人の気配にも気をつけた方が良いな」

「……すみません」

そう千鶴から謝罪を受けた原田は、想定内であった故に余裕を見せた笑みで応えた。

「おいおい、俺を甲斐性無しにする気か、千鶴?」

「ですが!」

「確かにおまえは新選組が預かりもので、男だと偽っているが、俺が大切に想っている事まで偽らさせねぇでくれ」

という原田が告げる深い想いと配慮に対し、千鶴はただ嬉しくて満面の笑みを見せた。

「はい。有り難うございます、原田さん」

「……当り前のことでも、おまえから感謝されるのは嬉しいな」

 

 

 

 

 

……このお話も原田さん視点では確実に年齢制限小説になるかと。

いえ、本編のゲームの年齢制限数値を上げたと思われる原田さんが

恋仲となった千鶴嬢に手を出さないとは思え……(殴)

……

……

……

た、大変失礼しました。

今回の様に、原田さん以外の視点の小説だと、

原田×千鶴も全年齢が書きやすいと気付きました!

 

 

 

五つの言い訳(お題の配布元: