3その顔が見たかったから、(お題使用1)

千鶴が唯一の女生徒として薄桜学園に入学してから初めての体育祭が開催された。

しかし、体育祭は序盤から張り切り過ぎた校長の近藤による騒動からはじまり、

最後のフォークダンスでも生徒会長の強引な横槍が入り、散々な体育祭となった。

しかし、騒動の中心地に居た千鶴は戸惑いつつもその様な騒動を楽しんだ。

いや、沖田の様に状況を悪化させたり、

斎藤の様に土方に自制を求めたり、

平助の様に状況を無自覚に混乱させたり、

薫の様に状況の悪化を己の利としたりはしなかった。

ただ、騒動としかいえない体育祭であっても、皆と過ごした良い思い出だと思った。

そして、その騒動で一番の被害に遭った平助を労うように声をかけた。

「平助君……大丈夫?」

「え? 俺はいつもの事だから平気だぜ」

「そ、それならいいんだけど……」

そう平助に答えた千鶴は『平助のいつもの事』を察しきれず、ただ苦笑った。

そして、千鶴の苦笑いに気付かない平助は、騒動で終わった体育祭の事を愚痴った。

「……ホントにあいつは騒ぎしか起こさねぇよな!」

「……平助君、風間さんは一応先輩だよ?」

「さっきのフォークダンスも台無しにした奴に気づかう必要なんてないぜ」

「風間さんも悪気はなかったと思うし……」

と千鶴が風間をフォローする様な言葉を口にした為、側で沈黙していた薫が口を挟んだ。

「……まさかあの生徒会長に気でも有るのか、千鶴?」

「……それは、無いけど」

そう答える千鶴の長い間が気になった薫は意図を確かめようとした。

「ずいぶんと間が空いた否定だね?」

「え、本気なのかよ、千鶴?!」

「だ、だから、私の気持ちじゃなくて、風間さんの……」

と千鶴が慌てつつも二人の誤解を解こうとした時、話題の主でもあった風間が現れた。

「ほう、本当に我が嫁はツンデレなのだな」

「……平助の言葉に追随する気はないけど、無用な騒ぎしか出来ないんだな」

そう薫は風間の事をゴキブリが現れたかの様に言い切った。

しかし、薫の言葉も場の状況も気にしない、否、傍若無人な風間はただ千鶴に告げた。

「では、さっそく今宵からでも……」

「おい!結婚年齢にも達してない未成年に成人が手を出す気かよ!」

「貴様達の意見など聞いていない。さあ、千鶴。我が嫁となる事を証明する為にも……」

と風間はただ千鶴から手を差し出す事を要求する様に鷹揚な態度だった。

しかし、ただ騒動に巻き込まれるだけではない強さで、千鶴は風間の要求を振り払った。

「……私は結婚年齢にも達していない未成年ですから、嫁にはなれません」

「その様な無駄な法律に縛られる必要など……」

「遠回しに断れているって気付かない程、空気も読めないくらいに鈍感なの?」

そう薫に問われた風間は、少しだけ状況を読み、千鶴のかたくなさを独自に理解した。

「……ふっ、仕方ない。我が嫁がまだデレないならば、次の機会を待つとしよう」

「次も有り得ねぇよ!」

「そんな機会なんてつくらせないよ?」

と薫にも言われつつも、風間は手下である天霧と不知火を従えて立ち去った。

そして、その様な風間を無言で見送った千鶴の態度に対し、平助が異変を感じた。

いや、異変というよりは千鶴の態度がいつもと違う、と幼馴染としての勘が働いた。

「……千鶴?」

「あんな男と話した所為で、体調が悪くなったのか?」

「……二人とも過保護すぎるし、私は風間さんが嫌いじゃないよ?」

そう問い返す千鶴の言葉は、平助を一瞬で凍らせ、薫は驚きから強い口調で問い返した。

「あんな男の嫁になる気か、千鶴!」

「……だから、私は結婚年齢にも達していない未成年だから」

「じゃあ、おまえはあんな男が好きだって言うのか?」

「……それはわからないよ。第一、風間さんが私にこだわる理由もわからないし」

そう平助に答える千鶴は心底不思議そうだった。

それが前世の記憶の所為だと理解している平助と薫はあえて説明しようとしなかった。

いや、平助と薫には前世の記憶が有り、千鶴には無い事を知っているが故に。

そして、その前世で千鶴が風間と結婚し、その繰り返しを防ぎたいと言えないが故に。

その様な二人の微妙な沈黙を不審に思った千鶴は、平助と薫にただ問いかけた。

「……二人とも、何か知っているの?」

「え、いや、そんな事はねぇけど?」

という平助の問い返しは、幼馴染みである千鶴にはあからさまに不審に思えた。

しかし、その様な千鶴の言葉を制するように、双子である薫がニッコリと笑った。

「……おまえが心配する様な事はないよ」

「あ、ああ、そうだぜ。千鶴には笑っていて欲しいってだけだから」

そう平助も薫の言葉に追随するように、千鶴に太陽の様な笑みを見せた。

その様な平助の笑みと、意図が含まれすぎた薫の笑みに対し、千鶴はただ沈黙した。

いや、二人が隠し事をしている秘密の輪郭を知るが故に、千鶴はただ甘受した。

そして、その様な千鶴に対し、薫は先程とは違う少しだけ照れたような笑みを見せた。

「おまえが笑える日々をつくるのも兄の務めだ」

「……ありがとう、平助君に薫」

と千鶴は平助と薫の配慮と笑みに対して感謝しながら微笑んだ。

それ故に、平助と薫は互いに視線を交わせながら、ただ千鶴の幸せを願った。

 

 

 

 

 

今回は随想録版SSL設定を元に捏造をさせて頂きました。

なので、未プレイのゲームとは齟齬が多いと思います。

また、平助君が幼馴染みという設定に萌えている為、

千鶴嬢の想い人を風間さんとしました。

……風間さんと千鶴嬢は両想いでも恋人でもありませんが。

というか、私的に随想録のSSL設定の風間さんは、

片思いというか、勘違いしている様が好きなので(←マテ)

そして、随想録版のライトなノリのSSLも好きなので、

今回はこの様なSSとなりました。

 

 

 

五つの言い訳(お題の配布元: