2雨が降ってるから(お題使用1)

幕府軍が朝敵となり、新選組も京から江戸へ戻り、そして会津からも去る事となった。

しかし、斎藤は会津からの撤退命令を聞き入れなかった。

それだけではなく、今までの会津公への恩義に報いる為、新選組と袂を別つ事を選んだ。

それを聞き入れた土方は、更に斎藤が新選組の旗を掲げて戦い続ける事も認めた。

そして、斎藤を慕う千鶴も会津に残る事を決めた。

その決断を土方も斎藤も強く反対したが、千鶴の心の強さと想いの深さ故に認めた。

そして、それをただ見守っていた山南は仙台へ向かう前に、土方へと声をかけた。

「……土方君は相変わらず情が深いですね」

そう背後から山南に告げられた土方は、言葉ではなく鋭い視線だけを返した。

その視線に秘められた強い拒絶に気付きながらも、山南は微笑みながら言葉を続けた。

「怒らないでください、土方君。私も同感なのですから」

「……」

「雪村君への感情が、庇護欲なのか愛情なのかは、私もわかりませんから」

という山南の言葉は、土方も胸に秘めている想いと重なっていると自覚していた。

しかし、状況と山南の意図を深く理解している土方は、あえて話題を変えようとした。

「……山南さん。今はそんな話をしてる場合じゃねぇだろ」

「……でも、土方君も彼らの幸せを願ってはいるのでしょう?」

そう山南に問い続けられた土方は、小さな溜息を吐きながらこたえた。

「……あいつの存在に癒された時が有った事は認める。だが、あいつは斎藤を選んだ」

「そうですね。それに会津に敗北しかないとしても、永遠以上の一時の幸せを得られるかもしれませんからね。共にある事が出来れば」

「……さあな。幸せなんて人ぞれぞれだからな」

という土方の『こたえ』は、山南を煙に巻く言葉でもあり、真情にも思われた。

そして、土方の『こたえ』を聞いた山南は常とは違う、苦笑う様な笑みを見せた。

「そうですね……では、永遠以上の一時がある事を私も願いましょう」

「……そろそろ雨が降りそうだ。山南さんは仙台へ向かう準備を急いでくれ」

「ええ。わかっていますよ、土方君。ただ今宵に雨は相応しいと思いませんか?」

そう山南に問われた土方は、立ち去る様に背を背けながらも率直なおもいを言葉にした。

「……山南さん。俺は斎藤と千鶴の幸せを願った。それだけだ」

「……そうですか。では雨は私の為に降ってくれると思いましょう」

 

 

 

土方と山南が陣中から去ってからも、斎藤は千鶴を説得しようとした。

否。

千鶴が斎藤と共に居る為に、激戦地となる会津に残る選択肢は納得できなかったが故に。

だが、土方を説得しきった千鶴の意志の強さ故に、一度は斎藤も黙認しようとした。

それでも、土方が立ち去った陣中に残された斎藤は再び千鶴を説得しようとした。

「千鶴。おまえが会津に居る意味は……」

「あります!」

そう強い口調で斎藤の言葉を遮る千鶴の芯の強さと真っ直ぐな視線に戸惑った。

そして、斎藤の戸惑いと自身の強さも、告げる事に精一杯な千鶴は気付いていなかった。

それ程までに、千鶴は想いを言葉にし、斎藤に認めてもらう事しか考えていなかった。

「斎藤さんの居る場所が私のいる場所です。そう私が決めました」

「……感謝する」

という斎藤に感謝の言葉を聞いた千鶴は返す言葉を失った。

強い口調で千鶴を拒むのではなく、静かな視線で説得を促す訳ではなかった故に。

そして、言葉を失った千鶴に対し、斎藤は静かに、だが強い口調で真情を言葉にした。

「きっと、おまえが居たから、俺は会津に残る事が出来たのだと思う」

「斎藤さんが選んだ答えが私にとっても『正しい』と思っています。だから、斎藤さんも己の心に背かない選択をしてください」

そう答える千鶴の言葉を聞き入れた斎藤は、ただ穏やかな口調で応えた。

「そうだな……そろそろ雨が降りそうだ。雨をしのげる場所へ向かうぞ」

「はい!」

「……千鶴。お前が会津に残るならば、自身を守る事を最優先してくれ」

という斎藤の言葉は、千鶴も想定できる言葉だった。

しかし、斎藤と共に居る事を決めた千鶴には最悪な事態も想定内だった。

だが、激戦地である会津に千鶴と共に残る覚悟が、斎藤には未だに出来なかった。

それ故に、斎藤が無自覚に強く握りしめた刀を持つ手に千鶴が自身の手を重ねた。

その様な千鶴の言動の意図に気付いた斉藤は驚きから目を見張った。

そして、その様な斎藤の驚きと思いを伝えようとする千鶴は真っ直ぐな視線を向けた。

「私は斎藤さんが誠を掲げ続けられる事を願っています。例え私が……」

「それ以上は言わないでくれ、千鶴」

「……」

「すまない。俺はおまえには無様な姿をさらし続けているな」

そう告げた斎藤は、刀を握りしめていた手を解き、千鶴の手をそっと握り返した。

それから、斎藤は自嘲する様な笑みを口元に浮かべると溜め息を吐いた。

その様な斎藤に対し、千鶴は変わらぬ真っ直ぐな視線と共に、満面の笑みを見せた。

「……斎藤さんは私にとって常にお慕いし続けている方です。例えご自身で貶めようともそれは変わりません」

「……では、その思いに応える為にも、俺は誠に恥じない戦いをしよう」

「はい!」

と答える千鶴の満面の笑みに対し、斎藤もぎこちなくも微かな笑みを返した。

 

 

 

 

 

TVシリーズから捏造をした斎藤さんエンド?になっています。

斎藤さんが会津に残ると決めた後、土方さんと山南さんに

斎藤さんと千鶴嬢の事を話し合って欲しかった為、

TVシリーズを元に捏造をしてみました。

捏造の不具合や矛盾点は心の中かメールでのツッコミでお願いします。

 

 

 

五つの言い訳(お題の配布元: