1心臓が急かすから(お題使用1)

あと何年……いや、それとも数日?

いや、それよりも、今の僕に生きている価値があるの?

多分、近藤さんは僕に生きろと言うだろう……とても優しい人だから

でも、僕の存在価値なんて……新選組の役に立てない僕にあるとは思えない

けれど、君は今の僕が生きている意味を知っているから……傍にいてくれるの?

でも、僕は迫る死の予兆よりも、存在価値を見いだせない自分とその運命に、ただ……

 

 

 

沖田が有名な医師でもある松本から労咳である事を告げられてから数ヶ月後。

それを密かに聞いた斎藤と、その報告を聞いた土方により、沖田は療養を強制された。

しかし、労咳という名を伏せ、風邪という名目であるが故か、沖田は療養しなかった。

いや、斎藤と土方が真実を知り、近藤にも伏せている事への些細な抵抗かもしれない。

それでも、沖田から直に口止めをされている千鶴の献身的な世話には抵抗しなかった。

だが、それは千鶴が沖田から言質を得ていた所為かも知れない。

役に立たなくなる自分を避ける様に告げた沖田の言葉に対し、千鶴も拒絶した。

そして、あくまでも沖田の傍に居たい告げた千鶴に対し、沖田は短く答えた。

『そこまで言うなら、好きにすれば?』

そう言われた日から千鶴は沖田の看病を積極的に務めた。

それ故に、沖田と千鶴の仲が深くなる事も周知されていった。

そして、それを新選組の幹部達はあえて黙認しながらも密かに歓迎した。

ただ、土方から密かに治療を命じられた山崎は、沖田の飄々とした態度に困惑していた。

そして、今日も昼食を運ぶついでに、山崎は沖田の状態を確認しようとした。

しかし、昼食を持ってきた山崎が入室したと同時に、沖田は刀と殺気をつき付けた。

だが、伊達に新選組に属していない山崎は、ただ沖田の言動に対して素直に呆れた。

「……食事を持て来た人間に対して、あなたはいつもこうなんですか?」

「……嘘ばかり吐く山崎君には、これくらいのお仕置きをしても良いかとおもうけど?」

そう沖田は飄々とした態度と独特な余裕を見せた山崎に対して答えを強要した。

だが、山崎も沖田に対して率直な答えではなく、遠回しな問い返しで答えた。

「あなたが風邪だという答えに納得できない、という意味ですか?」

「へえ、じゃあ山崎君は僕の命はいつまでなのかも……知ってる?」

「……ただの風邪をここまでこじらせる方への助言などないでしょう」

と、山崎があくまでも遠回しな言葉を選び続けた事に対し、沖田は更なる殺気を強めた。

その殺気に恐怖を感じつつも、山崎は新選組の副長である土方の密命に従おうとした。

そして、山崎の覚悟も見抜いた沖田は最後通告の様に悪意に満ちた笑みを浮かべた。

「そう……あくまでも風邪だと言い張るんだ?」

「総司、山崎君に絡んでも何も解決しないぞ」

そう言いながら唐突に部屋へと入ってきた斎藤に対し、沖田は微笑んだ。

いや、笑みというには悪意が満ち、悪意と言えぬ程に清々しさを感じさせる笑みだった。

そして、その様な笑みと殺気にも慣れている斎藤は答えず、ただ淡々と二人に近寄った。

その様な斎藤の言動に慣れている沖田はただ微笑みながら殺気と共に問い返した。

「一君ってばいつも丁度良い具合に現れるよね?」

「……あんたの殺気がただ漏れている所為だ。こうも殺気をただ漏れさせていたら、一般隊士達にも影響がでかねん」

「ふーん……でも、僕と千鶴ちゃんの語らいを盗み聞いた事だってあったでしょ?」

と沖田に言われた斎藤は、問われた言葉の意味する過去にすぐ思い当たった。

沖田が労咳である事を告げられ、千鶴に口止めをしようとした時に密かに聞いた事を。

いや、沖田に確証はない事にも気付いている斎藤はただ受け流し、話を変えようとした。

「……総司。千鶴はあくまでも副長の小姓だ。それを忘れるな」

「じゃあ、一君は僕と千鶴ちゃんの愛の会話を盗み聞いた事が有るんだ?」

そう沖田は斉藤から言質を取ろうとした。

しかし、斎藤は沖田の思惑に気付いたが、あくまでも話を変えようとした。

「あんた達の仲が良い事は誰もが知る事実だ。というより、知らしめる事に全力を尽くしているのはあんただろう?」

「……そうだね。千鶴ちゃんはからかい甲斐のある楽しい子だから」

「千鶴はあんたの遊び道具じゃない」

「じゃあ……」

という沖田と斎藤の平行線で無意味な作為を込めた会話が一人の声で遮られた。

「失礼します。お薬を持ってきたのですが……」

そう告げた言葉の主へ答える事を忘れるくらい驚いた沖田は、ただ山崎に確認した。

「……山崎君ってば、薬を持ってくるのを忘れたの?」

「……総司、山崎君に問う前に、千鶴へ答えるべきだ」

と斎藤が沖田の変化に驚きつつも、淡々とした口調で指摘を口にした。

そして、沖田も斎藤の指摘を受け入れ、戸外で待っている千鶴へ言葉を返した。

「そうだね……入って来ても良いよ、千鶴ちゃん」

「……失礼します」

「……千鶴、これからは予定が有るか?」

そう斎藤は、入室してきた千鶴に対して確認をした。

すると、山崎に薬を渡した千鶴は、不思議そうに首を傾げながらも問い返した。

「……特には有りませんが?」

「なら、総司の食事と薬を飲むのを見届けて欲しい。最近は避ける事に熱心だからな」

「わかりました。私がしっかりと見張ります!」

「ああ、頼んだ。山崎君はこれから他の隊士の事を診た方が良い」

「では、後は頼みます」

と山崎にも頼まれた千鶴は、斎藤の時と同じ様に快く受け入れた。

「はい、お任せください!」

「あんたなら総司も観念するだろう。しっかりと見張ってくれ」

そう斎藤が言うと、何かを諦めたような表情になった沖田が抜いていた刀を鞘に収めた。

それを見た山崎は不思議な表情を一瞬だけ見せつつもすぐに表情を隠してから退室した。

そして、それを見届けた斎藤は少しだけ表情を和らげながら静かに退室した。

「……千鶴ちゃんをここに来させる為に薬を忘れたのかな」

「さあ、食事を食べて薬も飲んでください、沖田さん!」

と千鶴は沖田に昼食を食べるよう、強気かつ強引に迫った。

しかし、食べる気が無い沖田は場を誤魔化す様に話題を変えようとした。

いや、先程から感じている、馴染み深くも不快な気配の主をあぶり出そうとした。

「もしかして、千鶴ちゃんが告げ口したの?」

「え?」

「僕が風邪じゃないって。僕が……」

そう沖田が告げようとした言葉を、意図に気付かない千鶴がただ強い口調で遮った。

「沖田さんの病気は風邪です! 沖田さんが無理を重ねるから風邪をこじらせているんです!!」

「……随分と言う様になったよね、千鶴ちゃん?」

と沖田は問い返す事しか出来なかった。

否、千鶴の強さに秘められた思いと、沖田への強い想いを受け入れられなかったから。

それ故に、沖田は千鶴に気付かれぬ様にただ強くこぶしを握り締めた。

そして、その様な行為にも気付かない千鶴は、ただ沖田に満面の笑みを見せた。

「沖田さんが鍛えてくれましたから」

「……じゃあ、こっちも教えてあげようか?」

「え……」

そうこたえた千鶴は、ただ呆然と沖田に押し倒された。

そして、千鶴を押し倒した沖田は、飄々とした態度を変える事なく微笑んだ。

その様な沖田の笑みを見せられた千鶴は、ただ反応的に顔を紅くした。

それ故に、沖田は艶めいた行為であるかの様に、ただ千鶴の唇に指で触れた。

「土方さん程の爛れた経験はないけど、千鶴ちゃんに教えられるくらいの経験はあるよ?」

「……」

「無言は肯定だって言うけど……」

と告げた沖田の問いに千鶴が答える間もなく、隠れていた気配の主が部屋に乱入した。

「誰がどんな爛れた経験を持ってるってぇんだ、総司!」

「……ほんと、今日は千客万来な日だな」

そう沖田はぼやいたが、乱入してきた土方は常にはない強い口調で自制を強いた。

「千鶴の言う通り、お前が無理を重ねるから風邪をこじらせてるって自覚しやがれ!」

「はいはい。僕が悪いって言えば良いんでしょ?」

「総司!」

 

 

 

 

 

今回は攻略キャラ×千鶴+αとなっています。

なので、今回の沖田×千鶴では、山崎さんと斎藤さんと土方さんに登場して頂きました。

沖田さんと千鶴嬢だけだと、沖田さんはドSな発言が多くなるのですが、

二人以外が登場するお話では……想定よりもドSな発言が少なくなりました。

というか、かなり書きやすくなった、とも思いました。

ですが、今までとは糖度というか、恋愛要素がかなり少なくなったので……

『おきちづ』が目当ての方に満足して頂けているかは心配です。

ただ、今回の更新では、恋愛要素よりも+αを重点的に書こう!

と思っているので、その点を楽しんで頂けると有り難いです。

 

 

 

五つの言い訳(お題の配布元: